大韓民国の警察とは? わかりやすく解説

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大韓民国の警察

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/05/22 07:31 UTC 版)

デモ隊に対抗し盧武鉉追悼式が行われる光化門への道を封鎖
行動前の待機
警察特攻隊(KNP-SWAT)の訓練(2012年)

大韓民国の警察(だいかんみんこくのけいさつ)は、大韓民国行政機関である。行政安全部(旧内務部)の外局である警察庁、及び自治体に設置される自治警察で構成される[1]

概要

韓国の警察制度は国家警察自治体警察の並立型であり、国家警察である警察庁は保安、外事、警備、対北朝鮮捜査などの任務を担当し、自治体警察である自治警察は、管轄地域内の住民の生活と密接に関わる生活安全、交通、雑踏警備、校内暴力などを担当する[2]緊急通報用電話番号は112番。

最新統計によれば、国内の全警察官数は約96,000人である。

紋章は天秤を首に掛けたオオワシが、赤青の陰陽を中央に配したムクゲの花の上に止まった図[3]。全ての制服警察官はこの徽章を両襟に着けている。他に、頂部に「POLICE」「경찰」と書かれた太陽(昼)と三日月または影(夜)を表わす不同心円の中に、赤青の陰陽を中央に配し無色の陰陽5つで囲むように並べたデザインの「警察公務章」というバッジがある。勤務中は制服であればこれを左胸に着用、私服刑事は革ケースに身分証と共に収め携帯している[4]

警察車両の表記は警察紋章に「경찰」「POLICE」。後述の自治警察移行後は朝鮮語・英語共に地名を追加した表記に変更されつつある[5][6]

なお、韓国の司法組織としては、本項の警察とは別に「海洋警察庁」(海洋水産部隷下の沿岸警備隊。かっては警察庁の一組織だった)および「鉄道特別司法警察隊」(国土交通部隷下。韓国鉄道公社の各路線および施設を管轄)が設置されている。

警察庁の組織

大韓民国警察庁庁舎
原州警察署のパトカー
人員輸送車(大宇BS106)

行政安全部に所属する警察庁が警察大学、警察教育院、中央警察学校、警察捜査研修院、警察病院を統括する。警察庁の内部組織は2021年に発足した国家捜査本部の他[7]、生活安全局、捜査局、サイバー安全局、交通局、警備局、情報局、保安局、外事局の8局からなる。他に、来韓外国人を守る観光警察がソウル、釜山、仁川の3都市に設置されている。

かつては地方警察についても、特別市・広域市・道単位で警察庁の地方機関である「(市・道名)地方警察庁」が直接管轄していたが、2021年1月4日に各市・道による自治警察に移行し、「地方」を外した「(市・道名)警察庁」に改称した[7]

済州特別自治道については、2006年、自治警察制導入を謳った地方分権特別法に基づき、全国に先駆けて韓国初の自治体警察である済州特別自治道自治警察団が設置されており、済州地方警察庁の自治警察移行後も併存している。

沿革

  • 1945年 - アメリカ軍占領統治下に警察管理局、各道に警察部を設置。
  • 1946年 - 警察管理局を警事部に昇格、新階級制度導入。
  • 1948年 - 内務部(省)の下に治安局、ソウル特別市、各道に警察局設置。
  • 1967年 - 各道、主要市に戦闘警察隊設置。
  • 1974年 - 内務部治安局を治安本部に改組。
  • 1979年 - 警察大学設置。
  • 1991年 - 治安本部を警察庁に改編、内務部の外庁となる。地方警察局は地方警察庁に改称。
  • 1996年 - 海洋警察庁海洋水産部へ移管。
  • 1998年 - 上部組織である内務部が総務処と統合され、行政自治部が成立。同部の傘下となる。
  • 1999年 - 蔚山地方警察庁設置。
  • 2000年 - 運転免許業務を運転免許試験管理団に移譲。
  • 2006年 - 済州特別自治道の発足にともない、最初の自治警察団が済州に設置される。
  • 2007年 - 大田地方警察庁・光州地方警察庁設置。
  • 2008年 - 行政自治部が行政安全部に改編される。
  • 2010年12月31日 - 運転免許試験管理業務を道路交通公団に移譲し、運転免許試験管理団廃止。
  • 2013年 - 行政安全部が安全行政部に改編。同部の傘下となる。
  • 2014年 - 安全行政部が行政自治部に改編。同部の傘下となる。
  • 2017年 - 行政自治部が行政安全部に改編。同部の傘下となる。
  • 2021年 - 改正警察法が施行され、自治警察が新たに発足。各地方警察庁から「地方」の文字が外される[7]

