関戸美智子

現代俳句データベース(人名)

関戸美智子

関戸美智子の俳句

おむすびの中のつめたし八重桜

こつこつと小川が流れ春の宵

ごっくんと生唾呑んで春夕焼

はつ恋のように父の忌青き踏む

ひきつづき大工らのこえ夏兆す

ぼたんゆき素顔のように化粧する

やわらかくゆびさされおり燕の巣

ブロック塀を記憶している蝸牛

ペンキ屋は濃くしてしまう目借時

三尺寝大工の髭が伸びている

啄木忌五円切手を貼りました

大好きなかれーはうすの冬深し

手招かれ畳の上のわらび餅

教室で耳ふくらます雪解川

早退し冬至かぼちゃを煮ておりぬ

春寒の付箋を外す青山河

春昼のキャベツが甘い父の死後

春泥を跳んで鴉のみずみずし

晩春がぽっかり空いてペンキ塗る

朧夜の日本手拭いざらついて

木下闇椅子がないから立っている

柔らかく人とぶつかる雛の家

桃の日のテーブル戦後の匂いです

梅咲いてタクシードライバー口ごもる

武家屋敷散文的に水を打つ

父の忌をのんべんだらり白障子

硝子屋は空っぽ冬日降りそそぐ

空の青キリンに縫い目ありました

竹落葉猫の素足のうつくしく

花曇赤子なにやらかがやかす

蛇の衣遊覧船は出たばかり

蟷螂のたっぷり枯れる日曜日

豆腐屋のほこりほこりと目借時

身辺に水のつながり寒明ける

雪の国ほんとうは引く扉です

青蜥蜴ステンドグラスは日の匂い

鳥籠の寒明け落語聞いている