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サトイモ科

(araceae から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/07/05 02:19 UTC 版)

サトイモ科
生息年代: 115–0 Ma 前期白亜紀 - 現世
アンスリウム(Anthurium andraeanum
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: オモダカ目 Alismatales
: サトイモ科 Araceae[1]
学名
Araceae Juss.[2]
タイプ属
Arum L.[2]
シノニム

Lemnaceae Martinov [2]

  • 本文参照

サトイモ科(サトイモか、Araceae)は、オモダカ目を構成する科の一つである。温暖で湿潤な環境を好み、湿地や沼地に生育するものも多い。花軸に密集した小さな花(肉穂花序)と、それを囲むように発達した(仏炎苞)が特徴。

サトイモコンニャクなど、食品として重要なものも多いが、美しい葉や花を観賞するために栽培される種も多い。

新エングラー体系及びクロンキスト体系ではサトイモ目に分類されていた[3]

特徴

サトイモ科の植物は、に大きな特徴がある。花そのものは小さく、花びらがあっても目立たず、花びらがない場合もある。雄花と雌花に分かれているものもあり、いずれにしても、個々の花は小さく、目立たない。花は肉質の太い柄の上に一面に並んでつき、肉穂花序(にくすいかじょ)と呼ばれる。花は穂全体に着くものが多いが、穂の先端に花のない部分(付属体)があって、さまざまな形になるものもある。

穂の根元からは苞が出る。サトイモ科の植物では、多くの場合、苞が単純な葉の形ではなく、花の穂を包むような形になって、特別な色を持ち、目立つものが多い。言わば、花びらの役割を担っている。このような苞を仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ぶ。仏炎苞の袋状の部分を筒部、筒部の上部で長い舌のように伸びる部分を舷部と呼ぶ。

このような構造を取る理由としては、花に寄ってくる昆虫を内部に閉じ込めることで、滞在時間を長くして受粉の確率を高めていると考えられる。

なお、東南アジア産のコンニャクの一種、ショクダイオオコンニャクAmorphophallus titanium)は、花序の先端までが3mにも達し、花序としては世界で一番背が高いと言われる。

サトイモ科の植物は、単子葉植物としては例外的に、葉の幅が広く、切れ込みがあったり、複葉になったりと、複雑な形のものがあり、葉脈も網状になったものが多い。どちらかと言えば、湿ったところに生育するものが多く、湿地性や半水性のものもある。日本では、地下に芋状の地下茎を持つものがよく見られるが、亜熱帯-熱帯では大型のつる植物になり、根を伸ばして樹木の幹に張りつき、よじ登るものがある。

なお、ウキクサ亜科ボタンウキクサは浮遊性の水草である。

発熱植物

発熱植物(はつねつしょくぶつ、英: thermogenic plant)とは、花または花序などの器官において代謝活動を高め、周囲の気温より高い温度を発生または維持する植物の総称である[4]。発熱は主にミトコンドリア呼吸の活性化に伴って生じ、花粉媒介者の誘引、揮発性成分の拡散、寒冷環境下での開花や受粉の促進などに関与すると考えられている[5]

概要

植物は通常の呼吸過程でも熱を生じるが、発熱植物では花や花序の一部で呼吸活性が著しく高まり、周囲の気温より数℃から十数℃以上高い温度を示すことがある。発熱性はサトイモ科の一部の植物でよく知られているほか、ハスなどでも報告されている[6]

発熱植物は世界で100種近く知られているとされ、発熱によって花を暖めたり、臭気成分を拡散させたりすることで、昆虫などの花粉媒介者を誘引すると考えられている[4]

代表例

発熱植物の代表例
植物 発熱する部分 特徴
ザゼンソウ 肉穂花序 早春の寒冷環境下で開花し、肉穂花序の温度を20℃前後に維持することがある[7]
北米ザゼンソウ 花序 英語で eastern skunk cabbage と呼ばれ、雪の残る時期に開花する発熱植物として知られる。
ザゼンソウ類・テンナンショウ類の一部 花序 サトイモ科には発熱性を示す植物が多く含まれる。
ハス 開花期に花の温度を比較的高く保つことが報告されている[6]
ショクダイオオコンニャク 花序 発熱により臭気成分の揮発・拡散を助け、昆虫の誘引に関与すると考えられている[8]

ザゼンソウの発熱

ザゼンソウは発熱植物の代表例の一つである。発熱器官は肉穂花序であり、氷点下を含む寒冷環境下でも、その温度を約20℃前後に保つことができる[7]。安定した発熱は1週間から2週間程度観察されることがあり、植物の熱産生機構を研究するうえで重要な植物とされる[7]

近年の研究では、ザゼンソウの肉穂花序における発熱には、ミトコンドリア呼吸の活性化が関与していると考えられている。特に、alternative oxidase(AOX)や uncoupling protein(UCP)など、ミトコンドリア内膜に関連するタンパク質が、連続的かつ制御された発熱に関与する可能性が示されている[5]

