アリ ハチとの関係

アリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:23 UTC 版)

ハチとの関係

日常的にはハチとアリは別種の昆虫として扱われる。これは日本のアリの多くが毒針を持たないこと、生殖目的以外では翅を持たずに地面で生活するためである。

しかし、生物学的にはアリはミツバチに近縁なグループであり、スズメバチよりアリ類の方がミツバチに近縁である。

また、シロアリは大きさや集団生活をすることなどがアリに似ているが、アリ・ハチ類とは全く異なるゴキブリ類の昆虫である。

他の生物との関係

アリは人間になじみのある昆虫の中では小さいことから、人間から見れば弱い存在と思われがちだが、肉食のものが多く活発で攻撃力があって集団をなすことから、他の昆虫にとっては恐ろしい存在である。様々な生態系でアリは最も重要な小動物の捕食者である。熱帯雨林においては、植食性動物ではシロアリ、肉食性動物ではアリが人間のバイオマスに匹敵するほどの大きなバイオマスを誇っているほどである。

蟻に擬態したアリグモ

またアリグモという、アリに擬態しているクモがおり、かつては仲間と思って近づいてくるアリを襲うと信じられていたが、現在ではむしろアリの姿でいることで他の動物からの攻撃を避けているとされる。他にもアリそっくりの姿をしたハエカマキリツノゼミなどが世界各地で報告されている。

様々な植物で、花外蜜腺といって以外の器官に蜜腺を持つ形質が進化しているが、これは蜜でアリを誘引し、その付近にアリを常駐させ、彼らに植食性の昆虫を襲わせることで体を守る適応的意義があるとされている。また植物の中には、アリに住まいを提供し、それらによって害虫の影響を排除しているアリ植物も知られている。アブラムシカイガラムシの一部が蜜を出すのも同様な理由と考えられる。ほかに、アリに種子を運ばせるように適応したと思われる植物が多数ある。それらは種子にエライオソームと呼ばれる柔らかな付属物を持ち、これがアリの餌となるとされる。しかし、これはアリの卵に擬態しているのではないかとの説もある。

他方で、その量が多いことから、これを専食する動物も知られる。ツノトカゲ属、モロクトカゲが有名で、この両者は形態や行動にも似たところが多く、収斂進化の良い例である。日本ではアリスイアオオビハエトリやハリサシガメがある。名前の上ではオオアリクイというのがあるが、これはむしろシロアリ食である。

その他、アリの巣には特有の昆虫などが同居していることが知られている。それらの多くはアリの巣のみから発見されるが、アリとの関係は様々である。たとえばクロシジミは若齢幼虫がアリによって巣内に運び込まれ、アリに餌を与えられて育つ。その他にアリスアブやアリヅカコオロギ、アリシミなどが有名で、それらをまとめて好蟻性動物あるいは大抵は昆虫なので好蟻性昆虫と呼ぶ。

また、カラスカケスなどの鳥類の中には体にアリをたからせるものがおり、蟻浴(ぎよく)と呼ばれる。これには、蟻酸により寄生虫を退治する効果があるといわれているが、詳しいことは分かっていない。籠で飼われているメジロソウシチョウなどの鳥でも、籠の中に生きたアリを入れてやると、素早く捕獲してくちばしに挟んだまま全身に擦りつける動作が観察できることがある。

人間との関係

アリと人間の関係は多彩である。利害関係の上でも入り組んでいる。

利用

アリが利益を与える例として、小昆虫を獲物とするものが多いことから、様々な害虫天敵として働いていることがあげられる。直接の利用としては、食用とされる例がある。タイイーサーン料理では「カイモッデーン」と呼ばれる「赤アリの卵」は食材の1つである[11]。アリ入りのチョコレートがはやった時代があり、日本からもアカヤマアリを1箱に20匹ほど入れたチョコレート(商品名・チョコアンリ)が1950年代にアメリカ向けへ多量に輸出されていた事がある。また、特殊な例としては、蜜をため込むミツアリの例もある。

