あめぞう 概要

あめぞう

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/04 04:33 UTC 版)

概要

1990年代の大型有力掲示板サイトは、多くのアクセスが集中し、多大な記事が投稿されるため、たいへん利用しづらいものであった。例えば、記事ツリーが縦方向に長くなってしまい、古い記事ほど下へ下へと押し出され、目当ての記事を探し出すのも一苦労だった。また個人運営のサイトは、有名になって利用者が殺到すると、たちまち反応が重くなってしまい、使い物にならなくなった。

そういった常識を覆したのが、スレッドフロート型掲示板を採用し、進化させたあめぞう型掲示板であった。これが当時としてはたいへん画期的な操作性、利便性を持っており、使いやすさから利用者間の交流をそれまでより容易にした。そして、サーバレンタル会社との提携による(無料サイトに依らない)ディスクスペース確保など、非商用の個人運営サイトでありながら、日本における大規模な掲示板サイトの先駆けともなり、1999年には日本一の利用者数を誇るまでに成長した。開設当時の情勢としては、パソコンはまだ高額であり、インターネットもまだ一般には広く利用されておらず、インターネット利用者はISDNなど細い回線で使用時間に応じた課金をされても接続する好事家層が多くを占め、議論の水準は比較的高かったと考えられる[3]。また、雑談のほか、株式・経済・社会情勢・コンピュータ関連など、様々な話題も活発に語られていた。

だが、1999年春頃から増大した利用者に対応するサーバ確保が困難になり度々移転を余儀なくされたり、荒らしが増え始め、加えて一部掲示板の書き込みによってあめぞうが脅迫を受けたとされることなど、運営に様々な問題が起こってきていた。この頃、あめぞうは掲示板上で「責任を持ってうちの、HP引き継いでくださるという、団体の方いらっしゃいませんカー」とサイトの引き継ぎ先の団体を求めたこともあった。これに対し、あめぞう掲示板利用者であり、2ちゃんねるを設立したばかりの西村博之(ひろゆき)が「おいらじゃだめでしょうか?」とそれに応じる発言をしていたが、あめぞうは「個人では自分と同じ結果(脅迫などの圧力を受け、運営ができなくなる状態)になってしまう」とそれを断った経緯がある[4]

追い打ちをかけるように、夏頃からはあめぞうウイルスといわれるスタイルシートを利用したスクリプトによる荒らしが来襲、これにより秋にはあめぞう掲示板は壊滅し、あめぞうリンク自体も2000年3月3日に閉鎖された[注 1]。本家の衰退後、あめぞう掲示板利用者により、避難所設立などが行われ活動は続いたが、安定した環境の確保に成功した2ちゃんねるに利用者が移っていったこともあり(当時は両サイトを兼用する利用者もいた)、徐々にあめぞう系の掲示板利用者数は減少していった。


注釈

  1. ^ ただし、サーバ設定の変更などによって、一時的ではあったが一部の板が使用可能になったことがあった。現在あめぞう掲示板の過去ログとして残されているもの多くは、その時にサルベージされたものである
  2. ^ リンク先の掲示板など、外部の掲示板で繰り広げられている事を話題にする。
  3. ^ 難民の要望に応え、一時期「あめぞうわーるど」というあやしいわーるど風の掲示板も設置した。
  4. ^ あめぞうリンクからの客があったため、当初から10,000ユーザーを抱えた[12]
  5. ^ 一般に原因とされるのは京都市バスに関するスレッドだが、他にも暴力団の資金源に関するスレッドなどもあり、あめぞうの個人情報をちらつかせた脅迫じみた書き込みもあった。
  6. ^ ひろゆきは、予想より早く実現したものの、2ちゃんねるが社会的に大きな存在になることは当初より確信しており[16]、暴露の前日27日には、「うーん、これで食っていこうかなとちょっぴり思っている」と発言している[17]
  7. ^ あめぞう掲示板の文字列処理のバグを悪用し、ブラウザが処理できないほど巨大な値を投稿して、ブラウザをクラッシュさせるもの。
  8. ^ これはあくまで、あめぞう自身によるサイトが復活したら解散するという前提の元に集められたものであった。

出典

  1. ^ https://github.com/hackpaint/amezo
  2. ^ ばるぼら (2005) p.256
  3. ^ 「巻頭インタビューひろゆき(西村博之)」 『インターネット「タブー」地帯』 <別冊宝島1661> 宝島社 2009年11月16日 pp.2-11
  4. ^ ばるぼら (2005) p.260
  5. ^ a b 武田徹「オンラインジャーナリズム最前線」、『日経トレンディ臨時増刊号』1999年4月22日発売号。(インターネットアーカイブのキャッシュ)
  6. ^ 「あめぞうインタビュー 於:羽田・新東京国際空港 日時:3月21日16時40分-18時10分 参加:●あめぞう、○武田徹 △天野(日経トレンディ編集部)」(インターネットアーカイブのキャッシュ)
  7. ^ ウォッチャーが選ぶ今日のサイト1998年10月28日- internet watch
  8. ^ ばるぼら (2005) p.258
  9. ^ ばるぼら (2005) p.204
  10. ^ 哭きの竜 「真ザ・バトルウオッチャー・ロワイアル R2:電網英雄伝説~黎明篇~」
  11. ^ 『ダカーポ』 1999年4月21号 マガジンハウス
  12. ^ 井上 (2003) p.90
  13. ^ あめぞう閉鎖の理由
  14. ^ あめぞう「プロバイダじゃないです くやしーいです」「こんな感じで、閉鎖するHPが増えるんだったら、インターネットの先も暗いです。」[13]
  15. ^ 2ch打倒の切り札
  16. ^ 井上 (2003) p.126
  17. ^ ばるぼら (2005) p.224
  18. ^ ばるぼら [2005] p.225
  19. ^ ばるぼら(2005) p.228
  20. ^ あめぞうREMIX!
  21. ^ 「技術座談会」 『2ちゃんねる公式ガイド2002』
  22. ^ ただし、ひろゆきと連絡を取り、7月半ばにはあめぞうリンクもHTML出力となっている。 ばるぼら (2005) p.262
  23. ^ ばるぼら (2005) pp.258-259





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「あめぞう」の関連用語

あめぞうのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



あめぞうのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのあめぞう (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS