Amazon FSx
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/09/06 07:31 UTC 版)
| URL | aws |
|---|---|
| タイプ | クラウドストレージ(ファイルストレージ) |
| 運営者 | Amazon.com |
| 営利性 | 営利 |
| 登録 | 必要 |
| 開始 | 2018年11月28日 |
Amazon FSx(アマゾン エフエスエックス)は、Amazon.comがAmazon Web Services(AWS)の一部として提供する、フルマネージド型のファイルシステムサービス群である。Windows File Server、Lustre、NetApp ONTAP、OpenZFSという4種類のファイルシステムの中から用途に合ったものを選び、サーバーの構築やソフトウェアの更新、ハードウェア障害への対処をAWSに任せたまま、ネットワーク経由で共有ファイルストレージとして利用できる[1][2][3]。
2018年11月にAWSの年次イベントre:Invent 2018で、Windows File Server向けとLustre向けの2種類が発表されて提供が始まった[4][5][6][7]。2021年9月にNetAppのONTAPを用いたもの、同年11月にオープンソースのOpenZFSを用いたものが加わって4種類となった[8][9][10]。
概要
Amazon FSxは、ファイルサーバーそのものをAWSが運用する形で提供するサービスである。利用者は自分のAmazon Virtual Private Cloud(VPC)内にファイルシステムを作成し、Amazon EC2のインスタンスやオンプレミスのコンピューターから、SMBやNFSなどの標準的なプロトコルでマウントして使う[3][11]。ファイルサーバーとストレージの用意、ソフトウェアのインストールとパッチ適用、ハードウェア障害の検出と対処、バックアップの実行といった作業はAWS側が担う[12][3]。また、アクセス権限を管理するAWS Identity and Access Managementや暗号鍵を管理するAWS Key Management Service、操作記録を残すAWS CloudTrailなど、AWSの他のサービスと連携する[3]。
AWSにはファイルストレージのサービスとしてAmazon Elastic File System(EFS)もある。EFSはAWSがクラウド向けに独自に設計したNFSストレージである[2]。これに対してFSxは、利用者がファイルストレージの基盤となるファイルシステムを選び、そのファイルシステムの機能と性能を丸ごと使えるサービスであるとZDNetは説明している[13]。AWSは、EFSがサーバーの台数を増やして性能を高めるスケールアウト型、FSxがスループットやIOPSの設定値を上げて性能を高めるスケールアップ型であり、EFSの対応クライアントがLinuxであるのに対して、FSxはWindowsやmacOSにも対応すると説明している[2]。
提供されるファイルシステム
Amazon FSx for Windows File Server
Windows Server上に構築されたフルマネージドのファイルストレージで、SMBプロトコルで接続する。Active Directoryと連携でき、オンプレミスで利用中の既存のActive Directoryもそのまま使える[2][3]。Windowsのファイルシステム機能をネイティブに備えるため、Windowsの開発者や管理者は使用中のコードやアプリケーション、ツールを変更せずに利用できるとされる[3]。ストレージにはSSDのほか安価なHDDも選択できる[2]。バックアップにはWindowsのボリュームシャドウコピーサービス(VSS)を使い、ファイルシステムの整合性を保った増分バックアップを作る[3]。
発表時点ではSMB 2.0から3.1.1までのバージョンに対応し、Windows 7以降、Windows Server 2008以降、およびLinuxのSambaクライアントからアクセスできた。性能は1秒あたり最大2,048メガバイトのスループット、容量は1ファイルシステムあたり最大64テラバイトで、当初は米国東部(バージニア北部)、米国東部(オハイオ)、米国西部(オレゴン)の3リージョンで提供された[4]。TechCrunchは、一定数の企業が依然としてWindowsファイルサーバーを使っていることから、AWSがその市場をマイクロソフトに譲らず取り込もうとするサービスだと報じた[5]。ZDNetによれば、AWSのCEOアンディ・ジャシーは基調講演で、当初はWindowsファイルシステムをEFSの一部として実現しようとしたが、顧客がネイティブなWindowsファイルシステムを求めたため方針を変えたと説明した[6]。2019年11月には、複数のアベイラビリティーゾーンにまたがって配置し、可用性を高めるマルチAZ配置が追加された[14]。
Amazon FSx for Lustre
オープンソースの並列ファイルシステムであるLustreをフルマネージドで提供する[15]。機械学習、高性能計算(HPC)、映像処理、金融モデリングなど、処理速度が重要な用途を想定している[16]。ジャシーはre:Invent 2018の基調講演で、大規模で並列性の高いHPCワークロードに向くファイルシステムが存在しなかったことを、FSx for Lustreを投入した理由として挙げた[6]。POSIXに準拠しているため、既存のLinuxベースのアプリケーションを変更せずに使える[16]。
特徴の1つがAmazon S3との連携で、ファイルシステムをS3のバケットと結び付け、バケットの内容をLustreのファイルシステムとして読み書きできる[15]。一時的なデータ処理向けでデータを複製しない「スクラッチ」と、長期保存向けでデータを複製する「永続」の2つの配置形態があり、ストレージクラスにはSSD、Intelligent-Tiering、HDDがある[16]。2025年5月に一般提供されたIntelligent-Tieringストレージクラスは、あらかじめ容量を確保する必要がなく、データの追加や削除に応じてファイルシステムが自動的に拡大・縮小し、アクセス頻度に応じてデータを低コストの階層へ移す[17]。
Amazon FSx for NetApp ONTAP
NetAppのストレージOSであるONTAPをフルマネージドで提供する。2021年9月2日に一般提供が始まり、AWSは「クラウド上で初めての完全マネージド型ONTAPファイルシステム」と位置付けた[8][13]。発表はAWS Storage Day 2021で行われた[18]。ZDNetは、ONTAPが従来オンプレミスのNASを支えてきた技術であり、NASに依存する企業アプリケーションをコードやデータ管理方法を変えずにAWSへ移せるようになると報じた[13]。
NFS、SMBに加えてブロックストレージのプロトコルであるiSCSIにも対応するマルチプロトコルのファイルストレージで、ONTAPが持つスナップショットやレプリケーション(SnapMirror)、クローン作成(FlexClone)、重複排除などの機能を利用できる[2][18]。発表時点では、各ファイルシステムは2つのアベイラビリティーゾーンに配置され、ゾーン間の自動レプリケーションとフェイルオーバーにより99.99パーセントの可用性SLAを提供した。ストレージは高性能なSSDによるプライマリストレージと、アクセス頻度の低いデータを置く低コストで伸縮性のある容量プールストレージの2階層からなる[18]。
Amazon FSx for OpenZFS
オープンソースのファイルシステムOpenZFSをフルマネージドで提供する。オンプレミスのZFSやその他のLinuxベースのファイルサーバーに置かれたデータを、アプリケーションのコードやデータ管理方法を変えずにAWSへ移すことを目的としている[11][9]。NFS(バージョン3、4.0、4.1、4.2)で接続し、Linux、Windows、macOSから利用できる[11]。OpenZFSの特徴である透過的な圧縮、継続的なデータ整合性の検証、スナップショット、コピーオンライトといった機能を、OpenZFSの構築や管理に従来必要だった専門知識なしに使えるとしている[19]。
