移民 日本における移民

移民

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/03 09:18 UTC 版)

日本における移民

国立神戸移民収容所は昭和3年(1928年)に設立された。

7~8世紀、倭国/日本国は蝦夷支配と開拓を目的に陸奥国出羽国越国に強制的な移民政策を行った[40]

柵戸の最初の事例は7世紀、大化3年(647年)の越国・渟足柵への送り込みで、翌大化4年(648年)には信濃国・越国から同じく越国・磐舟柵への柵戸の送り込み[41] を城柵支配を目的に行われている[42]。8世紀には陸奥・出羽の支配拡大のために、主に東国の住民を対象に大規模な柵戸を行った[43][44]。当初は公民を対象に柵戸を行っていたが、移住先の環境の厳しさが認知されるにつれ柵戸は忌避されるようになり、後には犯罪者、浮浪人、乞食などを強制的に移住させるようになった[40]

また、これと正反対に、征服した東北の蝦夷を西日本各地に強制移住した。これを俘囚と言う。移配された俘囚はしばしば反乱を起こし、手をやいた朝廷は897年全ての俘囚を現住地の東北へ戻すことを決定した。

また九州では8世紀初頭、薩摩国大隅国成立時にも隼人の公民化を目的に柵戸が行われた[45][46]鹿児島県には当時の柵戸に由来する地名が現存しているとされる[47]

また遣唐使阿倍仲麻呂のように求められて留まり、で高官に出世した者もいた。労働力としての人の移動は、室町時代には既に存在していた。御朱印状による御朱印船貿易で、アユタヤ日本人町のような大規模な街を造る者たちもいた。

江戸時代に入り、鎖国政策が採られて以降、江戸幕府幕末まで移民を海外に送り込むことは無かった。

日本人移民

海外興業株式会社のブラジル移民を促すポスター。ブラジルは世界最大の日系人人口を擁する国家である

日本では20世紀の両世界大戦前後の一定の時期に、特に人口増加の解決策のひとつとして国策によって移民が奨励された[48]

第二次世界大戦前

明治元年(1868年)にハワイ王国のサトウキビプランテーションに移民が渡り「元年者」と呼ばれた[48]。駐日ハワイ総領事ヴァン・リードの要請を受けたもので、153名が送られたが、その待遇は劣悪極まりないものであったため国際問題に発展した。同年にはグアムにも移民が渡航している[48]

1885年(明治18年)にはハワイへの「官約移民」が始まり、移民事業は本格化・加速化した[48]

当初、出稼ぎ目的の移民の送出しについては、救貧対策や外貨の獲得など積極論がある一方、外交当局は移民先の環境が奴隷労働に近い状況で、現地住民との摩擦を引き起こしかねないとして慎重であった[49]。そのため1894年(明治27年)4月に移民保護規則、1896年(明治29年)に移民保護規則に代わる移民保護法が制定された[49]。同法は移民を悪徳な取扱業者から保護することを目的としたものであり、移民に旅券の携帯を義務づけ、また移民として海外渡航する場合は行政庁の「渡航証明書」がなければ旅券を発行しないことなどが定められ、移民渡航の許可制や労働契約の認可制、移民取扱業者の国への保証金の納付義務などの制度が設けられた。

1887年(明治20年)以降、ペルーなどと比較して労働条件の良かったアメリカ合衆国(米国)への出稼ぎ目的での移民が急増し、1899年(明治32年)には3万5千人に達した[49]。しかし、低賃金の日本人労働者の流入による賃金低下、習慣風俗の違い、日露戦争(1904-1905年)後の黄禍論などが原因となり、現地では日本人排斥の動きが強まった[49]

日本政府1900年(明治33年)2月に米国およびカナダへの移民を禁止したが、日露戦争後にはハワイ、カナダ、メキシコからの転航者が急増したため、1907年(明治40年)12月に覚書(日米紳士協定)が交わされ、米国への移民は大幅に制限された[49]。ハワイから米国本土への移民が制限されると、ハワイからカナダへの転航が増えたため、カナダとも移民制限の取極めを締結した[49]。なお、この頃の北アメリカへの移民については、日本政府による政策や移民斡旋業者に頼らないやり方をした女性の伊東里きなどがいた。

