ブランケット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/30 15:14 UTC 版)
遮蔽
高エネルギー粒子
プラズマから発生する高エネルギー粒子の放射からブランケットの背後にある超伝導電磁石や各種センサー類、支持構造体などを守らなければならない。荷電イオン粒子はブランケット層で防げるが、中性子の全てを遮蔽することは不可能である。出来るだけ多くの中性子放射をブランケット層で遮蔽することで、その背後の機器類の劣化を防止でき、長期的には大量の放射性廃棄物の発生レベルを低く抑えることが可能となる。
構造・形態
現在、ブランケットの構造や形態として考えられている1つの例として、ITER(国際熱核融合実験炉)用に開発中のものについて説明する。 核融合炉の内壁壁面にブランケット・モジュールをタイル状にきっちりと並べたモジュール構造をとる。ITERでは400個-700個程度のブランケット・モジュールが、下部のダイバータ部分を除く内壁一面を埋め尽くす。
サイズ:幅2m、高さ1m、厚さ約40~50cm 程度
3種類のモジュールがある。
- 主モジュール
- プラズマに曝される大部分の壁面に使用される。
- バッフル・モジュール
- ダイバータ近くの壁面を担当してガスの逆流を抑制する。
- リミッタ・モジュール
- プラズマ生成と消滅時に形状制御の役割を担う。
ブランケット・モジュールの基本構造
ブランケット・モジュールは内部に2つの空間を備えた支持構造体で、リチウムの交換や金属の劣化などに対応するために炉壁から取り外して交換が可能な形態となる。プラズマ側の空間にはベリリウムなどの中性子増倍材をペブルと呼ばれる微小球(直径1ミリメートル以下)の形で収め、プラズマから離れた側の空間には酸化リチウムなどのトリチウム増殖材を同じくペブルで収める。 いずれの空間にも、隙間にヘリウムなどの不活性ガスを流し、また多くの冷却パイプを通わせ中に減速材と冷却材を兼ねる高圧水を流す。ブランケットの構造体や冷却パイプなどの部材は中性子に対して放射化やスウェリングの影響を受けにくい材質を選ぶ必要がある。この構造体は強い磁場の中で強力な力を受けるので、力学的にも強固でなければならない。またこの構造体は高温の環境で機能しなければならないので、単に溶けないだけでなく大きな歪みや割れを生じてはならない。
ブランケット・モジュールのプラズマに直接接する面は第一壁と呼ばれ、最も激しい粒子線に曝されるため部材選択に関して重要な技術開発の対象である。
- 支持構造体(低放射化フェライト鋼など)
- 中性子増倍材(ベリリウムなど)
- トリチウム増殖材(酸化リチウムなど)
- 冷却(重水素回収)ガス(ヘリウムなど)
- 冷却パイプ(ステンレスなど)
- 減速材・冷却材(水)
- 配管接続部や壁面固定部
冷却材はブランケットを出た後で熱エネルギーが発電のための使われ、十分に冷めた後で再びブランケットへ送られ再び高温からブランケットを守る。冷却ガスは三重水素回収系を経て、おそらく十分に冷めた後で再びブランケットへ送られる。ただし実験炉であるITERでは発電は行なわれないため、熱エネルギーは大気中へ捨てられる。
ブランケットには上記のように複数の機能を併せ持つものもあれば、遮蔽ブランケット、増殖ブランケット、発電ブランケットと単機能のものも考えられている。上図はその開発過程のテスト用のブランケットの概念を示したものである。
交換作業
ブランケット・モジュールは内部のリチウムの交換や核融合炉の運転によって損傷を受けるため、数年単位での定期的な交換が設計段階から予定されている。このため下記の点についての新たな技術開発が行なわれている。
- 遠隔操作、またはロボットによる炉内部でのモジュールの交換作業
- 内部は足場も無く、狭い開口部を通っての放射性物質に囲まれた作業となる。このため炉内に入る交換装置の足場としての何本かのレールがモジュールの隙間に設けられる予定である
- 新旧モジュールのガスや冷却水の配管の溶接による切断・再接続
- 耐中性子性、耐水素脆化性の金属配管をシームを最小限にして溶接する
ブランケットと同じ種類の言葉
- ブランケットのページへのリンク