生態的意義

発熱植物の発熱には、主に以下のような生態的意義があると考えられている。

花粉媒介者の誘引
花や花序を暖めることで、寒冷な時期にも昆虫などの花粉媒介者を誘引しやすくなると考えられている。また、発熱によって臭気成分の揮発が促進され、ハエや甲虫などを引き寄せる効果があるとされる[4]
寒冷環境下での開花
ザゼンソウのように早春の雪の残る環境で開花する植物では、発熱によって花序の温度を保ち、開花や受粉の成功率を高めている可能性がある[7]
臭気成分の拡散
スカンクキャベツ類やショクダイオオコンニャクなど、腐敗臭や獣臭に似た臭気を放つ植物では、発熱によって揮発性成分が拡散しやすくなり、花粉媒介者の誘引に役立つと考えられている[4][8]

利用

サトイモ科の植物には、サトイモ(里芋=タロイモ)をはじめ、主食として用いられるものがある。特に東南アジアから太平洋にかけて、芋食文化が広がり、日本はその最北端に当たる。また、コンニャクも加工して食品となる。

また、熱帯地方のものには、葉の色や形の面白いものがあり、ポトスカラジューム(ハイモ)など様々な種が観葉植物として利用される。また水生・半水生のアヌビアスクリプトコリネブセファランドラなどもアクアリウムにおいて観賞の対象とされる。

日本では、ミズバショウザゼンソウは北日本の季節の花として有名で、ミズバショウは「夏の思い出」などの歌にも出てくる。テンナンショウ類にも観賞価値の高いものがあり、その一部に野生では絶滅に瀕しているものがある。

一方、テンナンショウ属を始め、クワズイモザゼンソウなど多くのサトイモ科の植物はシュウ酸カルシウムなどのシュウ酸塩を根茎などに含んでおり、観葉植物も含めて有毒植物である。[9][10]

スカンクキャベツ類

スカンクキャベツ類(skunk cabbages)は、サトイモ科の湿地性多年草のうち、強い臭気を放つ、または大きな葉をもつことから英語で “skunk cabbage” と呼ばれる植物の総称である。分類学上の正式な分類群ではなく、主に北米東部の Symplocarpus foetidus、北米西部の Lysichiton americanus、東アジアの Lysichiton camtschatcensis(ミズバショウ)、および Symplocarpus renifolius(ザゼンソウ)などを指す。これらはいずれもサトイモ科に属するが、ミズバショウ属 Lysichitonザゼンソウ属 Symplocarpus に分かれるため、近縁な一群を示す俗称として用いられる。

分類

ショウブ属Acorus)は葉が細長く平行脈で典型的な仏炎苞もないので、クロンキスト体系ではショウブ科(Acoraceae)、APG IIでは更にショウブ目(Acorales)として分ける。ウキクサ亜科はかつてウキクサ科として分離されていた。

8亜科が属する[11]

Gymnostachydoideae ギムノスタキス亜科

1種のみ。オーストラリア東部。

Orontioideae ミズバショウ亜科

3属6種。東アジアと北米。

Lemnoideae ウキクサ亜科

ウキクサ亜科には5属37種が属する。

Pothoideae アンスリウム亜科

4属900種。

Monsteroideae ホウライショウ亜科

12属360種。

Lasioideae

Cyrtospermaの一種であるCyrtosperma johnstonii

10属58種。

Zamioculcadoideae

3属21種。アフリカ。

Aroideae サトイモ亜科

70属2300種。

系統

次のような系統樹が得られている[11]

ギムノスタキス亜科

ミズバショウ亜科

ウキクサ亜科

ホウライショウ亜科

アンスリウム亜科

Lasioideae

Zamioculcadoideae

サトイモ亜科


脚注

  1. 以上は『維管束植物分類表 = Syllabus of the Vascular Plants of Japan』(初版)北隆館、2013年4月、47頁。ISBN 978-4-8326-0975-4
  2. 1 2 3 Araceae
  3. 『維管束植物分類表 = Syllabus of the Vascular Plants of Japan』(初版)北隆館、2013年4月、140頁。 ISBN 978-4-8326-0975-4
  4. 1 2 3 4 発熱する植物ザゼンソウのゲノム解読”. かずさDNA研究所. 2026年7月5日閲覧。
  5. 1 2 Onda, Yoshihiko; Kato, Yoshiaki; Abe, Yukie; Ito, Takanori; Morohashi, Miyuki; Ito, Yuka; Ichikawa, Megumi; Matsukawa, Kazushige et al. (2008). “Functional coexpression of the mitochondrial alternative oxidase and uncoupling protein underlies thermoregulation in the thermogenic florets of skunk cabbage”. Plant Physiology 146 (2): 636-645. doi:10.1104/pp.107.113563. PMC 2245847. PMID 18162588.
  6. 1 2 Seymour, Roger S.; Schultze-Motel, Paul (1996). “Thermoregulating lotus flowers”. Nature 383: 305. doi:10.1038/383305a0.
  7. 1 2 3 4 ザゼンソウの発熱制御に関わる遺伝子を発見 (PDF). 理化学研究所. 2026年7月5日閲覧。
  8. 1 2 Zulfiqar, A. (2024). “Molecular basis for thermogenesis and volatile production in the titan arum”. PNAS Nexus 3 (11): pgae492. doi:10.1093/pnasnexus/pgae492.
  9. 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:クワズイモ”. 厚生労働省. 2022年11月7日閲覧。
  10. 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:ヒメザゼンソウ”. 厚生労働省. 2022年11月7日閲覧。
  11. 1 2 Araceae

外部リンク




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