北米への移民制限によって、移民の渡航先は南米(ペルー、ブラジル、アルゼンチンなど)や太平洋の諸国(フィリピン、オーストラリア、フィジーやニューカレドニアなど)に拡大した[48]。ただし、オーストラリアでは1902年(明治35年)に移民制限法(Immigration Restriction Act, 1901)が施行されたため、移民は制限された[49]

その他の受入先としては、アメリカ合衆国の統治下にあったフィリピンダバオ市、満州国、日本の委任統治下にあったパラオなどの南洋群島などがある。

ただし、日本統治下にあった地域への移住は「国内移住と同等」であると考え、移民とは呼ばないことがある。これは、日清戦争による領土割譲、また、当時の大韓帝国に対する併合以後、日本統治下にあった朝鮮および台湾日本列島本土を指す内地と区別して外地とも呼ばれた)から日本に移住した朝鮮人や、台湾人に対しても同様である。

第一次世界大戦後の戦後恐慌1923年大正12年)の関東大震災により失業者や困窮者が大量に発生し、労働者や小作人の争議が頻発するなど社会不安に襲われた政府は、打開策の一つとして1923年(大正12年)から南米移民の宣伝を開始し、翌1924年(大正13年)には渡航費の全額補助を決定。全国の道府県に海外移住組合を設立し、現地に大型移住地を建設して移民を送り込んだ[50]

とりわけ、1926年昭和元年)以後の昭和恐慌農村への影響は大きく、1934年(昭和9年)の冷害は特に大きな打撃を与えた。その一方で中国東北部での自国による傀儡政府満州国の成立によって、満蒙開拓団が国策として必要となった。拓務省が設置され、『月刊拓務時報』が刊行され、拓務省内には海外移住相談所が開設された。

横浜神戸には移民希望者が集まり、彼らを相手に出国手続や滞在中の世話をする移民宿が誕生した。また、その出身地にちなんだ「薩摩町」「加賀町」などの町名が残されている[要出典]

第二次世界大戦後

第二次世界大戦後の日本では1950年(昭和25年)には復員引揚者が600万人以上に達していたが、雇用機会が少なく、移民再開が待ち望まれていた[51]サンフランシスコ講和条約締結後、1952年(昭和27年)末にブラジルへの移民が再開され、パラグアイドミニカ共和国ボリビアなどへの渡航が増加した[48]

特に、1956年(昭和31年)に開始されたドミニカへの移民については、当時の日本政府の喧伝内容と実際の現地の状況・待遇にかなりの相違があり、事実上の「棄民[52]」ではなかったのかと、後年日本の国会などで議論されている。

2007年平成19年)以降、日本の失業問題や労働環境の悪化に伴い、世界に職を求めて流出する若者が増加している[53]

日本への移住者

日本における在留外国人の推移

日本統治時代の朝鮮から日本へ移住した朝鮮人から、また戦後の難民密航などの不法入国から、在日韓国・朝鮮人が誕生した。

1945年(昭和20年)の第二次世界大戦敗戦、ポツダム宣言受諾(日本の降伏)により、それまで所有していた領土の内の朝鮮半島台湾の領有権について、日本政府は放棄を受け入れた。その後、1947年(昭和22年)5月の「外国人登録令」で旧植民地出身者である朝鮮人や台湾人らは「外国人」とみなされるようになり、1952年(昭和27年)4月28日サンフランシスコ講和条約発効・日本の主権回復に合わせて「外国人登録法」が施行され、日本籍を所持していた在日外国人らは日本国籍取得者から除外された。

