窪田英治

現代俳句データベース(人名)

窪田英治

窪田英治の俳句

いかづちの人恋しがり海に落つ

いつまでもおたまじやくしでゐたきとよ

ひとつづつ寒さ持ち合ひ群るる鴨

ふはふはと生きてしまへり烏瓜

パンドラの箱の底ひに種袋

亡き人と春の落葉を踏みゆきぬ

伊邪那岐命の晩年知らず草紅葉

八月十五日スポーツ欄の賑はへり

否応もなく猿麻桛吊り下がる

吾死ねば亡き君も死ぬ冬夕焼

夕焼や自ら出せぬ死亡届

外されて木に戻りたる神楽面

寄居虫売港に軋む音ばかり

掛香を首に揺らして不良なり

春遅々とゲルニカの灯に色なきよ

昼と夜の境くつきり牧の夏

木型より生まるる鳥や春祭

東京大学安田講堂猫の恋

桔梗のぽんぽんと咲く白昼夢

淋しき日春のキャベツをてんこ盛り

渦潮に木偶の頭の沈みゆく

火の色に翼塗られて梅雨の鳥

白南風やものの初めの海の色

秋空へ軽くなりたる山の塔

純白は散る瞬間の花の色

腹空くは楽しきことよ十日夜

草の絮飛びゆくものの羨まし

草氷柱早く嫌ひになりたくて

萍紅葉流れゆく夢持ちつづけ

落ち蟬の片羽広げて鳴き止みぬ

軍港の空ゆく鳥や夏深む

郷倉は拳のごとし梅雨兆す

野火叩くいつしか己叩きゐる

青葦の揺らぎいつしか吾のゆらぎ

鯰の髭長きが癪に障りけり