内部補助
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/26 19:57 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動内部補助(ないぶほじょ)は、一つの事業体が複数の製品やサービスを供給しているときに、ある製品やサービスで発生した損失を、他の製品やサービスから得た利益で補填することである。内部相互補助、交錯補助ともいう[1]。同じ製品やサービスであっても、地域によって収益性に差があるときに、収益性の高い地域から低い地域に補填することも、内部補助に含まれる。
製品やサービスを供給するために必要な費用のうち、複数の製品やサービスの間で共通して発生する費用をどのように各製品・サービスに配分するかについては複数の方法が考えられるので、各事業分野の損益計算は簡単ではなく、したがって内部補助にあたるかどうかの判定も難しいとされる[2]。
なお管理会計において、本社費や事業部間の共通費などを各事業部に配賦する際に、そうした共通費などから各事業部が受けたサービスの程度と無関係に配賦額を決定することで、一部の事業部がより多くの共通費を負担することも内部相互補助と呼んでいる[3]。#管理会計における内部相互補助を参照。
定義
G.J.ポンソンビーは、「サービスの供給によって得ることのできる収入が、もし、事業者が当該サービスを供給しなければ、(a)直接的にあるいは間接的に、また、(b)短期的にあるいは長期的に、負わなくてすむ費用を償うのに不十分であることが知られているか、あるいは明確に予想されているサービス」が、内部補助を受けているサービスであると定義している[4]。いいかえれば、その事業のためだけに必要な費用を、その事業から得られる収入で、直接的にも間接的にも、短期的にも長期的にも賄うことができない場合は、内部補助を受けている事業である。直接的には損失が出ていても間接的に利潤をもたらす事業や、短期的には損失が出ても長期的には利潤をもたらす事業など、当該事業部門を維持する方がその事業体にとって利益になるような場合(後述)は、ポンソンビーの定義する内部補助にはあたらない[5]。
このようなサービスの供給は、一般の私企業においては発生しないはずのもので、仮に事業を行っている間に不採算となってこの条件に達した場合には、供給を打ち切るであろうものである。利潤を目的としていない公企業であるか、あるいは法律により事業への参入・退出や価格について規制を受けている私企業においてのみ、ポンソンビーの定義を満たしたサービスの供給が行われるとされる[5]。
不採算サービスを維持する方法として内部補助の他に、税金からの補助金を投入する方法があり、内部補助に対して外部補助と呼ばれる[6]。
判定方法
単一事業体で複数の事業を行っていても、各事業間で共通費用が一切存在せず、各事業の直接費のみで費用が構成されるなら、収入が費用を下回っている事業が内部補助を受けていることになる。しかし部門間の共通費用が存在する場合には、共通費用の配分方法によって各部門に帰属される費用が異なってくる[7]。
個々の事業の採算の判定には、収入としては直接当該事業に発生するもの、費用としては完全配賦原価(個別費と共通費配賦額の和)が用いられる。共通費は何らかの方法で各事業に配賦され、共通費配賦額まで含めて収入で賄えなければその事業は損失を生じていることになる。しかし、共通費の各事業への配賦方法には複数の方法があり、どの方法が正しい、あるいはもっともよいと結論することはできない。そのため、その事業がなければ発生しなかった費用(回避可能費用と呼ぶ)を負担しているのであれば、内部補助にはあたらないと考えられる。ここでAとBの2つの事業で構成されている事業体の例では、AとBのどちらを供給するためにも必要な費用をAとBの共通費、Aを供給するためにのみ必要な費用をAの回避可能費用、Bを供給するためにのみ必要な費用をBの回避可能費用という[2]。
より一般的に、多数の事業部門がある事業体において、G.R.ファウルハーバーが定義した内部補助の存在しない状態とは以下のとおりである[8]。
1.
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