バングラデシュ 国際関係

バングラデシュ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/10 16:20 UTC 版)

国際関係

南部の一部を除き大部分の国境を接するインドとは、独立戦争時の経緯や独立時の与党アワミ連盟が親インド政党だったこともあり独立当初は友好的な関係だった。元々、ムスリムとヒンドゥー教徒の対立がパキスタンへの編入を促した事情もあり、やがて関係は冷却化した。バングラデシュ民族主義党はやや反インド的な姿勢をとり、逆にアメリカ合衆国中国との友好関係を重視する傾向がある。

バングラデシュは多くの難民を受け入れ、また送り出す国である。東パキスタンとして独立した時には両国内の非主流派の信徒がお互いに難民として流れ込み、またバングラデシュ独立時にもパキスタン軍の侵攻を逃れて100万人近いバングラデシュ人が難民となってインド領へと流れ込んだ。さらに、チッタゴン丘陵地帯では政治的緊張が続いており、この地域の仏教系先住民がインドへと多く難民として流出している。

また、バングラデシュは隣接するミャンマーからムスリムのロヒンギャ難民を多く受け入れている。

バングラデシュは貧困国であるため、世界各国から多額の経済援助を受け取っている。日本は最大の援助国の一つであるが、近年は援助額がやや減少気味である。他に、アジア開発銀行やアメリカ、イギリス、世界銀行ヨーロッパ連合などからの援助が多い。

日本国との関係

軍事

PKOで活動中のバングラデシュ軍

バングラデシュ軍志願兵制度であり、兵力はおよそ14万人。バングラデシュ軍は国際連合平和維持活動(PKO)に積極的に人員を送っている。バングラデシュ軍は過去何度か軍事政権を樹立し、現在でも政治に大きな発言力を持つ。2006年にはBNP政権を退陣させ、アハメド選挙管理内閣を発足させた。

地理

バングラデシュの標高図。
バングラデシュの地図。

バングラデシュの国土の大部分はインド亜大陸ベンガル湾沿いに形成されたベンガルデルタと呼ばれるデルタ地帯である[注釈 6]。このデルタ地帯を大小の河川カールと呼ばれる水路が網の目のように走っている。耕作可能面積率は59.65%と世界一高い。沼沢地とジャングルの多い低地[注釈 7] であり、ジャングルはベンガルトラの生息地として知られる。北をヒマラヤ山脈南麓部、シロン高原(メガラヤ台地)、東をトリプラ丘陵やチッタゴン丘陵、西をラジュモホル丘陵に囲まれ、南はベンガル湾に面している[17]。東部や東南部に標高100〜500mの丘陵が広がる。

ヒマラヤ山脈に水源を持つ西からガンジス川(ベンガル語でポッダ川)、北からブラマプトラ川(同ジョムナ川)が低地のほぼ中央で合流し、最下流でメグナ川と合流して、流域面積173万平方キロメートルものデルタ地帯を作っている。デルタ地帯は極めて人口密度が高い。バングラデシュの土壌は肥沃で水に恵まれることから水田耕作に適しているが、洪水旱魃の双方に対して脆弱であり、しばしば河川が氾濫し多くの被害を及ぼす。国内の丘陵地は南東部のチッタゴン丘陵地帯(最高地点:ケオクラドン山英語版、1230m)と北東部のシレット管区に限られる。

北回帰線に近いバングラデシュの気候熱帯性で、10月から3月にかけての冬季は温暖である。夏季は3月から6月にかけて高温多湿な時期が続き、6月から10月にかけてモンスーンが襲来する。ほぼ毎年のようにこの国を襲う洪水サイクロン竜巻海嘯といった自然現象は、一時的な被害にとどまらず、森林破壊土壌劣化浸食などを引き起こし、さらなる被害を国土に対して及ぼしている。

地形の大部分が平坦なこと、洪水による地形の変化が多いことなどは、バングラデシュの国土測量を極めて難しいものとしている。日本の国土地理院の協力により、1/25,000の地形図の作成が試みられているが、2016年段階でも詳細な全国地図は完成に至っていない[18]

なお、主要都市のひとつであるチッタゴンの南に位置するコックスバザールは世界最長の天然のビーチとして知られる。

洪水

バングラデシュの殆どの耕作地域は雨季に河川の溢水により水に沈む。時折耕作地域だけでなく、土盛りして高台にしている住宅地や幹線道路も浸水被害を受ける。こういった大洪水はベンガル語で「ボンナ」(Banna)と呼ばれ、破壊と災厄をもたらすものとみなされる一方で、毎年起こる程度の適度な洪水は「ボルシャ」(Barsha)と呼ばれ、土壌に肥沃さをもたらし、豊かな漁場とありあまるほどの水、豊作をもたらす恵みの存在と考えられている[19]。ボンナが発生するとアウス稲、アモン稲の生産量に悪影響があるが、近年大洪水となった2004年および2007年でも10%程度のアモン生産量の減少にとどまっている。[20] このほかに河岸侵食による土地流出も過去には深刻な被害をもたらしていたが、近年のインフラ整備により、改善されてきている。


