女子プロレス 特色

女子プロレス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/02 14:26 UTC 版)

特色

デビュー

女子プロレスの場合は多くの団体で「オーディション」と「プロテスト」の2段階を踏まなければデビューできない仕組みとなっている。このシステムはビューティ・ペアの全盛期の全日本女子プロレスにて導入されたもので、希望者の殺到により1度にプロテストを行うことが困難になったため、前段階としてオーディションを行い、そこで選ばれた者数名を候補者として一定期間後にプロテストを受けさせた。後に練習生制度を取り入れたがプロテスト受験を必須としたのは変わらない。その後もこれを継続して他団体も追随する形で導入している(男子団体でも元全女の北斗晶が代表を務めるダイヤモンド・リングで同様のシステムを取り入れている)。

かつての全日本女子では義務教育修了(または見込)者で18歳以下をオーディション受験資格と定めていたが、25歳定年制の事実上廃止や女性の高学歴化・晩婚化もあり、上限は22歳まで引き上げられた。

近年は女子プロレスラー志願者が減少していることもあり、アイスリボンのように2段階選抜を撤廃して門戸を広げる団体も現れている。また一部女子プロレス団体では年齢制限を撤廃したり拡げるなどしているため、現在では小中学生レスラーや25歳以上でデビューした遅咲きの選手もおり、デビュー年齢の差も上下で大きくなっている。

階級

男子プロレスの場合は100kg前後を境にヘビー級とジュニアヘビー級に分かれるが女子は基本的に無差別級である。ただし一部女子プロレス団体では体重別階級の線引きをしており、この場合は60kg前後で分けることが多い。体重制限のあるタイトルとしてはかつての全日本女子のWWWA世界スーパーライト級王座GAEA JAPANWCW世界女子クルーザー級王座が存在していた。また、アイスリボンには体重制限のあるICE×60王座が最高位の王座として存在したが、現在は撤廃されてICE×∞王座に改称された。

ジュニア

男子における「ジュニア」は上述の「ジュニアヘビー級」を意味するが、女子ではデビューからのキャリアが浅い若手を意味する。ジュニアにカテゴライズされるキャリアは団体によって異なるが各女子プロレス団体のジュニア女子選手を集めた「ジュニア・オールスター戦」では「5年以内」と規定していた。またジュニアを対象としたタイトルも存在して全日本女子の全日本ジュニア王座、現存するものではJWP女子プロレスJWPジュニア王座&POP王座がそれに当たる。なおプロレスリングWAVEでは「ヤング」と表現している。アイスリボンのインターネットシングル王座は、4代目王者決定トーナメント以降にデビュー3年以内もしくは19歳以下に規定を変更して実質的なジュニア王座となっている(現在は規定廃止)。REINA女子プロレスCMLLと合同で創設したCMLL-REINAインターナショナルジュニア王座はデビュー10年以内と対象が大きくなっている。

芸能との関わり

女子プロレスと芸能の関係は非常に深い。1970年代に活躍したマッハ文朱はレスラーと並行して歌手としても活動して女子プロレスの地位向上に貢献し、引退後はタレントに本格転向。マッハはいわゆるタレントレスラーの嚆矢となり、この流れは後にビューティー・ペアに受け継がれ、彼女らのレコードが大ヒットするなど社会現象を起こした。一方、全日本女子では所属選手の映画やドラマ出演も積極的に行われ、女子プロレス団体自体が全面協力することも多かった。以降も女子プロレスラーは歌手、女優のみならずダンプ松本アジャ・コング神取忍のようにキャラクターを生かしてバラエティ番組に進出したりキューティー鈴木井上貴子のように写真集を出版するなどリング外にも活動範囲を広げていった。

また、女性タレントが女子プロレスラーになるケースもある。その先駆けはアイドル歌手出身のミミ萩原でビューティー・ペアの引退後の全日本女子を支えた。近年では映画や音楽などとリンクして女子プロレスラー発掘を行うこともありアイスリボンとNEO女子プロレスが全面協力した「スリーカウント」では出演者に女子プロレスラー活動を義務付けて志田光松本都藤本つかさがレスラーとして活動している。2010年にはグラビアアイドルの愛川ゆず季が、2013年に声優・歌手の清水愛[14]、2022年にはタレントでYouTuberフワちゃん[15]レスラーデビューして話題になった。

芸能事務所が女子プロレスに関わることもある。吉本興業による吉本女子プロレスJd'ホリプロが企画したダリアンガールズがそれに当たる。Jd'では「アストレス」と呼ばれるプロジェクトを打ちアクションスターへの道としてプロレス活動を展開した。またホリプロもダリアンガールズが活動停止後にLLPWと業務提携を結びオーディションを展開したり「ホリプロ女子プロレス軍団」を結成してNEOに参戦させていた。最近ではオスカープロモーション赤井沙希を所属のままDDTプロレスリング(男子プロレス団体)に参戦させた。

経営

男子プロレス団体の場合は所属選手が社長を兼任する場合が多いが、女子プロレスではほとんどの団体でいわゆる「背広組」の男性(女性ではGAEA JAPANの杉山由果の例あり)が代表に就任している(例として、JWPの篠崎清、アイスリボンの佐藤肇、スターダムのロッシー小川など)。

しかし、LLPWでは団体設立の背景から初代の風間ルミから現在の神取忍まで代々所属選手が代表を務めている。

また、OZアカデミー女子プロレス尾崎魔弓が代表を務める会社が運営しており、2011年に設立されたワールド女子プロレス・ディアナ井上京子が代表に就任し(新法人移行とともに退任)、さらにプロレスリングWAVEでは新法人設立にあたりGAMI(現在は選手引退)が、センダイガールズプロレスリングも2011年7月の新崎人生みちのくプロレス)の代表退任に伴い後任として里村明衣子がそれぞれ就任しており兼任代表は増えつつある。