1980年代には一部の中小企業農林業(第一次産業)、とりわけ第二次産業(製造業・工業)、第三次産業(商業・サービス業)でのブルーカラー職種で「人手不足」が深刻化、外国人労働者によって人手不足を埋め合わせる機運が生まれる。1990年平成2年)の「出入国管理及び難民認定法改正」により、日系海外移住者3世まで就労可能な地位が与えられ、日系ブラジル人日系ペルー人や中国人を中心に外国人労働者が増大した。1991年(平成3年)には「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」が施行され、「特別永住者」という地位が新たに法的に規定された。

また中国残留孤児フィリピンの日系人家族などを想定した「定住者」という法的地位も新設された。外国人労働者は2023年の時点で日本には約204万人の外国人労働者が在留している。また日本にいる在留外国人は307万人おり、日本に定住・永住する者も増加している[54][55][56]

自由民主党外国人材交流推進議員連盟2008年(平成20年)に日本は、「今後50年で総人口の10%程度の移民を受け入れるのが相当で1000万人規模の移民受け入れを達成すること」も決して夢でないとし、「移民庁」を創設し日本が受け入れる移民のカテゴリーとして、

  1. 高度人材(大学卒業レベル)
  2. 熟練労働者(日本で職業訓練を受けた人材)
  3. 留学生
  4. 移民の家族(家族統合の権利保障)[57]
  5. 人道的配慮を要する移民(難民、日本人妻等北朝鮮帰国者、その他日本が人道上受け入れを考慮すべき人々)
  6. 投資移民(富裕層)

などを想定していた[58][59]

ヨーロッパなどの移民政策への評価が分かれており、あえて移民政策を推進することへの疑問や反対意見も多く、日系人やこうした姿勢の一つの倫理的な正当化は日本の保安を守るという視点もある[60]

単純労働の移住者を入れないとしていたが非熟練労働者を対象とする技能実習生の移住者は増加を続け、2015年(平成27年)10月、国家戦略特別区域諮問会議で内閣総理大臣安倍晋三(当時)が「外国人を積極的に受け入れ、総合的に在留資格を見直す」との考えを示し、2019年に建設作業員など人手不足の対応を目的とする在留資格、特定技能が始まった[61]

日本介護福祉士会は、2014年技能実習生の対象を介護の分野に広げることに反対した[62]。しかし2017年技能実習制度は拡大され介護職種も対象となった[57]

同様に建設業界から「国内の若年者の雇用確保が本筋」「外国人材の活用は、言葉や習慣の違いなど課題も多い」とする声も人手不足の改善が見られないことから外国人労働者の拡大を求めるようになり2019年新たな在留資格である特定技能が始まった[63][64][65]

2021年時点で生活保護を受給している世帯主が外国人の世帯は4万6003世帯[66](人数は6万5273人)である[67]

2016年(平成28年)4月25日に自由民主党の「労働力確保に関する特命委員会」(委員長・木村義雄参院議員)がまとめた提言案では、単純労働者について「その概念自体をなくす」とし、5月中に安倍首相に対し提言を提出。自由民主党外国人材交流推進議員連盟では(<移民の定義>国連事務総長報告書による「通常の居住地以外の国に移動し少なくとも12か月間当該国に居住する人のこと(長期の移民)」(国連事務総長報告書による))としていたが、政府内で統一的な定義のなかった「移民」の定義について(「入国時に在留期間の制限がない者」)との独自の定義を近く示し、「入国時に在留期間の制限がない者」を受け入れる政策は国民に抵抗感が強いとして踏み込まない考えを明らかにする方針。今後は、大学教授や経営者、高度な技術者など「国の利益になる高度な人材」だけでなく、建設作業員などの「単純労働者」の受け入れを「必要に応じて認めるべきだ」とし、外国人の受け入れを基本的に認めるよう求めた[68][69]

しかし2018年、移民の定義を問われた国会答弁では移民とは文脈により意味が変わるため統一的な定義は出来ないと回答した[70]

留学生30万人計画により東南アジアのベトナムや南アジアのネパール日本語学校が相次いで設立され留学生が急増しているが、実質的に安価な労働力として受け入れられていることが問題となっている[71]

日本における移民の権利団体としては、移住者と連帯する全国ネットワークがある。


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