注釈

  1. ^ ムガル帝国の時代には経済的に一番豊かな州の一つであり、イギリスによる植民地支配期には英領インドで最も早く西欧文化の影響を受け、西欧化・近代化の先頭に立っていた地域である。中里成章「新しい国の古い歴史」/大橋正明・村山真弓編著『バングラデシュを知るための60章』(明石書店 【第2版】2009年)20ページ。
  2. ^ 農村の国であり、2000年の統計では全人口の75%が農村で暮らしている。長畑誠「農村の貧困問題」/大橋正明・村山真弓編著『バングラデシュを知るための60章』(明石書店 【第2版】2009年)222ページ。
  3. ^ 1204年、トルコ系ムスリム奇襲によってムスリム王権が成立した。
  4. ^ BNP=1991〜1996年、AL=1996〜2001年、BNP=2001〜2006年
  5. ^ 暴力団や学生組織(BNP系の民族主義学生等:JCD、アワミ連盟系のバングラデシュ学生連盟:BCL、イスラーム党系のイスラーム学生戦線:JCS)佐藤宏「議会制民主油主義のゆくえ」/大橋正明・村山真弓編著『バングラデシュを知るための60章』(明石書店 【第2版】2009年)43ページ
  6. ^ ベンガルデルタとは、ガンジス(ポッダ)川、ブラフマプトラ(ジョムナ)川、メグナ川の3大河川の堆積作用によってできた大地である。
  7. ^ ベンガル低地、東西約400km、南北約560kmの広がり、標高は北部で40〜50m、南部で2〜3m、洪積台地と沖積低地に大きく分けられ、台地は中央部や北西部に広がっている、首都ダッカは台地の南端に位置する。台地と低地の高低差はおよそ10メートル以下である。畑作が中心で、水田は浅い谷部分に分布する。大橋正明・村山真弓編著『バングラデシュを知るための60章』(明石書店 【第2版】2009年)44〜45ページ。

出典

  1. ^ バングラデシュ人民共和国基礎データ”. 外務省. 2018年11月5日閲覧。
  2. ^ a b UNdata”. 国連. 2021年10月10日閲覧。
  3. ^ a b c d e World Economic Outlook Database”. IMF. 2021年10月12日閲覧。
  4. ^ 【NIKKEI ASIA】バングラにスマホ工場続々 ノキアやサムスン、内需に照準『日経産業新聞』2021年7月29日アジア・グローバル面
  5. ^ “バングラで多国間PKO演習 自衛隊から4人が参加”. 朝雲新聞. (2012年2月9日). http://www.asagumo-news.com/news/201202/120214/12021405.html 2012年2月9日閲覧。 
  6. ^ “非常任理事国の選挙、日本を支持…バングラ首相”. 読売新聞. (2014年9月6日). https://web.archive.org/web/20140907143551/http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140906-OYT1T50124.html 2014年9月7日閲覧。 
  7. ^ 国連安保理非常任理事国選挙 我が国の過去の選挙結果(外務省)
  8. ^ 清水憲司 (2014年5月27日). “バングラデシュ首相:日の丸参考に国旗…親日アピール”. 毎日新聞. http://mainichi.jp/select/news/20140528k0000m030031000c.html 2014年5月29日閲覧。 
  9. ^ 臼田雅之「イスラーム教徒が増えた時期」/ 『バングラデシュを知るための60章』[第2版] 28ページ
  10. ^ 臼田雅之「イスラーム教徒がふえた時期」/ 大橋正明ほか 28-29ページ
  11. ^ 中里成章「新しい国の古い歴史」/大橋正明・村山真弓編著『バングラデシュを知るための60章』(明石書店 【第2版】2009年)22ページ
  12. ^ 【解説】キッシンジャー氏の主要実績 論争の種も 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News
  13. ^ a b 佐藤宏「議会制民主油主義のゆくえ」/大橋正明・村山真弓編著『バングラデシュを知るための60章』(明石書店 【第2版】2009年)40ページ
  14. ^ バングラデシュ基礎データ-日本国外務省
  15. ^ a b 総選挙で与党・アワミ連盟が圧勝、4期目・計20年の政権継続へ(バングラデシュ)”. 日本貿易振興機構 (2024年1月9日). 2024年3月26日閲覧。
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  17. ^ 大橋正明・村山真弓編著『バングラデシュを知るための60章』(明石書店 【第2版】2009年)44ページ
  18. ^ 地図が創る未来”. 独立行政法人国際協力機構. 2017年10月10日閲覧閲覧。
  19. ^ 吉谷純一、竹本典道、タレク・メラブテン (1 June 2007). バングラデシュにおける水災害に関する要因分析 (PDF) (Report). 土木研究所資料. Vol. 第4052号. 独立行政法人土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター. pp. 49–50. ISSN 0386-5878. 2023年3月15日閲覧
  20. ^ a b [Statistical Yearbook of Bangladesh ]Bangladesh Bureau of Statistics 2012
  21. ^ バングラデシュ基礎データ”. 外務省. 2023年4月24日閲覧。
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  27. ^ 「バングラ、台頭する造船業 船舶解体業が材料供給」『日本経済新聞』電子版(2012年4月20日)2018年11月23日閲覧
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  32. ^ 臼田雅之「イスラーム教徒がふえた時期」/大橋正明・村山真弓編著『バングラデシュを知るための60章』(明石書店 【第2版】2009年)27ページ
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  40. ^ 2018 World Press Freedom Index | Reporters Without Borders". Welcome to RSF Website RSF
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