プレマックの原理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/03 13:21 UTC 版)
プレマックの原理(プレマックのげんり、英: Premack principle)は、心理学者デイヴィッド・プレマックによって提唱された強化の原理である。出現頻度の低い行動のあとに、出現頻度の高い行動を行うと、出現頻度の低い行動の出現率が高まるという現象を指す。「おばあちゃんのルール(grandma's rule)」とも呼ばれる[1]。
概要
プレマックの原理とは、出現頻度の低い行動(あまり「やりたくない」と思う行動)のあとに出現頻度の高い行動(人が自発的に「やりたい」と思う行動)を設定することで、その低頻度行動の発生を増加させるというものである。すなわち、高頻度行動が低頻度行動の強化子として機能し、活動そのものが強化子となり得るという考え方である。
例として、「宿題をしたら友達と遊べる」というルールを設定すると、宿題をする行動(低頻度行動)が増える、「野菜を食べたら、デザートが食べられる」とすると、野菜を食べる行動(低頻度行動)が強化されるなどがある[2]。
実験
プレマックらは、いくつかの実験を行いこの原理を検証した。その代表的な研究として、幼児を対象にした「キャンディを食べる」か「ピンボールで遊ぶ」かを選択させた実験がある。
まず各児童がどちらの行動を好むかを調べた後、以下のように条件を設定した。
- 条件1:ピンボールで遊ぶとキャンディを食べられる
- 条件2:キャンディを食べるとピンボールで遊べる
結果として、キャンディを好む子どもはピンボールで遊ぶ行動(低頻度行動)が強化され、ピンボールを好む子どもはキャンディを食べる行動(低頻度行動)が強化された。この研究は、高頻度行動が低頻度行動を強化するというプレマックの原理を支持するものであった[3]。
反応遮断化理論
プレマックの原理では「高頻度行動が低頻度行動を強化する」とされるが、高頻度行動が制限されていない場合(その人が普段から自由にその行動ができる状態)では、低頻度行動を強化しないことがある。つまり、いつでも「高頻度行動=強化子」になるわけではない。これを説明するため、1974年にティンバーレイクとアリソンが反応遮断化理論(response deprivation hypothesis)を提唱した。反応遮断化理論によれば、ある行動へのアクセスが制限されると、その行動の価値が高まり、他の行動を強化する可能性がある。すなわち、行動が強化子として作用するかどうかは「その行動がどの程度制限されているか」によって決まるとされる[4]。
関連項目
脚注
- ^ Cooper, J. O., Heron, T. E., & Heward, W. L. (2014). Applied behavior analysis. Hoboken, NJ: Pearson Education, Inc.
- ^ “Premack's principle (relativity theory of reinforcement) | Research Starters | EBSCO Research” (英語). EBSCO. 2025年10月1日閲覧。
- ^ Michael Domjan (2010). The principles of learning and behavior in Belmont, CA: Wadsworth.
- ^ Timberlake and Allison, Response deprivation: an empirical approach to instrumental performance, Psychological Review, 1974, 81, 146-164
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