人員配置

2019年2月現在の定員[8]

  • 警察庁:1,828人
  • 警察大学:307人
  • 警察人材開発院:152人
  • 警察捜査研修院:56人
  • 中央警察学校:179人
  • 警察病院:605人

階級名称

第20代警察庁長の李哲聖(イ・チョルソン)治安総監
群山警察署長・羅攸仁(ナ・ユイン)総警
  • 治安総監(치안총감、Commissioner General)1人(警察庁長官に相当。警察庁長(ko:대한민국의 경찰청장)に補職)
  • 治安正監(Chief Superintendent General)5人(警視総監警視監に相当。警察庁次長、ソウル・京畿・釜山の3主要地方警察庁長、警察大学長に補職)
  • 治安監(Senior Superintendent General)(警視監に相当。警察庁各局長、警察庁企画調整官、ソウル・京畿・釜山を除く地方警察庁長、主要地方警察庁次長、警察教育院長、中央警察学校長)
  • 警務官(Superintendent General)(警視長に相当。地方警察庁次長、ソウル・京畿地方警察庁部長、警察庁管理官・審議官、一部の警察署長
  • 総警(Senior Superintendent)(警視正に相当。警察署長、地方警察庁課長)
  • 警正(Superintendent)(警視に相当。警察署課長、警察庁・地方警察庁係長)
  • 警監(Senior Inspector)(警部に相当。地区隊長、警察署係長・チーム長・隊長、警察庁・地方警察庁班長)
  • 警衛(Inspector)(警部補に相当。巡察チーム長、派出所(交番)所長、警察署班長、警察庁・地方警察庁は実務者)
  • 警査(Assistant Inspector)(巡査部長に相当)
  • 警長(Senior Policeman)(巡査長に相当)
  • 巡警(Policeman)(巡査に相当)
  • 巡警試補(Policeman Assistant)(階級ではなく警察学校学生 試験採用2年)

戦闘警察隊

「戦闘警察隊設置法施行令」による戦闘警察巡警の階級

  • 特警
  • 首警
  • 上警
  • 一警
  • 二警

済州自治警察

済州特別自治道設置及び国際自由都市造成のための特別法」による済州特別自治道自治警察団のみの階級(カッコ内は相当職)

  • 自治警務官(自治警察団長)
  • 自治総警
  • 自治警正
  • 自治警監
  • 自治警衛
  • 自治警査
  • 自治警長
  • 自治巡警

歴史

高麗時代以前

高麗時代以前の警察制度については正確な記録が残っておらず、比較的正確な記録が残っている刑法とは対照的である。

李氏朝鮮時代

李氏朝鮮時代は犯罪の取り締まりにあたる官庁として捕盗庁(포도청)が置かれ、捕盗大将(포도대장)が警察業務を管掌した。1835年には組織が拡大され、左右捕盗庁(좌우포도청)となった[9]

1884年に左右捕盗庁は廃止され、新たに警務庁(경무청)が設置され漢城府内の治安維持を担った[9]。地方においては内部(내부、現代の内務省に相当)が警察業務を管掌した[10]

大韓帝国時代

大韓帝国成立(1897年)と前後して近代警察制度が導入された。1899年、警務庁長官は警務大臣(경무대신)へと格上げされ、全国の警察業務を管掌するように改められた。 1901年には警務庁が内部傘下となり、内務大臣(내무대신)が警察業務を管掌するようになった[9]

日本統治時代

大韓民国臨時政府の警察組織

1919年3.1独立運動で成立した大韓民国臨時政府は、内務部(내무부)の傘下に警務局(경무국)を設置し、同局に警察機能を担わせた。初代警務局長には内務部長の安昌浩が推薦した金九が就任(同年8月12日付)した。

