アメリカ海兵隊 入除隊と昇進

アメリカ海兵隊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/09 14:37 UTC 版)

入除隊と昇進

入隊

一等軍曹への名誉昇進で、ブルードレスを着たR・リー・アーメイ。左腕の2本の帯は精勤章(service stripe)で、勤続10年を表している
大尉としてブルードレスを着るデイル・ダイ。胸にはブロンズスターメダルパープルハート章を着けている
サンディエゴ訓練所での訓練(2006年)
士官クラスのサービスドレス
下士官・兵クラスのサービスドレス
MARPAT(MARines corps PATtern)迷彩戦闘服

伝統的に志願制を採り、少数精鋭を目指している海兵隊では、入隊志願者は採用時に選別されるため、入隊する人数はそれほど多くない[注 9]

兵卒
志願者は海兵隊ブートキャンプという志願者訓練所(カリフォルニア州サンディエゴ訓練所と、サウスカロライナ州パリス・アイランド訓練所の2か所が存在)に入所して訓練を受ける。
訓練所内では男女は同様の訓練を受けるが、訓練そのものは別々で行われる。海兵隊の入隊教育期間は13週間(=3か月強)におよび、4軍の中でも最も長く、苛烈な練兵を行う。練兵では入営者の個性を徹底的に否定し、団体の一員として活動させ、命令に対する即座の服従を叩き込まれる。ついて来られない者は容赦なく民間社会に戻され、練兵訓練を修了した者のみが「Marine(海兵)」と名乗ることを許される。海兵隊除隊後に他の軍に入隊しても再度練兵訓練を受ける必要は無いが、他軍を除隊して海兵隊に入隊した者は、それまでの功績を問わず海兵隊の練兵訓練を受けなければならない。訓練生は海兵隊マーシャルアーツプログラムのタンベルト(茶帯)と、海兵隊上級射手章(「Rifle Marksman」以上)を取得しなければならない。
厳しい体力錬成や戦闘訓練などの試練に耐えた者だけが訓練期間終了と同時に一等兵または二等兵として任用され、海兵隊隊員となる。志願採用時に各人の経歴に応じてブートキャンプ後に一等兵か二等兵になるかがあらかじめ契約されており、訓練所内での成績、席次は関係ない。ブートキャンプを修了した新人海兵は、歩兵は歩兵学校 (School of Infantry)、他の兵科では戦闘訓練課程 (Marine Combat Training) および兵科別学校において継続訓練を受けた後に、各部隊に配属される。
士官
海兵隊は陸軍ウエストポイント海軍アナポリス空軍コロラドスプリングスといった独自の士官学校を持たず、入隊する士官は大学卒業が最低条件(卒業証明書が必要)で全米の大学からの卒業生や多様な職業の者が入隊を希望して来る。
これらの士官希望者は、まず海兵隊の士官候補生学校 (Officer Candidate School、OCS) に入校し、10週間の訓練を受けて修了することが求められる。アナポリス卒の士官候補生が海兵隊将校に任官する道もある。各大学に設けられている予備役将校訓練課程を修了すれば海兵隊少尉に任官される。教育は前半2年間は海軍関係を、後半2年間は海兵隊について学ぶ。無事にOCSを修了すると海兵隊少尉 (2nd Lieutenant) に任官され、すぐに続けてバージニア州クアンティコの米海兵隊基礎訓練校 (TBS、The Basic School) に入校し、6か月間の訓練と教育を受ける。TBSでの成績が期間中に規定レベルに達しない者は海兵少尉の任官が取り消される。TBS卒業によって真の米海兵隊士官となる[2]

昇進

兵卒
海兵隊に入隊した兵は、二等兵に任用される。入隊契約で初期教育課程終了後一等兵への昇進が確約されている者は課程修了を以って直ちに昇進するが、その他は入隊から6か月後。
一等兵昇進からさらに9か月経つと上等兵に昇進する。
士官
士官候補生として入隊して小隊指揮官課程 (Platoon Leader Course) を終えると少尉に任官し、1年に及ぶ基本術科学校 (The basic School) の課程を終えると専門別に1週間から16か月の教育を受ける。
少尉任官後の5-6年の勤務を経て、成績がよければ大尉に昇進し、10年から12年経つと有望な士官は少佐となるための専門教育を受けて昇進するが、佐官は非常に狭き門であり少佐にまでなれる人間は少ない。
さらに将官を目指すものはアメリカ海兵隊指揮幕僚大学 (Marine Corps Command and Staff College) へ入学して教育を受ける。
ごく少数ではあるが、兵卒から選抜された優秀な者はOCSへの入校資格が与えられる。OCSで必要な研修を終了すると准士官に任命され、さらに少尉以上への昇進も可能である。著名な選抜者にはブロンズスターメダルパープルハート章を授与されたデイル・ダイなどがいる。

