扁形動物 特徴

扁形動物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/14 00:16 UTC 版)

特徴

左右相称で、前後と腹背の区別がある。自由生活のものでは、眼点や平衡胞、触覚器などを備えた頭部があり、内部には神経の集まった脳が形成される。寄生生活のものではそれらはほとんど退化し、その代わりに吸盤など体を固定するための器官が発達している。

内部は三胚葉性であるが、それ以外の三胚葉性動物とは異なり、その中胚葉は筋細胞と間充織が表皮と腸管の間を埋める状態にある。体腔がないので無体腔動物と呼ばれる。腸管は袋状で、出入口が一緒になっているため口と肛門が同じである。消化管は分枝して体内に広がり、各部で消化吸収が行われる。ただし、無腸類では消化管は腔所として存在しない。口の内側は多核で細胞の区別がない合胞体になっている体内につながり、ここに食物を取り込み、細胞内消化する。なお、吸虫では消化管は残っているが、条虫では完全に退化している。

神経系は中枢神経と末梢神経が区別でき、また頭部には脳が形成される。そこから後方へ左右一本の側神経が後方へ伸び、ほぼはしご形神経系に近いが、体節的構造がはっきりしないためかご形神経系と呼ばれる。

大部分では体内受精が行われ、交尾器が発達しているものが多い。生殖は分裂などの無性生殖(無性子)と卵などを産む有性生殖(有性子)の二種類がある。卵は5-8匹孵り1つの卵の中に卵細胞がいくつか入っているものもある。また、寄生性のサナダムシ類や吸虫類には、幼生が多胚形成などによって無性的に増殖するものがある。渦虫綱のものにも分裂で増殖する種が多く、それらでは再生能力も高い。

発生

螺旋卵割。渦虫綱のものでは、多岐腸類に簡単な幼生を生じるものがあり、それらはミュラー幼生やゲッテ幼生と呼ばれる。繊毛帯を持ち、肛門がない点を除けばややトロコフォア幼生に似る。しかし多くのものでは直接発生が行われる。吸虫や条虫など寄生性のものでは、それぞれにかなり特殊化した幼生が見られる。

系統

扁形動物は腹毛動物とともに吸啜動物を構成する[2]。伝統的な渦虫綱は多系統群であり、渦虫綱に含める説もあった顎口動物無腸動物は扁形動物とは別系統に属する[2][3]。扁形動物の中では小鎖状類が初期に分岐し、これら以外の渦虫類や新皮類(吸虫類・条虫類・単生類)を含む系統が有棒状体類としてまとめられる[2]

有棒状体類では多食形類が初期に分岐した系統とされ、続いて多岐腸類・原有吻頭からなる分岐群および錐咽頭類が有棒状体類からそれぞれ分かれた[2]。この系統関係に従うと、原有吻頭・錐咽頭類からなる卵黄皮類は多系統群ということになる[2]。残る系統については不確実であるものの、三岐腸類・フェカンピア類・原卵黄類からなる分岐群が不透明類Adiaphanidaとしてまとめられ、その姉妹群としてヒメヒラウズムシと新皮類からなる分岐群が位置付けられる[2]


  1. ^ a b WoRMS (2022). Platyhelminthes. Accessed at: https://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=793 on 2022-12-02.
  2. ^ a b c d e f g 柁原宏 2018.
  3. ^ 中野裕昭 2018.
  4. ^ Tyler, S., Artois, T.; Schilling, S.; Hooge, M.; Bush, L.F. (eds) (2006-2022). World List of turbellarian worms: Acoelomorpha, Catenulida, Rhabditophora. Catenulida. Accessed through: World Register of Marine Species at: https://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=2849 on 2022-12-02.
  5. ^ WoRMS (2022). Rhabditophora. Accessed at: https://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=479175 on 2022-12-02.
  6. ^ Tyler, S., Artois, T.; Schilling, S.; Hooge, M.; Bush, L.F. (eds) (2006-2022). World List of turbellarian worms: Acoelomorpha, Catenulida, Rhabditophora. Macrostomorpha. Accessed through: World Register of Marine Species at: https://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=479177 on 2022-12-02.
  7. ^ Norenburg, J.; Gibson, R.; Herrera Bachiller, A.; Strand, M. (2022). World Nemertea Database. Neodermata. Accessed through: World Register of Marine Species at: https://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=853123 on 2022-12-02.
  8. ^ a b c d 新田理人「日本産魚類に寄生する単後吸盤亜綱(単生綱:扁形動物門)の多様性」『タクサ:日本動物分類学会誌』第43巻(号)、日本動物分類学会、2017年、11-29頁。






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