警務局は警察業務の他諜報・監察を担い、臨時政府内に潜入した日本のスパイの摘発にあたったほか、裁判所を持っていなかった臨時政府において裁判所の機能も果たした。金九はヨ・スングンを警護部長に任命し、その下に多数の韓国人青年たちを雇いそこから選抜した20人余りを警護員として活動させ、裁判が開かれる際は金九自身が裁判長を務めた。

金九が警務局長を務めていた間の警務局の活動としては、日本のスパイであったソン・ウガプ、カン・リンウ両名の追放、日本領事館のスパイであったキム・ドスンの銃殺、独立運動家の毒殺を企図したファン・ハクソンの逮捕・処刑が挙げられる。

大韓民国時代

ソウル特別市西大門区にある大韓民国警察庁の庁舎

1945年8月15日朝鮮半島が解放されると、同年10月21日北緯38度線以南を統治する在朝鮮アメリカ陸軍司令部軍政庁(USAMGIK)に警務局(경무국)が、各道に警察部(경찰부)が設置され、アメリカ軍政下での警察組織が整えられた。1946年に軍政庁の組織改編があり、警務局を警務部(경무부)、各道警察部を管区警察庁(관구 경찰청)とし、新たに鉄道管区警察庁(철도 관구 경찰청)が設置された[9]

1948年8月15日に大韓民国が建国されると、同年9月に警察権がアメリカ軍政庁から大韓民国政府へ移管され、内務部(내무부)の下に治安局(치안국)が設けられ、各道・市管区警察庁は警察局(경찰국)と改称された。その後1974年に治安局は治安本部(치안본부)と改称され、1991年には治安本部が警察庁(경찰청)として拡大・独立し、各道・市警察局は地方警察庁(지방경찰청)となった[9]

1949年、鉄道管区警察庁が鉄道警察隊(철도경찰대)に縮小改編され、1963年に交通局へ移管された(現在の国土交通部鉄道特別司法警察隊[9]

1953年12月23日、海上における警察活動を担う海洋警察隊(해양경찰대)が設置され、海務庁への分離(1955年)と警察への再統合(1961年)を経て、1996年海洋水産部傘下の海洋警察庁(해양경찰청)として警察から改めて分離された[9]

2021年1月、自治警察制度の本格施行に伴い、警察庁傘下の各道・市地方警察庁は各道・市警察庁(경찰청)へ改称され、各道・市の自治警察となった[11]

戦闘警察隊

戦闘警察隊の隊員

韓国の警察には戦闘警察隊と呼ばれる組織が存在した。準軍事組織であり、北朝鮮から侵入した武装ゲリラの殺害・拘束(対間諜作戦)を目的としていた。

隊員は厳密には警察官ではない。徴兵によって集められ、韓国陸軍で軍事訓練を受けた後、出向という形で警察に勤務する。この者を作戦戦闘警察巡警と呼ぶ。戦闘警察への入隊を徴兵と同等とみなし、希望者を募って試験を行い、合格すると兵役期間中戦闘警察で勤務する義務戦闘警察巡警もある。軍事訓練は陸軍に委託する。

作戦戦闘警察巡警は主に対間諜作戦任務、義務戦闘警察巡警は主に警備・交通外勤・派出所勤務・防犯巡察など警察の補助任務を行っている。

国会警備隊や政府庁舎警備隊にも戦闘警察巡警が多く勤務している。

軍事独裁政権時代には「白骨団」と俗称される私服のデモ弾圧部隊が組織され、民主化運動の弾圧に猛威を振るった。名前は被っていたヘルメットが白かったことに由来している。弾圧方法は非常に過酷で、デモ参加者を殺害してしまうという不祥事を度々起こした。盾には自制のため「忍」の文字が書かれていた。

盧武鉉政権下では、過去に死者を出した経緯もあり、非殺傷性装備であるにもかかわらず催涙弾などの使用が禁止または制限されてしまい、警棒などを使用した近接検挙に頼らざるを得なくなり、デモ隊との間でしばしば乱闘に発展し、双方に多くの負傷者を生じる結果となった。

