S/A装置とは? わかりやすく解説

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S/A装置

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/05 08:02 UTC 版)

S/A装置(エス・アンド・エーそうち、英: Safe & Arm Device、略称: SADS&A装置、別名: セーフアーム装置)は、火工品信管、固体ロケットモーターなどの起爆・点火系において、意図しない作動を防止(Safe)し、所定条件下でのみ作動(Arm)させるための安全装置である。物理的な遮断機構と電気的インヒビット(抑止)や論理・環境判定を組み合わせ、誤作動の防止と指令時の確実な作動を両立させる。[1][2][3][4]

概要

S/A装置は、起爆連鎖(イニシエータ→伝爆要素→主薬)や点火連鎖の途中に「遮断(バリア)」を設け、Safe位置ではエネルギー(爆轟波・火炎・光・電気信号など)の伝達を遮り、Arm位置でのみ所定の経路を開通させる。多くの場合、状態は視認表示やテレメトリで監視され、二重以上の独立した安全機能(故障2重許容など)が要求される。[5][6][7]

呼称

日本語では「S/A装置」「S&A装置」「セーフアーム装置」の表記が混在する。宇宙分野の文書では英語略SAD(Safe & Arm Device)も用いられる。[8][9]

構造と作動原理

  • 物理的遮断(バリア): ロータ/スライダ/インタラプタ等で起爆・点火エネルギーの経路を遮断・開通する。
  • 環境・論理条件の判定: 加速度(セットバック)、回転、時間・距離、安全分離、指令コマンドなど、所定の起動条件成立後にのみArmへ遷移。
  • 電気的インヒビット: 複数系統の回路遮断・短絡・電源分離などにより、静電気・EMI/雷・地絡等による誤点火を抑止。
  • 状態表示・遠隔監視: 指示窓やスイッチ位置検出、テレメトリでSafe/Armを確認する。[10][11]

方式別の特徴

S/A装置の方式別の特徴(概要)
方式 代表的構成 強み(典型) 弱み(留意点) 主な適用 備考/規格上の論点
機械式 セットバックウェイト、遠心ロック、ロータ/スライダ等の受動機構 受動安全・低電力・電磁耐性が高い/位置保持が明快 機構が複雑・重量増/摩耗・環境(温湿度・砂塵)影響/動環境依存 低電力環境、古典的信管系、単純系 二重独立安全、故障許容、環境成立の確実性評価が重要
電気機械式 モータ/ソレノイド+ロータ/デテント、位置検出センサ 遠隔制御・状態監視が容易/冗長ラッチ構成可 電源依存・アクチュエータ故障モード/EMC対策が必要 宇宙機・航空救難・産業火工系 位置の可視化・テレメトリ要件を満たしやすい
電子式(ESAD) 電子安全論理+イニシエータ(EFI等)+多重インヒビット 誤作動しきい値設計が柔軟/高い誤点火耐性設計が可能 設計・検証コスト高/ソフト/論理の信頼性保証が課題/電源・EMC要件 先進信管系、宇宙・ミサイル等の高信頼用途 規格で論理・物理の二重安全と検証証跡が重視される
MEMS型 微小機構のインタラプタ・マイクロアクチュエータ 小型・軽量・統合度が高い/多層冗長を小型で実装可 製造歩留まり・微粒子詰まり・衝撃/温度耐性の評価 小型プラットフォーム、研究〜実用移行中 長期信頼性データの整備が進行途上
光学式 光ファイバ伝送+光学スイッチ/レーザ点火系 ガルバニック絶縁/EMI耐性/導電経路不要 光学アライメント・汚染対策/光源電力・部品入手性 強い電磁環境下、小型探査機等 光学部の環境耐性・安全基準適合が焦点

適用分野

  • 宇宙:固体ロケットモーターの点火、飛行停止装置(FTS)、段間分離、爆発ボルト等の作動管理。[12][13]
  • 航空救難射出座席や各種火工品の安全管理。[14]
  • 弾薬・信管信管における安全化と作動化の中核機能(国際規格により厳格に定義)。[15][16]
  • 産業:油・ガス、切断・破砕などでの火工系の安全管理に応用例がある。[17]

設計指針・規格

  • MIL-STD-1316:米国の信管およびS&A装置の安全設計基準。[18]
  • NATO AOP-4187(旧STANAG 4187
  1. ^ MIL-STD-1316E/F, Fuze Design, Safety Criteria. 米国国防総省.
  2. ^ NATO AOP-4187 Fuzing Systems. 欧州防衛庁(EDA).
  3. ^ NASA-STD-8719.12A Safety Standard for Explosives, Propellants, and Pyrotechnics. NASA.
  4. ^ JAXA『ロケットペイロード安全標準(JAXA-JMR-002E)』.
  5. ^ MIL-STD-1316E/F.
  6. ^ NATO AOP-4187.
  7. ^ MSFC-SPEC-3635C.
  8. ^ JAXA『ロケットペイロード安全標準(JAXA-JMR-002E)』.
  9. ^ JAXA/ISAS, OMOTENASHI解説ページ.
  10. ^ MSFC-SPEC-3635C.
  11. ^ NATO AOP-4187.
  12. ^ MSFC-SPEC-3635C.
  13. ^ NASA-STD-8719.12A.
  14. ^ MSFC-SPEC-3635C.
  15. ^ MIL-STD-1316E/F.
  16. ^ NATO AOP-4187.
  17. ^ PSEMC Safe and Arm Devices 製品解説.
  18. ^ MIL-STD-1316E/F.



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