聖遺物 聖体神学との関係

聖遺物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/12 05:02 UTC 版)

聖体神学との関係

特別な力を認められた人物の墓や聖廟に詣でて祈願する宗教実践や、遺体、遺骨の分与が社会において一定の役割を果たす状況は、仏教、ユダヤ教、イスラーム世界にも認められる。だがキリスト教の聖遺物には「キリストの身体との関係」という特徴がある。キリスト教ではキリストが十字架にかかって自らの肉と血を神にささげた「受難」によって神の恩寵がこの世界にもたらされ、人の罪が購われたとされる。この救いの業を受け継ぐのが聖体拝領の祭儀である。その中で神にささげられ信徒に分け与えられる「聖体(パンと葡萄酒)」は、受難におけるキリストの肉と血と同じように神の恩寵を媒介すると早くから考えられていた。その後、苦しみながら神に命をささげる殉教にも受難と同じ価値があると考えられるようになり、聖人の遺体、聖遺物にも恩寵を媒介する力が認められていった。13世紀には聖遺物と司祭の仲介によって聖体がキリストの真の肉と血となるという聖体神学が確立する。

聖遺物、聖遺物容器とプロテスタントの宗教改革

16世紀になると聖書とキリストが定めた祭儀以外に恩寵にあずかるすべはないとするプロテスタント諸派では、聖職位階制とともに聖遺物が否定されるようになった。プロテスタントは聖人崇拝と共に聖遺物信仰も禁じ、プロテスタントが支配的となった地方の聖遺物は聖遺物容器英語版とともに破壊された。

聖遺物のリスト


  1. ^ 17世紀にはルーアンの聖職者マチュー・ド・ラロック Matthieu de Larroque (1619-1684) が著した『聖体拝領の歴史』(1671年)には「10世紀以来聖別(パンと葡萄酒をキリストの血と肉へと変える聖変化)の儀式に必要とされる手順は増加し」、それは当時の典礼定式書に記載されている通りとなったと書かれている。そしてその記述によれば「司祭はミサにおける聖体の聖別を執り行う前日に、すべての聖遺物を聖別を行う祭壇の中に安置しなければならない」とある (M. de Larroque, Histoire de l'Eucharistie, divisée en trois parties, dont la première traite de la forme de la célébration, la seconde de la doctrine, et la troisième du culte. Seconde édition, revue et corrigée, Amsterdam 1671, p. 80-81.)。
  2. ^ 柏木 2015, pp. 191–194, 204–212.
  3. ^ この聖遺物略奪正当化の論理はアルビジョア十字軍が緒戦においてかかげた「神はおのれの者を知りたまう(異端者でないものは神がお守りになるはずである。ゆえに十字軍は相手が異端者であるかどうか気にする必要はない)」に通じる論理であるといえる。
  4. ^ A. J. Andrea, B. E. Whale, B. E. Whale, Contemporary Sources for the Fourth Crusade, Leiden, 2000, p. 226.
  5. ^ KONRAD von Krosigk († 1225)(ドイツ語) – Biographia Cisterciensis
  6. ^ Martin of Pairis(英語) - The Crusades
  7. ^ Jerome, Ad Riparium, i, P.L., XXII, 907.
  8. ^ The Catholic Source Book A Comprehensive Collection of Information about the Catholic Church ISBN 0-15-950653-0
  9. ^ The ''Code of Canon Law''”. Vatican.va. 2013年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年3月4日閲覧。
  10. ^ Venerating Relics at Mass”. 2018年5月22日閲覧。






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