18人の音楽家のための音楽 演奏時間

18人の音楽家のための音楽

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 05:05 UTC 版)

演奏時間

スコアでは約55分、公式ブージーアンドホークスサイトでは約58分となっているが、反復の回数が多ければ1時間を超える。

アンサンブルの手法

指揮者なしのアンサンブル[注釈 1]で演奏されるが、ミニマル・ミュージックの常套手段である反復が基本となっており、パターンやセクションの移り変わり、フェードアウトの開始、新しいモチーフの開始は全てプレイヤーの合図( cue )によって行われる[5]。特に重要な役割を与えられているのがヴィブラフォン奏者と第1クラリネット(バスクラリネット)奏者である。ヴィブラフォン奏者は聴覚による合図、第1クラリネット奏者は視覚による合図を全プレイヤーに送る。これらの合図は楽譜に記されているが、「セクション」の開始部分のように、これ以外のプレイヤーの動きが重要な役割を担っている場合もある。このようなアンサンブルの手法はインドネシアのガムランや、西アフリカのパーカッションアンサンブルから学んだものである。

ヴィブラフォンの合図

"repeat until cue "(合図があるまでリピート)という指示がある部分で、同じパターンの反復が持続される。この反復パターンにのって、ヴィブラフォンが2~4小節前後のモチーフを演奏し、その最後の音に合わせて全プレイヤーが一斉にパターンを変更する。

クラリネット(バスクラリネット)の合図

楽器を上げ下げする動作によって視覚的な合図を送る。全プレイヤーはこの動きに注視し、パターンを変更する。

構成

全体は13のセクション[注釈 2][6]から構成され、「パルスPulse)」・「セクションSections ) I 〜 XI 」・「パルス」の3部分に大別できる。「パルス」は1/4拍子、「セクション」は3/2=6/4拍子。テンポは最初から最後まで一定である(四分音符=204~210)。調性は基本的にイ長調嬰ヘ短調で、セクションVだけがホ長調に転調する。

パルス

「パルス」では反復によって引き伸ばされた11種類の和音が提示される。1つの和音につき、楽器ごとにタイミングをずらしたクレッシェンド・デクレッシェンド(< f >)の大きな波が2回行われる。ここで重要になるのは、バスクラリネットと女声のブレスの長さであり、鍵盤楽器や弦楽器はこれらのブレスを感じて演奏しなくてはならない。1つの和音から次の和音への切り替わりは全て第1バスクラリネット奏者の視覚的合図によって行われる。11番目の和音を提示した後、冒頭の和音に戻り、「セクション」の始まりを準備する。

セクション

第3マリンバと第3ピアノが新しいモチーフを開始し「セクション」に入る。ここから始まるI~XIの11のセクションには、「パルス」で提示された11の和音がそれぞれ対応しており、同一の和音上で音楽が展開される。各セクションは「たけやぶやけた」式のアーチ型構造、もしくは次のセクションへの推移となっている。セクションの移り変わりはほとんどがヴィブラフォンの聴覚的合図によって行われ、セクションVの入りとセクションXの入りだけがバスクラリネットの合図によって示される。

パルス

セクションXIから引き続き、「パルス」が再現されるが、クレッシェンド・デクレッシェンドの波の頂点は f ではなく mf になっているため音楽の表情は冒頭のものと異なる。最後は[バスクラリネットと女声]→[チェロと第4ピアノ]→[第1、第2ピアノ]→[第1、第2マリンバ]の順に消えて行き、唯一残ったヴァイオリンのパルスがフェードアウトして曲全体を閉じる。

脚注


注釈

  1. ^ ただしライヒ自身は、アンサンブルを作りあげる際に、初期の3~4回の練習には全体を見渡す指揮者がいた方が助かるであろうと述べている。
  2. ^ セクションIIIは、同一の和音の上で2回の音楽展開があり、それぞれセクションIIIA、セクションIIIBとなっているので、厳密には1+12+1=14のセクションとなる。

出典

  1. ^ Jesse Henk Nicolaas Budel. “Steve Reich's ‘Music For 18 Musicians’ as a Soundscape Composition”. www.researchgate.net. www.researchgate.net. 2024年1月12日閲覧。
  2. ^ Russell Hartenberger. “Performance Practice in the Music of Steve Reich”. www.cambridge.org. www.cambridge.org. 2024年1月12日閲覧。
  3. ^ Marc Andrew Mellits. “Music for 18 Musicians, by Steve Reich: A Complete Score with Analysis”. books.google.com. books.google.com. 2024年1月12日閲覧。
  4. ^ B&H. “Music for 18 Musicians (1974-76)”. www.boosey.com. www.boosey.com. 2024年1月12日閲覧。
  5. ^ Steve Reich. “Music for 18 musicians”. webcache.googleusercontent.com. edisciplinas.usp.br. 2024年1月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月12日閲覧。
  6. ^ ブージー・アンド・ホークス社のスコアからNote by the composer、about this editionそしてnotes on performance





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