パタニティ休暇とは? わかりやすく解説

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パタニティー‐きゅうか〔‐キウカ〕【パタニティー休暇】

読み方:ぱたにてぃーきゅうか

パタニティー父性の意》男性が、配偶者出産前後取得する休暇


パタニティ休暇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/07/06 01:58 UTC 版)

パタニティ休暇(パタニティきゅうか、英語: Paternity Leave)は、父親となる労働者に対して、新生児のケアや配偶者のサポートを目的として付与される休暇・休業制度のことである。男女を問わず育児目的で取得できるペアレンタル休暇(一般的な育児休業)とは区別されることが多いが、国や地域によってはペアレンタル休暇の一部として内包されている場合もある。

歴史と背景

パタニティ休暇が法整備されてきた背景には、かつての「男は仕事、女は家庭」という根強い性別役割分業意識から脱却し、ジェンダー平等を推進する観点が存在する[1]ジェンダー法学的な視点においては、パタニティ休暇は単なる労働者の福利厚生にとどまらず、「ケア責任の再分配」を促す制度として位置づけられる。伝統的に女性に偏重していた無償のケア労働を男性が分担することで、女性の労働市場における不利益を解消し、構造的なジェンダー格差の変革を目指すものである[2]。同時に、男性自身が子育てに関与する「男性のケア権(ケアをする権利)」を保障する意味合いも持つ。

日本における状況

育児・介護休業法における位置づけ

日本では、育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)に基づき、2022年10月1日より「産後パパ育休(出生時育児休業)」が施行された[3]。 同制度は、子の出生後8週間以内に最大4週間(28日)を限度として取得でき、2回までの分割取得が可能である[4]。原則として休業開始予定日の2週間前までに申し出る必要がある[5]。また、あらかじめ労使協定を締結している場合に限り、労働者の同意のもと休業期間中に所定の範囲内で就業することが認められている[3]

経済的支援として、一定の要件を満たすことで雇用保険から「出生時育児休業給付金」として休業開始前賃金の67%が支給される[4]。さらに少子化対策(こども未来戦略)の一環として、2025年4月より「出生後休業支援給付」が開始された。子の出生直後の一定期間内に両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間にわたり給付率が13%上乗せされる[6]。これにより、社会保険料の免除と合わせて、実質的な手取り賃金の10割相当が保障される仕組みとなっている[7]

取得状況と課題

日本の男性育児休業取得率は上昇傾向にあり、厚生労働省の「雇用均等基本調査」によれば、2023年度には30.1%、2024年度の速報値では40.5%と過去最高を更新している[8]。一方で、取得期間の短さが課題として指摘されており、男性の育休取得者の約4割が2週間未満の取得にとどまっている[8]。 この状況を是正し取得をさらに促進するため、2025年4月の法改正により、男性の育児休業取得状況等の公表義務が従業員数1,000人超の企業から300人超の企業へと拡大された[9][10]

実質的参加をめぐる議論と「とるだけ育休」

制度利用が広がる一方で、休暇を取得しても実際のケア労働を十分に担わない状態は「とるだけ育休」と呼ばれ、課題とされている。民間調査においても、育休を取得した夫を持つ妻の約4割が、夫の休業が実質的な「とるだけ育休」になっていたと評価しており、家事・育児分担に関する夫婦間の認識ギャップが存在することが指摘されている[11]。このため、単に期間を確保するだけでなく、休業期間中にいかに家庭内の役割を再構築し、当事者としてケア責任を分担するかが実質的なジェンダー平等の鍵とされている。

構造的なパタニティハラスメント(パタハラ)

男性の休業取得を阻む要因として、パタハラ(パタニティハラスメント)が深刻な障壁となっている。厚生労働省の実態調査によれば、育児関連制度を利用しようとした男性労働者の24.1%がハラスメントを経験している[12]。 育児・介護休業法第10条では、育児休業の申出や取得を理由とした解雇、降格などの不利益取扱いは明確に禁止されている[3]。また、同法第25条により、事業主にはハラスメントを防止するための雇用管理上の措置を講じることが義務付けられている[3]。 パタハラが発生する背景には、単なる個人の意識不足にとどまらず、「男性にケア責任を認めない」「男は仕事に専念すべきである」という社会的なジェンダー規範が構造的な問題として根強く存在していることが要因とされている[1]

影響と議論

精神的健康・発達への影響

乳児期から父親が積極的に育児に関与することは、子どもの長期的な心理的発達に良い影響を与えることが実証されている。厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査」のデータを用いた国立成育医療研究センターの研究によれば、乳児期に父親が積極的に育児に関わった家庭において、子どもが16歳に達した時点での心理的ウェルビーイング精神的健康)が低下するリスクが有意に減少する傾向が確認されている[13]

家族関係と労働市場への影響

男性の長期的な育児休業取得は、パートナーとの関係性や労働市場の流動性にも影響を及ぼす。調査によれば、夫の育休取得期間が長くなるほど妻の満足度は上昇し、半年以上の取得では約8割の妻が満足していると回答している[11]。育休を通じた家事・育児の分担は、夫婦間でのチーム意識を強化し、結果として妻の仕事への意欲向上や、職場への早期復帰など、女性の継続的なキャリア形成を後押しする効果が報告されている[11]

関連項目

脚注

  1. 1 2 令和4年版男女共同参画白書”. 内閣府 (2022年). 2026年7月6日閲覧。
  2. 男性の育児休業取得促進等について”. 厚生労働省. 2026年7月6日閲覧。
  3. 1 2 3 4 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律”. e-Gov法令検索. 2026年7月6日閲覧。
  4. 1 2 産後パパ育休”. 厚生労働省. 2026年7月6日閲覧。
  5. 産後パパ育休の対象となる労働者”. 厚生労働省. 2026年7月6日閲覧。
  6. 共働き・共育てを応援”. こども家庭庁. 2026年7月6日閲覧。
  7. 育児休業給付について”. 厚生労働省. 2026年7月6日閲覧。
  8. 1 2 令和6年度雇用均等基本調査”. 厚生労働省 (2025年7月). 2026年7月6日閲覧。
  9. 令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A”. 厚生労働省. 2026年7月6日閲覧。
  10. 令和6年改正育児・介護休業法の概要”. 厚生労働省. 2026年7月6日閲覧。
  11. 1 2 3 積水ハウス (2024). 男性育休白書 2024. 積水ハウス
  12. 令和5年度調査 職場のハラスメントに関する実態調査について”. 厚生労働省. 2026年7月6日閲覧。
  13. Kato, T., et al. (2022). “The long-term association between paternal involvement in infant care and children’s psychological wellbeing at age 16 years: An analysis of the Japanese Longitudinal Survey of Newborns in the 21st Century 2001 cohort”. Journal of Affective Disorders. doi:10.1016/j.jad.2022.12.075.


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