警察教育

前述のように警察大学(幹部候補生教育、高等教育)など警察庁運営の専門教育機関があるが、いずれも小規模なものである。このほか、東国大学校をはじめとした4年制大学に警察行政学科が設置され、警察専門教育を行っている。大学院課程まである大学も存在する。ただし、一般の4年制大学の警察行政学科を卒業しても警察公務員試験に合格しなければ、警察官にはなれない[注 1]。なお、警察公務員の採用は各地方警察庁ごとに行われ、採用者は警察行政学科卒業者も含め、中央警察学校において6か月間の基礎教育が課される。

警察庁の採用は大きく三つに分かれ、日本のノンキャリアにあたる巡警(巡査)採用、警察関連大学の卒業生を対象にした、日本の準キャリアにあたる警査(巡査部長)採用、また、日本のキャリアにあたる幹部候補生の警衛(警部補)採用がある。幹部候補生で採用された場合は1年間の警察総合学校での研修を終え、警察大学出身者と同様、警衛(警部補)として入庁することになる。韓国にも日本のキャリアにあたるものがあるが、韓国の弁護士資格を持つ者、および国家公務員採用上級試験に合格し、2年以上の経歴を持つ者だけに資格が与えられ、短期研修を経て警正(警視)に任命される。韓国内にこのようなキャリアは80余人だと言われていて[誰によって?] 、この中現在、弁護士出身は29人である。

ちなみに、警察大学は幹部警察官養成のための4年制大学である。警察における士官学校的な位置づけであり、軍における陸軍士官学校・海軍士官学校・空軍士官学校に相当する。警察大学のカリキュラムは大学警察行政学科に準じているが、警察学の講義、幹部警察官になるための訓練(テコンドーなどの武術や 射撃訓練、戦闘警察隊の訓練)がある。入学者の成績は全大学受験生の上位1~3パーセントほど。かなりの難関である[注 2]。卒業生は、卒業後ただちに警衛の階級(日本警察の警部補に相当)に任官する。

警察採用試験合格者からは政府機関(中央情報部、現・国家情報院)の工作員になる者もあり、日本では新潟日赤センター爆破未遂事件を引き起こしている[12]

不祥事

脚注

注釈

  1. 警察行政学科出身枠で受験可能
  2. これはソウル大学校の難易度にほぼ相当する。

出典

  1. 韓国警察 捜査総括組織の看板掛け=「すべて変える」 ソウル聯合ニュース 2021年1月4日
  2. 警察法改正案が可決 自治警察制導入へ=韓国 ソウル聯合ニュース 2020年12月9日
  3. CI Korea National Police Agency(英語)
  4. emblem Korea National Police Agency(英語)
  5. 자치 경찰 홍보 위해 '서울 경찰' 붙인 순찰차 운행(自治警察の広報のために「ソウル警察」をつけたパトロール車運行)”. 聯合ニュース. 2024年1月23日閲覧。
  6. 교통 순찰차 POLICE에서 DAEJEON POLICE 표기 변경(交通パトロールカーPOLICEでDAEJEON POLICE表記変更)”. 忠清日報. 2024年1月23日閲覧。
  7. 1 2 3 首長もないまま…警察捜査機構「国捜本」が発足 東亜日報 2023年1月1日閲覧。
  8. 警察庁訓令第913号(2019年2月26日施行)「警察庁とその所属機関組織及び定員管理規則」別表4。但し警察病院の定員は、行政安全部令第116号(2019年5月7日施行)「警察庁とその所属機関職制施行規則」別表10(別表改正日は2018年9月4日)による。
  9. 1 2 3 4 5 6 7 대한민국 경찰청 (2014年10月). 2014년 경찰백서 - 경찰 조직 연혁”. 2017年8月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月2日閲覧。
  10. 기록물기능분류-경무”. 조선총독부 기록물. 대한민국 국가기록원. 2017年9月10日閲覧。
  11. 首長もないまま…警察捜査機構「国捜本」が発足”. 동아일보 (2021年1月5日). 2025年12月17日閲覧。
  12. “50여년前 66인의 北送저지 공작대를 아십니까 [50余年前の66人の北送阻止工作隊をご存知ですか]. 朝鮮日報. (2011年4月30日) 2011年5月14日閲覧。

関連項目

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