月光条例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/11 09:59 UTC 版)
概要
『うしおととら』『からくりサーカス』に続く藤田和日郎の連載作品。『週刊少年サンデー』(小学館)にて2008年17号から2014年19号まで連載。前半は一話完結から数話完結形式の構成になっている。後半は、登場人物の過去を交えながら展開されるアラビアンナイト編(10巻-20巻)、そして最終決戦が行われるかぐや姫編(21巻-29巻)に続く。単行本は全29巻。
御伽噺を題材としており、和洋問わず様々な御伽噺が登場し、物語に彩りを添える。登場する御伽噺は誰もが知っているメジャーなものから、マイナーなもの、作者自身のオリジナルなど様々。また、藤田のお伽噺に対する感想や歯痒さ[1]が動機で描かれているとの事であり、「おとぎばなし」の世界の存在は、原作のような英雄的、あるいは清廉潔癖で高潔な人物ではなく、時に不遇な身を嘆き、描かれる幸福に疑問を抱く一人の人間として描写され、その御伽噺(およびディズニーや世界名作劇場)に対するアンチテーゼ的な側面[2]も持ち合わせている。
作者のこれ以前の作品と比べ、残虐な描写はあるが直接的に描くことは抑えられており、「コメディ&アクション」の体裁を保っている。また、スター・システムを取り込み、過去作品のキャラクターやデザインの流用が多く登場するのも特徴。
作品の舞台となる緋立(ひりゅう)市は、うしおととらが住んでいた東京都下の「みかど市」近くの街であり、井上和郎作『美鳥の日々』『あいこら』で登場する南緋立市の北に位置するという。漫画『まほろまてぃっく』にも登場する[3]。
このように、物語世界の登場人物と現実世界の登場人物とが、互いの世界へ介入しあうメタフィクションの手法を通じて、物語の根源的存在意義を問い直す筋立てとなっており、作者自身、対談の中で、物語論のような漫画を徹底的に描いてみたかったと語っている。と同時に、想像次第で自由に変えたり生み出したりできる、物語の力そのものの凄さについて純粋に楽しんでほしい、とも述べている[4]。
なお、当初は「月狂条例[5]」というタイトル案が挙がっていたが、諸事情で変更となったという[6]。
出典
- ^ 『うしおととら』単行本第1巻の著者近影でも子供の頃から『マッチ売りの少女』の結末が気に入らず、その思いを作品にぶつけている旨を述べている。
- ^ 例えば、「シンデレラ」ならば『流されて手に入れた幸せ』、「フランダースの犬」ならば『自分の人生に誇りを持たずに死んだネロ』等。
- ^ もともと『うしおととら』のノベライズを手掛けた中山文十郎原作の漫画『まほろまてぃっく』で登場した街である。単行本『月光条例』14、小学館、2011年7月20日、巻末コラム参照。
- ^ 『藤田和日郎本』、小学館、2017年5月23日、50頁、54頁
- ^ イギリスで19世紀に制定された月狂条例 (Lunacy Act)より
- ^ BACKSTAGE vol.26
- ^ スピード狂で負けた相手に容赦なく制裁を与えるというネタは、藤田の友人である椎名高志の漫画『GS美神極楽大作戦』に登場する「韋駄天九兵衛」が元ネタとなっている模様。
- ^ 後に判明するチルチルの能力。このときから怒りに我を忘れると髪型が魔法の帽子型に変わるようになった。
- ^ a b 本作オリジナルのおとぎ話。作中ではテレビアニメ化もされるなど非常に有名だったが、「消滅」によって人々の記憶から失われてしまった。また、シンデレラと出典や時代が近い。
- ^ スピードカーにも変形する。また、馬車は月打された影響なのか、演劇部が乗った馬車に比べ、外観が少々歪んでいる。
- ^ 原典では一本の藁を物々交換していったが、本作では月打の影響か、複数の藁を一本づつ欲しいものと取り換えている。
- ^ 月光条例の舞台化としては初演となる本作は当初副題はなく、次作の『カグヤ編』が決まり副題の『月光編』が付いた。
- ^ “『月光条例 1』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 2』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 3』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 4』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 5』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 6』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 7』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 8』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 9』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 10』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 11』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 12』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 13』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 14』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 15』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 16』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 17』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 18』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 19』”. 2012年9月19日閲覧。
- ^ “『月光条例 20』”. 2012年11月17日閲覧。
- ^ “『月光条例 21』”. 2013年2月18日閲覧。
- ^ “『月光条例 22』”. 2013年4月18日閲覧。
- ^ “『月光条例 23』”. 2013年6月18日閲覧。
- ^ “『月光条例 24』”. 2013年8月16日閲覧。
- ^ “『月光条例 25』”. 2013年11月18日閲覧。
- ^ “『月光条例 26』”. 2014年1月17日閲覧。
- ^ “『月光条例 27』”. 2014年2月18日閲覧。
- ^ “『月光条例 28』”. 2014年3月18日閲覧。
- ^ “『月光条例 29』”. 2014年5月16日閲覧。
- ^ “カプセル兵団 過去公演”. カプセル兵団. 2017年1月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月17日閲覧。
- ^ “カプセル兵団 Official website”. カプセル兵団. 2014年11月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月17日閲覧。
- ^ “カプセル兵団 -月光条例~カグヤ編~-”. カプセル兵団. 2015年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月17日閲覧。
- ^ “『月光条例』舞台化!!!produced by カプセル兵団”. MotionGallery. 2021年2月18日閲覧。
- ^ “『月光条例』舞台化第二段!!!produced by カプセル兵団”. MotionGallery. 2021年2月18日閲覧。
- 月光条例のページへのリンク