自立のための 3歩の住まいとは? わかりやすく解説

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自立のための 3歩の住まい

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/14 05:40 UTC 版)

自立のための 3歩の住まい(じりつのための 3ぽのすまい)は、静岡県において、静岡県立静岡がんセンター、ファルマバレーセンターを中核機関として医療健康産業の集積と発展を図る「ファルマバレープロジェクト」を推進し、その一環として、2019年より、ゲノム解析、疾病管理、自立支援の住まいづくり・ものづくりをテーマとする「健康長寿・自立支援プロジェクト」を立ち上げ、その成果を医療健康福祉ビジネスに活かす試みを進めているが、その一部を構成する「人生百年時代の住宅整備プロジェクト」の成果である[1]。                    

「3歩の住まい」モデルルーム
CareTEX東京’25展示

概要

「自立のための 3歩の住まい」は、認知機能に問題がない高齢者や身体的弱者が、例えば、健康寿命が尽きた後の数年間を自立し、快適に暮らせる住まいづくりへの挑戦である。何らかの身体的障害を持つ人間が、自立して安楽に暮らすには、一つの部屋に生活のための機能を集中することが望ましい。どのような大邸宅に住んでいても、移動が困難となれば生活の拠点は一つの部屋にならざるを得ない。

そこで、「3歩へのこだわり」、「医療・介護に適した居室」、「ロボット・AI化」、「家族・社会との絆」の4点を重視し、2021年3月、ファルマバレーセンターにモデルルームを完成させた。

設計・整備は、静岡県、静岡がんセンター(看護部門、緩和医療科、整形外科、リハビリテーション科など)、ファルマバレーセンター,医療建築・設備備品関連企業から成る“人生百年時代の住宅整備コンソーシアム” によって実現された。

特徴

1.モデルルーム設計

設計方針には、静岡がんセンターでの治療・ケアの経験が生きている。がん患者を対象としたケアは、健康寿命が尽きた高齢者のケアに類似している。健康寿命が尽きてから、死に至るまで約10年の期間があるが、悪化したがん患者では、それが1年未満に短縮されることが多い。20年間で2万人の最期の看取りを行った実績と経験は、健康寿命が尽きた高齢者や身体障害者の自立支援のためのノウハウとなっている。

モデルルームの設計にあたっては、「コルビュジエのカップ・マルタンの休暇小屋」、「静岡がんセンター緩和ケア病室」、「高齢者住宅(山口邸別棟)」の3つの既存例を参考にしている。

各種設備の配置は、これまでの住宅の居室とは全く異なっている。その理由は、1日の大半を過ごすベッドを中心に考え、医療・介護のためその周囲を広くとり、その上で、ベッドから横並びに配置されたトイレ、シャワー、洗面所へ3歩で到達できる距離感を持たせたためである。

2.4つの特徴

特徴 主な仕様・設備等
①3歩へのこだわり ・排泄の容易さを必須要件と考え、ベッドから3歩の距離にトイレを配置し、その左右に洗面所とシャワー室を設置。
②医療・介護に適した居室 ・感染病防止のため新たに開発した、抗ウイルス、抗菌、消臭、抗アレルギー機能を備えた床・壁材を用い、除菌脱臭空気洗浄装置も導入。

・床材には柔らかい素材を使用し、転倒時の骨折防止にも配慮。

・生活補助天井レールは、患者の道具箱を吊り下げ、患者を吊り下げて移動させるリフトにも使用可能。

③ロボット化・AI化 ・患者の身体学機能を学習し、適切な負荷をかけ、運動能力を高める歩行訓練ロボットを整備。

・高齢者の生活を支える立ち上がりを支援する介護用電動ベッドや音声操作のスマートスピーカーを整備。

④家族・社会との絆 ・家族、社会との絆が薄れると認知機能の低下が進む可能性があるため、家族とのテレビ会議や遠隔医療が実施可能な高機能ディスプレイを設置。

共同研究室としての役割

「自立のための 3歩の住まい」モデルルームは、20年後の高齢者居室モデルのための共同研究室として位置づけている。そこで、見学者を募り、共に議論し、新たな機能・設備備品・サービスのアイデアを生み出す場として活用している。

取り組み

時期 内容
令和3年3月 ・ファルマモデルルーム「自立のための 3歩の住まい」をファルマバレーセンター内に開設
令和4年8月 ・提案事業が国土交通省「住まい環境整備モデル事業」に採択
令和5年2月 ・『「自立のための 3歩の住まい」普及セミナー/安心・安全・快適な自立を支える設備・福祉機器展』を開催
令和5年3月 ・『「自立のための 3歩の住まい」の標準モデル 標準設計マニュアル/設計サンプル』を作成
令和5年7月 ・佳子内親王殿下がファルマモデルルームを御視察
令和5年9月 ・SBSマイホームセンター静岡展示場内に「自立のための 3歩の住まい」展示ブース出展
令和6年3月 ・CareTeX東京2024(東京ビッグサイト)で出展し、モデルルームを再現
令和7年1月 ・静岡コンソーシアムキックオフミーティング開催
令和7年2月 ・CareTeX東京2025(東京ビッグサイト)で出展し、モデルルームを再現

参考文献

  • 山口建「自立のための 3歩の住まい」『医療福祉建築会誌』第214号、一般社団法人日本医療福祉建築協会、2022年1 月。 

脚注

  1. ^ 山口建 2022, 自立のための3歩の住まい.

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