2021年11月30日、re:Invent 2021で発表されて同日に提供が始まった[10][19][20]。AWSのプロセッサーであるGravitonと独自のネットワーク技術SRD(Scalable Reliable Datagram)を基盤とし、発表時点で最大100万IOPS、100〜200マイクロ秒のレイテンシ、非圧縮で最大毎秒4ギガバイトのスループットを掲げた[19]。同時に発表されたS3 Glacier Instant RetrievalストレージクラスやAWS Backupの機能拡張とあわせて、4つの新しいストレージサービス・機能の1つとして位置付けられた[20][9]。
歴史
- 2018年11月28日 - re:Invent 2018でAmazon FSx for Windows File ServerとAmazon FSx for Lustreを発表し、提供を開始[14][7][4][6]。
- 2019年11月20日 - FSx for Windows File ServerにマルチAZ配置を追加[14]。
- 2020年11月9日 - AWS BackupがAmazon FSxのファイルシステムのバックアップに対応[21]。
- 2021年9月2日 - Amazon FSx for NetApp ONTAPの提供を開始[8][22]。
- 2021年11月30日 - re:Invent 2021でAmazon FSx for OpenZFSを発表し、提供を開始[10][20]。
- 2025年5月29日 - FSx for LustreにIntelligent-Tieringストレージクラスを追加[17]。
関連項目
脚注
- ↑ “Amazon FSx|機能が豊富な高性能ファイルシステム”. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 “AWS ファイルストレージサービスの選び方”. Amazon Web Services ブログ. Amazon Web Services (2023年2月1日). 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 “FSx for Windows ファイルサーバーとは?”. Amazon FSx for Windows File Server ユーザーガイド. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 新野淳一 (2018年11月29日). “[速報]フルマネージドなWindowsファイルサーバ「Amazon FSx for Windows File Server」発表。AWS re:Invent 2018”. Publickey. 2026年5月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年9月6日閲覧。
- 1 2 Ron Miller (2018年11月28日). “AWS tries to lure Windows users with Amazon FSx for Windows File Server” (英語). TechCrunch. 2025年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 4 Asha Barbaschow (2018年11月28日). “Amazon rolls out FSx for Windows File Server” (英語). ZDNet. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 “Document history - FSx for Lustre” (英語). Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 “AWS Announces General Availability of Amazon FSx for NetApp ONTAP” (英語). Amazon.com (2021年9月2日). 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 Steef-Jan Wiggers (2021年12月5日). “AWS Introduces Amazon FSx for OpenZFS” (英語). InfoQ. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 “Document history for Amazon FSx for OpenZFS” (英語). Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 “What is Amazon FSx for OpenZFS?” (英語). Amazon FSx for OpenZFS User Guide. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- ↑ “Amazon FSx for NetApp ONTAP とは何ですか?”. Amazon FSx for NetApp ONTAP ユーザーガイド. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 Stephanie Condon (2021年9月2日). “AWS, NetApp unveil the first fully-managed ONTAP file system in the cloud” (英語). ZDNet. 2025年7月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 “Document history - Amazon FSx for Windows File Server” (英語). Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 Jeff Barr (2018年11月28日). “New – Amazon FSx for Lustre” (英語). AWS News Blog. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 “Amazon FSx for Lustre とは何ですか?”. Amazon FSx for Lustre ユーザーガイド. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 “Amazon FSx for Lustre launches new storage class with the lowest-cost and only fully elastic Lustre file storage” (英語). AWS News Blog. Amazon Web Services (2025年5月29日). 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 Renato Losio(翻訳:h_yoshida) (2021年9月16日). “AWSがAmazon FSx for NetApp ONTAPを発表”. InfoQ Japan. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 Jeff Barr (2021年11月30日). “New – Amazon FSx for OpenZFS” (英語). AWS News Blog. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 “AWS Announces Four New Storage Services and Capabilities” (英語). Amazon.com (2021年11月30日). 2026年9月6日閲覧。
- ↑ “AWS Backup のドキュメント履歴”. AWS Backup デベロッパーガイド. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- ↑ “Amazon FSx for NetApp ONTAP のドキュメント履歴”. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
外部リンク
- Amazon FSx(公式サイト)
- Amazon FSxのページへのリンク