フスハー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/25 06:17 UTC 版)
現代標準アラビア語
現代標準アラビア語(MSA)は、中東から北アフリカにかけて文章における共通語であり、国際連合の公式6言語の一である。印刷物(書籍、新聞、公文書、小児向けよみもの)はおおむねMSAで書かれる。そして、学校の全課程で教えられる唯一のアラビア語の形である。
MSAは、古典アラビア語に深く根付いてはいるが、変化しつづけている。古典アラビア語は規範的であるとみなされる。出来不出来の差はあるものの、近代の文章家は、(シーバワイヒのような)古典的文法家の示す文法規則に従おうとし、(リサーン・アル=アラブのような)古典的辞書に示される語彙を使用しようとするが、急激な近代化により、MSAには多数の語が導入された。それらの語は、他言語からの借用(例: فيلم フィルム)や、既にある語からの新造(例: هاتف 電話 < 話す人)という形態を取った。MSAは他言語や口語アラビア語の文法構造からも影響を受けている。MSAでは並列の際に「それ・それ・それとそれ」という文があるが、古典アラビア語では「それとそれとそれとそれ」とし、主語を先頭にする文が明らかに古典アラビア語よりMSAにおいて著しい。このため、近代共通アラビア語はアラブの外の文献では一般に古典アラビア語と異なるものとして扱われる。
現代のアラビア語についての社会言語学的状況は、ダイグロシア(社会的な状況の違いなどにより、一つの言語の異なる二つの変種を用いること)という言語学的現象の優れた例となっている。MSAの教育を受けたアラビア語話者は、公の場でMSAによってコミュニケーションを取ることができる。このようなダイグロシア的環境のために、コード・スイッチ(言語の二つの変種を話者が双方向に「スイッチ」する)が頻繁に起こり、時には一つの文の中でも見られる。
一例として、MSA教育を受けた、異なる出身国の二人のアラビア語話者が会話をすることになり、自身の方言では相互理解不能であったとすると(例: モロッコ出身者とレバノン出身者との会話)、意思疎通のためにMSAへコード・スイッチすることができる。しかしモロッコ出身者はフランス語による教育の比重が大きいことからフスハーでの会話を得意としないことが多く、アラブ人同士の意思疎通にフスハーやフスハー-アーンミーヤ中間体(混合体)ではなくフランス語や英語が使われることもある。
地域的変種
MSAは中東全域で用いられるが、口語の影響でいくつかの地域的変種がみられる。インタビューに対してMSAで話すとき、(たとえば、ج ジーム /ʤ/ をエジプトでは /g/ と読み、レバノンにおいては /ʒ/ と読むような)いくつかの音素の発音や、語と文型において口語と古典語を混同することで出身が分かることがある。古典語・口語の混合は正式な文章で見られることもある(例えば、エジプトのいくつかの新聞の論説など)。
- ^ “اللهجة البيضاء.. النطق المفهوم” (アラビア語). www.albayan.ae (2015年5月15日). 2024年3月21日閲覧。
- 1 フスハーとは
- 2 フスハーの概要
- 3 現代標準アラビア語
- 4 文語-口語中間体(混合体)
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