裸の王様 原作と翻案との違い

裸の王様

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/30 09:03 UTC 版)

原作と翻案との違い

原話と物語の大枠は変わっていないが、元の話では、馬鹿の目には見えない布地ではなく、姦通から生まれた者には見えない布地であり、「さまは裸だ」と真実を告げるのは、子供ではなく馬丁黒人である。

一橋大学附属図書館が公開している『アンデルセンと「裸の王様」』によると主な違いは以下のようになる[10]

原作と翻案との違い
フアン・マヌエル(1335年)『ルカノール伯爵』 アンデルセン(1837年)『童話集』
題名 あるといかさま機織り師たちに起こったこと 皇帝の新しい服
主人公 皇帝
主人公の関心事 王室の財産を増大させること 美しい新しい着物
詐欺師の人数 3人 2人
誰に見えない衣裳か 父親の実の子ではない者 自分の地位にふさわしくない者や、手におえないばか者
真実を告げる者 王の馬丁をしていた黒人 1人の小さな子供

あらすじ

岩波文庫大畑末吉訳「皇帝の新しい着物」をテキストにしてあらすじを記載する[11]

ある国に、新しい服が大好きな、おしゃれな皇帝がいた。ある日、城下町に二人組の男が、仕立て屋という触れ込みでやってきた。彼らは「自分の地位にふさわしくない者や、手におえない馬鹿者」の目には見えない、不思議な布地をつくることができるという。噂を聞いた皇帝は2人をお城に召し出して、大喜びで大金を払い、彼らに新しい衣装を注文した。

彼らは作業場に織機を設置し、さっそく仕事にかかる。皇帝が大臣を視察にやると、仕立て屋たちが忙しく織っている「ばか者には見えない布地」とやらは大臣の目にはまったく見えず、彼らは手になにも持っていないように見える。大臣はたいへん困るが、皇帝には自分には布地が見えなかったと言えず、仕立て屋たちが説明する布地の色と柄をそのまま報告することにした。

その後、視察にいった家来はみな「布地は見事なものでございます」と報告する。最後に皇帝がじきじき仕事場に行くと「ばか者には見えない布地」は、皇帝の目にもさっぱり見えない。皇帝はうろたえるが、家来たちには見えた布が自分に見えないとは言えず、布地の出来栄えを大声で賞賛し、周囲の家来も調子を合わせて衣装を褒める。

いよいよ、皇帝の新しい衣装は完成した。皇帝はパレードで新しい衣装をお披露目することにし、見えてもいない衣装を身にまとい、大通りを行進する。集まった国民も「ばか者」と思われるのをはばかり、歓呼して衣装を誉めそやす。

その中で、沿道にいた一人の小さな子供が、「だけど、なんにも着てないよ!」と叫び、群衆はざわめいた。「なんにも着ていらっしゃらないのか?」と、ざわめきは広がり、ついに皆が「なんにも着ていらっしゃらない!」と叫びだすなか、皇帝のパレードは続くのだった。

登場人物

2人の詐欺師
おうさま
→新しい服が大好き。逆らえる者は誰もいない。
2人の詐欺師
→布織り職人というふれこみ。ばか者には見えない布を織ると言って皇帝たちを騙す。
大臣
→正直者で通っている年寄り。人が良い。布地が見えたふりをして嘘をつく。
役人
→根はまっすぐ。
家来たち・町の人々
見栄や立場にとらわれ、誰も本当のことを言えない。

  1. ^ a b “Hans Christian Andersen : The Emperor's New Clothes”, sdu.dk, http://www.andersen.sdu.dk/vaerk/register/info_e.html?vid=17 
  2. ^ 『日本大百科全書』「裸の王様」
  3. ^ フワン・マヌエル 1984
  4. ^ フアン・マヌエル 1994, pp. 184–190
  5. ^ フアン・マヌエルの『ルカノール伯爵スペイン語版(Libro de los enxiemplos del Conde Lucanor et de Patronio)
  6. ^  Juan Manuel (スペイン語), Conde Lucanor, ウィキソースより閲覧。 
  7. ^ Ejemplo XXXII  Juan Manuel (スペイン語), Conde_Lucanor:Ejemplo_32, ウィキソースより閲覧。 
  8. ^ 「裸の王様」上司にならない7つの方法”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2013年1月7日). 2023年5月29日閲覧。
  9. ^ 管理職よ、裸の王様になるな!企業戦士のよろいを脱ぐために必要な職場環境とは”. ダイヤモンド・オンライン (2021年6月4日). 2023年5月29日閲覧。
  10. ^ a b c d 一橋大学附属図書館 2008
  11. ^ アンデルセン 1984, pp. 157–165
  12. ^ 高橋 1888
  13. ^ 渡辺 1888, pp. 81–85
  14. ^ 坪内 1900, pp. 22–27
  15. ^ 杉谷 1906, pp. 29–38
  16. ^ 菅野 & 奈倉 1907, pp. 73–103
  17. ^ 木村 1908, pp. 159–165
  18. ^ 和田垣 & 星野 1910
  19. ^ 上田 1911, pp. 30–43
  20. ^ 近藤 1911, pp. 1–18
  21. ^ アンデルセン 2011, pp. 126 f
  22. ^ a b Andersen, H.C. (1963年). “Keiserens nye Klæder” (デンマーク語). 2012年2月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年8月22日閲覧。
  23. ^ アンデルセン 2011, pp. 120–128
  24. ^ a b Andersen, H. C. (1900), “Des Kaisers neue Kleider” (ドイツ語), Sämmtliche Märchen, Leipzig, pp. 258-264, http://www.zeno.org/nid/20004412516 
  25. ^ a b Andersen, Hans Christian H. B. Paull, Henry訳 (1875), “The Emperor's New Clothes” (英語), Hans Andersen's Fairy Tales, London: Warne & Co., http://www.surlalunefairytales.com/emperorclothes/index.html 
  26. ^ アンデルセン 1984, p. 164


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