除隊

名誉除隊
軍人として在役中の成績が概ね良好で、軍法会議または民事訴訟などの対象にならずに一定の条件を満たして除隊した者は、名誉除隊となり、名誉除隊証書が交付される。名誉除隊証書の交付を受けると、福利厚生・生活保障の面においてさまざまな恩典を受けることができる。海兵隊において名誉除隊となる勤務成績以外の主な条件は、次のようなもの。
  • 20年以上の勤続(大尉で定年を迎える・佐官に昇進している。)
  • 傷痍除隊(戦傷によって職務への復帰が不可能と判断された場合がこれに当たる。勤続年数を問わない。)
  • 名誉ある職業[注 10] への転職(勤続年数を問わない。)
普通除隊
軍人として在役中の成績が概ね良好で、軍法会議または民事訴訟などの対象にならなかったが、名誉除隊の条件を満たせずに除隊した者は普通除隊になる。例としては以下の通り。
  • 2度昇進を見送られた者
  • 尉官(中尉・少尉)のまま勤続20年目を迎え、佐官に昇進出来なかった者
  • 勤続19年目以前に昇進見送りとなった者
不品行除隊
軍法会議による有罪判決の確定、犯罪で逮捕されるなど、軍人として不名誉な行為に対する懲戒処分の一種で、強制的に除隊させられる。
不名誉除隊となった場合、軍人年金や退職金の不支給をはじめとして事実上退役軍人としてのあらゆる権利を剥奪される他、不名誉除隊後は、次のような不利益を被ることがある。
  • 医療保険の停止
  • 市民権の停止
  • 再就職の際においては、履歴書に不名誉除隊の旨の記載を義務付けられる。
  • 銃器所持の制限(銃規制で非海兵隊員の民間人と同等になる)

Once a Marine, Always a Marine.なので、除隊後も「元海兵隊員」ではなく「海兵隊員」と呼ばれ続けるが、不名誉除隊となった場合は「海兵隊員」はおろか「元海兵隊員」と名乗ることすら禁止される[要出典]


注釈

  1. ^ 従来は全部で5軍だった。21世紀に入って第6の軍隊「宇宙軍」が創設された。
  2. ^ 「Act for establishing and organizing a Marine Corps」という法律が1798年7月11日に連邦議会で可決されている。
  3. ^ 海兵隊総司令官 (Commandant of the Marine Corps) は、陸軍参謀総長、海軍作戦部長、空軍参謀総長たちとの間で指揮命令系統の上下関係はない。米大統領の下で戦略の立案といった軍事顧問の役を務める統合参謀本部 (Joint Chiefs of Staff) の長である統合参謀本部議長も、長年、海兵隊出身者からは出なかったので四軍の中で海兵隊だけが格下である印象を持たれていたが、2005年にピーター・ペース海兵隊大将 (Gen. Peter Pace) が第16代統合参謀本部議長に就任したことで、四軍が並列の関係とみなされるようになった。
  4. ^ 自らの組織を生き物だと捉えるアメリカ海兵隊では、毎年11月10日になるとバースデーケーキで誕生日を祝う。
  5. ^ 描写は海兵隊讃歌の歌詞「To the shores of Tripoli」に反映された。
  6. ^ 星条旗を立てた部屋の名前が海兵隊讃歌の歌詞に反映された。
  7. ^ 部隊だけでなく、世界中に散らばった物資輸送船(事前集積船)を持つ。派遣地域の近くにいる物資輸送船が保管していた重装備と、素早く輸送できる軽装備の人員を合流させることで、展開速度と重装備を両立する。
  8. ^ 従来は特定の海兵遠征隊 (MEU) のみが特殊作戦能力 (Special Operations Capable) を有していたのでその海兵遠征隊だけを特に "MEU (SOC)" と呼んだが、今ではすべての海兵遠征隊が特殊作戦能力を有しているので MEU (SOC) とは呼ばれなくなった。
  9. ^ 米海兵隊の人数は、2008年夏時点で195,000名ほどである。また、米海兵隊は将校の割合が他の軍種と比べ低く、米陸軍16%、米海軍18%、米空軍20%に比べて、約10%である。
  10. ^ 警察官など。一部の地方警察では元海兵隊員に、“同志の証し”として特別なバッジを作成し斡旋している。シカゴ市警察での
  11. ^ 2002年5月に、当時の海兵隊司令官ジェームズ.L.ジョーンズ大将によって一等軍曹(E-7)に名誉昇進した。アメリカ海兵隊の歴史上退役者が昇進したのはR・リー・アーメイが初めてである。
  12. ^ 兵卒として入隊したが選抜されて士官へ昇進した(最終階級は大尉)。

出典

  1. ^ 50 USC Chapter 33 - WAR POWERS RESOLUTION コーネル大学法学大学院・法学情報院
  2. ^ a b c 北村淳・北村愛子著 『アメリカ海兵隊のドクトリン』 芙蓉書房出版 2009年2月25日第1版発行 ISBN 9784829504444
  3. ^ Samuel Nicholas - Pennsylvania Center for the Book”. 2020年7月25日閲覧。


「アメリカ海兵隊」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

アメリカ海兵隊のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



アメリカ海兵隊のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのアメリカ海兵隊 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2022 GRAS Group, Inc.RSS