逮捕 (日本法)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/04 15:58 UTC 版)
概説
(たいほ) 憲法上の「逮捕」(日本国憲法第33条)とは身体を拘束する行為そのものを意味し、身体の比較的短期の拘束である「抑留」や比較的長期の身体の拘束である「拘禁」(日本国憲法第34条)と区別される[5]。憲法上の「逮捕」には刑事訴訟法上の逮捕のほか、勾引(刑事訴訟法第58条)、勾留(刑事訴訟法第204条)、鑑定留置(刑事訴訟法第167条)などもすべて含む[5]。
一方、刑事訴訟法上の「逮捕」とは被疑者の身体を拘束して指定の場所に引致することであり、法により特別に認められた付随的効果としてその後一定期間被疑者を留置できる[6]。日本法の逮捕における引致は裁判官のもとに引致するものではなく捜査官のいる場所への引致である[2]。逮捕は勾留の前提手段となる手続である[1]。
逮捕時には被疑者が抵抗することも少なくないから、正当行為(刑法第35条)として、捜査官は相当な範囲内で物理的な有形力を行使しうる[7]。身体拘束の方法は本来不定型なものであり一律に決することはできないが、被疑者の状況、嫌疑の内容、逮捕場所の状況などから逮捕の目的を達するのに合理的かつ必要最小限の手段である必要がある[8]。一般には手錠などを用いて拘束されるが、何時でも被疑者の身体を捕捉できる態勢をとって逃走を防止する方法であればよい[8]。
日本法の逮捕と勾留には次のような諸原則がある。
- 逮捕前置主義
- 被疑者の勾留を請求するには同一事実につき被疑者が既に逮捕されていることを要し、これを逮捕前置主義という[9]。
- 軽微な事案については比較的に時間の短い逮捕の間に捜査が完了することを期待し、そうでない事案については逮捕と勾留の2度の司法審査を経ることで被疑者の拘束についての司法的抑制を徹底させる趣旨である[9]。
- なお、起訴後に勾留する場合には逮捕を前置する必要はない[9]。
- 事件単位の原則(犯罪事実単位の原則)
- 逮捕状は犯罪事実を基礎に事件単位で発付されるという原則を事件単位の原則という[10]。犯罪事実単位の原則ともいう[11]。
- 裁判官が逮捕や勾留の必要性を審査できるのは特定の事件に関してであるから、令状主義の趣旨から逮捕や勾留の効力はその逮捕事実又は勾留事実についてのみ及ぶとする趣旨である[12]。
- 一罪一逮捕一勾留の原則(逮捕・勾留の一回性の原則)
- 一つの犯罪事実に対する逮捕・勾留は原則として1回に限られるという原則をいう[13]。無条件に再逮捕や再勾留を認めれば逮捕や勾留の期間制限を定めた意味がないからである[14]。
- 同じ犯罪事実については時間が経過しても1回しか逮捕・勾留は認められず、同じ犯罪事実について2個の勾留をすることも認められない[12]。
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- ^ a b 河上和雄 & 渡辺咲子 2012, p. 511.
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- ^ a b c d e f g 上口裕 & 渡辺修 2012, p. 84.
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- ^ a b c 河上和雄 & 渡辺咲子 2012, p. 209.
- ^ 河上和雄 & 渡辺咲子 2012, p. 210.
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