アジアアフリカ南米の一部地域では傷口の治療にアリが使用されていた。まず傷口を押さえておき、アリの胴を捕まえて傷に近づけ、かみつかせると同時に指先で頭と胴を切り離す。アリは一度かみつくと離さない習性があるため、アリの身体をねじり取ってしまえば傷口は縫い合わされる。生物学者のダニエル・クロナウアーによると、西アフリカの部族はサスライアリ属、南米の原住民もグンタイアリ属の兵隊アリを傷の縫合に使っていたという話が伝わる。また、紀元前1000年頃のヒンドゥー教の文献にもこの治療法が掲載されており、小アジアヨーロッパにも広がっていた治療法であることが分かる。小アジアに位置するスミルナ1896年の記述には、1インチの傷に対して生きたアリ10匹をあてがい、いったんアリが傷にしっかりと噛みついたら、ハサミでアリの身体を切り取り、傷がふさがってきた3日後に残った下顎を取り除くとある。 現代では2006年のアメリカ映画『アポカリプト』にこの方法で傷口を治療するシーンがある[12]

害虫

害を与える例としては、まず、噛みついたり刺したりすることがあげられる。個体は小さいが、集団で活動するため、攻撃を受けると大変にうるさい。単にそれだけでなく、特に強い毒を持つものや攻撃性の強いものもあり、危険でさえある。

農業面では、アブラムシを保護する行動をとるものは間接的に農業害虫である。南アメリカでは、ハキリアリの被害が大きい。

また、人間の生活環境に住み込むものは、人間の食物やその他を食うことがあり、嫌われる。家の中、周辺に出現するアリは主にクロオオアリクロヤマアリ等である[13]

このように、全体ではアリは害をなす場合が多く、駆除のために専用の薬品も用意される。

文化

アリは身近な昆虫であり、集団活動したりと目を引くことから、取り上げられる場合が多い。印象としては、ごく小さい虫、たくさん集まる虫、よく働く虫、といったところである。俳句では夏の季語

アリの役割分担に対する観察結果が、人間社会における組織論などに援用されることもある(「働きアリの法則」参照)。

小さい、という印象では「アリの這い出る隙もない」「アリの一穴」などがある。アリドオシの棘はアリを突き通すほど鋭いという。

「アリの熊野詣で」は行列を作る様からの表現である。

アリを主人公にした物語

アリを主題とした作品


注釈

出典

  1. ^ 日本産有剣膜翅類目録(2016 年版)”. 2020 6 19閲覧。
  2. ^ 誰も止められない死のスパイラル…死ぬまで回り続ける蟻の大群(動画)
  3. ^ 【なっとく科学】多様な進化を遂げるアリ/攻撃、救護 役割分担/コロニー存続を優先」『読売新聞』夕刊2018年11月22日(7面)。
  4. ^ Brothers DJ (1999). “Phylogeny and evolution of wasps, ants and bees (Hymenoptera, Chrysisoidea, Vespoidea, and Apoidea)”. Zoologica Scripta 28: 233–249. doi:10.1046/j.1463-6409.1999.00003.x. 
  5. ^ アリ類データベースグループ著 『日本産アリ類全種図鑑』 学習研究社2003年ISBN 978-4-05-401792-4
  6. ^ バート・ヘルドブラー,エドワード・O.ウィルソン著 『蟻の自然誌』 辻和希松本忠夫訳、朝日新聞社1997年ISBN 978-4-02-257158-8
  7. ^ Corrie S. MOREAU (2009). “Inferring ant evolution in the age of molecular data (Hymenoptera: Formicidae)”. Myrmecological News 12: 201-210. http://www.moreaulab.org/Publications_files/Moreau_2009_MN.pdf. 
  8. ^ Philip S. Ward. “Taxonomy, Phylogenetics, and Evolution”. 2012年12月16日閲覧。
  9. ^ AntWeb Formicidae”. 2012年12月16日閲覧。
  10. ^ 寺山・久保田(2009)p.4
  11. ^ アリの卵をなぜ食べる おなかに潜むタイの意外な「病」:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. 2021年8月18日閲覧。
  12. ^ アリは有能な外科医。アリを使って傷口を縫い合わせる施術” (日本語). カラパイア. 2020年9月5日閲覧。
  13. ^ “簡単にアリ退治する6つの方法。重曹や酢、クエン酸は?室内にも効く?” (日本語). タスクル | 暮らしのお悩み解決サイト. https://taskle.jp/media/articles/249 2018年10月3日閲覧。 





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