複比定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 23:36 UTC 版)
ここでは複比の存在性、一意性、整合三つ組および不変性について考察する。p, q, r ∈ A に対し t = (r − p)−1, v = (t + (q − r)−1)−1 と置き、これら逆元 t, v が存在するとき、「p, q, r は十分に分離される」と言う。いま ( 1 0 − r 1 ) ( 0 1 1 0 ) ( 1 0 t 1 ) ( v 0 0 1 ) {\displaystyle {\begin{pmatrix}1&0\\-r&1\end{pmatrix}}{\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}}{\begin{pmatrix}1&0\\t&1\end{pmatrix}}{\begin{pmatrix}v&0\\0&1\end{pmatrix}}} に着目すると、最初の二つの因子は r を一つ決めるごとにそれを U(1, 0) = ∞ へ写す(これは残りの因子では動かない)。また第三因子は t の取り方から、p の最初の二つの因子による像を U(0, 1)(つまり自然な埋め込みのもとでの原点 0)へ写す(これは第四因子で動かない)。そして第四因子は q の最初の三つの因子による像の v による回転の形で U(q, 1) を U(1, 1) へ写す。以上から、三つ組 (p,q,r) はこの変換で三つ組 (0,1,∞) にすることができる。三つ組を (0,1,∞) へ写す生成元の不動点を軸に考えれば、このような射影変換は明らかに一意的である。 s および t が二つの十分に分離された三つ組とすれば、対応する射影変換 g およびh がそれぞれ s および t を (0,1,∞) へ写す写像として定まるから、射影変換 h−1 ∘ g は s を t に写す。 p,q,r によって決まる上記の射影変換 f による x の像を f(x) := (x,p,q,r) で表すとき、この函数 f(x) を p, q, r ∈ A によって定まる複比 (cross-ratio) と言う。この函数の一意性により、三つ組 (p, q, r) を一つの射影変換 g ∈ G(A) によって別の三つ組 (g(p), g(q), g(r)) に取り換えるとき、新しい三つ組に関する複比函数 h は f ∘ g に一致しなければならない。つまり h ∘ g−1 = f, 故に複比に関して (g(x), g(p), g(q), g(r) ) = (x, p, q, r) なる不変性が成立することがわかる。
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