過去の女子プロレス団体では、メジャー女子プロレスAtoZの初代代表に堀田祐美子が就任し、後に一時引退していた下田美馬が代表代行を務めた。さらにNEO女子プロレスで一時的ではあるが元JDスター女子プロレス賀川照子(NEOではリングアナウンサーとして活動していた)が代表を務めたことがある。

ファイトマネー

かつての全日本女子プロレスでは、デビュー時は基本給と出場給を併せても月10万円には達せず、貧困に喘ぐ選手も少なく無かった[16]。その一方で、スター選手の月給は「大きな封筒が立つ」ほどといわれ[17]、引退時の功労金も、長与千種は「家が建つ」と後に明かした[18]

また、紫雷イオによると、2017年の日本においてはファイトマネーに関して新人選手に限れば男子選手よりも高額なことが多く、収入も比較的安定しているという[19]。また、2020年代に入ると、大手企業傘下の団体では物販ロイヤリティーやメディア出演などのリング外の仕事を含めれば年俸が1000万円を超える選手も現れるようになり、岩谷麻優は2021年に最高月収が300万円であることを明らかにした[20][21]

また、全米最大手のWWEでは、90年代に同団体に長期参戦したブル中野が年俸が日本時代の約13倍に上がったと後に語り[22]、2020年代以降では年俸が数百万ドルに及ぶ女子選手も存在するといわれている[23]


  1. ^ a b 斎藤文彦、プチ鹿島『プロレス社会学のススメ』(2021年、発行:ホーム社、発売:集英社)130‐131頁
  2. ^ a b c d e 斎藤文彦、プチ鹿島『プロレス社会学のススメ』(2021年、発行:ホーム社、発売:集英社)132‐133頁
  3. ^ 双葉社スーパームック『俺たちのプロレスVOL.6』(2016年)21ページ
  4. ^ 『女子プロレス事件File2』P45
  5. ^ 双葉社スーパームック『俺たちのプロレスVOL.6』(2016年)44ページ
  6. ^ 女子プロレスの人気低迷 引き金となった東京ドーム大会”. エキサイトニュース. 2023年3月7日閲覧。
  7. ^ RIZIN榊原代表が女子プロレス界に「情熱持ってやってみろ!(たまアリ)埋めれんの」と苦言”. バトル・ニュース (2016年12月31日). 2016年12月31日閲覧。
  8. ^ レジェンド女子プロレス~ファイティングガールズ~”. フジテレビ (2017年2月3日). 2017年2月4日閲覧。
  9. ^ スターダムがブシロード傘下に。オーナーの狙い、新日本との関係は?(橋本宗洋)”. Number Web - ナンバー. 2022年11月29日閲覧。
  10. ^ スターダムが同団体最多の年間8万4060人動員!23年4月には横浜アリーナ初進出!/デイリースポーツ online”. デイリースポーツ online. 2023年3月7日閲覧。
  11. ^ 女子11選手が米国で「joshi」見せる 日刊スポーツ 2011年11月16日 [リンク切れ]
  12. ^ a b 斎藤文彦、プチ鹿島『プロレス社会学のススメ』(2021年、発行:ホーム社、発売:集英社)147‐152頁
  13. ^ もはやプロレスに男女の差はない!レッスルマニアで起きたビッグバン。(堀江ガンツ)”. Number Web - ナンバー. 2022年11月29日閲覧。
  14. ^ 異色過ぎる声優プロレスラー・清水愛、デビュー前から現在までを語る!【インタビュー前編】”. 2023年9月3日閲覧。
  15. ^ 「週刊文春」編集部. “フワちゃんが卍固め…業界賛否両論「たった5カ月でのプロレスデビュー」で見せた“本気の顔”《写真多数》”. 文春オンライン. 2023年4月21日閲覧。
  16. ^ プロレスラー井上貴子さん ヘアヌード写真集6冊のお金で乳がんの母親に家をプレゼント|役者・芸人 貧乏物語”. 日刊ゲンダイDIGITAL. 2023年5月14日閲覧。
  17. ^ 北斗晶 現役時代の給料事情告白 「300万やそこらじゃない」A3封筒がパンパンになったレスラーとは - スポニチ Sponichi Annex 芸能”. スポニチ Sponichi Annex. 2023年5月14日閲覧。
  18. ^ 長与千種 報酬も別格!引退時の功労金は「おうちが建つかな」 - スポニチ Sponichi Annex 芸能”. スポニチ Sponichi Annex. 2023年5月14日閲覧。
  19. ^ ベースボールマガジン社「週刊プロレス」No.1890 2017年2月22日号、38頁
  20. ^ 凄い活気!女子プロ「スターダム」大躍進のウラ側”. 東洋経済オンライン (2022年7月23日). 2022年11月29日閲覧。
  21. ^ 女子プロレスラーの月収は…「最高だったら300(万円)」 かまいたち驚く/デイリースポーツ online”. デイリースポーツ online (2023年8月9日). 2023年8月9日閲覧。
  22. ^ ブル中野「3分100万円」 米女子プロレスの驚きのギャラ明かす - スポニチ Sponichi Annex 芸能”. スポニチ Sponichi Annex. 2023年5月14日閲覧。
  23. ^ Raghuwanshi, Mohit (2023年1月3日). “WWE Superstar Salary 2023: How Much Do WWE Wrestlers Make?” (英語). www.itnwwe.com. 2023年3月28日閲覧。





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