薔薇刑とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 薔薇刑の意味・解説 

薔薇刑

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/02 08:04 UTC 版)

薔薇刑』(ばらけい)とは、写真家細江英公撮影による、三島由紀夫被写体とした裸体写真集。「序曲」「市民的日常生活」「哂う時計あるいは怠惰な証人」「さまざまな瀆聖」「薔薇刑」の5章から成り、96枚の写真が収められている[1][2][注釈 1]合成技術と様々な道具立てによる幻想的・耽美的な側面と、オブジェとしての肉体に焦点を当てるという側面とを兼ね備えた作品で、頁をめくるうちに、「ある漠然としたストーリー」が見る者に想起されるように構成されている[3][注釈 2]。1963年(昭和38年)3月25日に集英社より刊行され、「日本写真批評家協会」作家賞を受賞。超現実的マゾヒスティックな構図の数々の写真が載ったこの奇書は、国内だけでなく海外でも大きな話題を呼んだ[5]


注釈

  1. ^ 1971年(昭和46年)刊行の新輯版では、三島の意向により、「海の目」「目の罪」「罪の夢」「夢の死」「死」の5章の名称に改められた[2]
  2. ^ 宣伝コピーは、「精神的に臆病な人には、この写真集はおすすめできません。真実を正視できるだけの強い意志と健康な肉体をお持ちの方だけが、この奇怪な〈変貌(メタモルフォーゼ)の祭典〉の見学者たることを許されるのです」となっている[4]
  3. ^ 三島や細江の記憶では、このホース巻は初訪問日だが、川島勝の記憶では数日後の撮影だとしている[7][10]。この時、庭で草むしりをしていた三島の父・が撮影の様子を見て、「みんなでうちの息子をどうしてくれる!」「小学校ごっこでもやるのか、物好きもいいかげにしろ」と怒り、「すんだら自分達でかたづけることだ、女中なんか使うな」と言ったという[10][11]

出典

  1. ^ a b 「細江英公序説」(細江英公写真集『薔薇刑』集英社、1963年3月)。32巻 2003, pp. 417–423
  2. ^ a b c 鈴木晴夫「薔薇刑」(旧事典 1976, pp. 322–323)
  3. ^ a b c d e f g 倉林靖「『薔薇刑』」(事典 2000, pp. 566–567)
  4. ^ a b c d e 「日本一の被写体――三島由紀夫氏」(細江英公・三島由紀夫へのインタビュー記事)(週刊現代 1963年3月21日号)。32巻 2003, p. 707
  5. ^ a b 「写真集『薔薇刑』のモデルをつとめて――ぷらす・まいなす’63」(読売新聞夕刊 1963年12月28日号)。32巻 2003, pp. 630–631
  6. ^ a b c d e f 「『薔薇刑』体験記」(芸術生活 1963年7月号)。『私の遍歴時代』(講談社、1964年4月)、32巻 2003, pp. 475–478
  7. ^ a b 「本の美学」(川島 1996, pp. 171–190)
  8. ^ 「年譜 昭和36年9月13日」(42巻 2005, p. 249)
  9. ^ 細江英公との対談「『薔薇刑』について」(カメラ芸術 1962年3月号)。39巻 2004, pp. 368–378所収
  10. ^ a b 「第五章 『鏡子の家』の時代」(年表 1990, pp. 117–160)
  11. ^ 「第四章」(梓 1996, pp. 103–164)
  12. ^ a b 細江英公「写真集『薔薇刑』にまつわる二、三のエピソード」(38巻 2004月報)
  13. ^ 「第四章 著名人の時代」(佐藤 2006, pp. 110–143)
  14. ^ 「年譜 昭和37年1月5日」(42巻 2005, p. 251)
  15. ^ 田中美代子「解題――細江英公序説」(32巻 2003, pp. 706–708)
  16. ^ 山中剛史「著書目録――目次」(42巻 2005, pp. 540–561)
  17. ^ パリと東京で細江英公×三島由紀夫の「薔薇刑」展が開催(IMA Online、2015年2月27日)
  18. ^ a b 安部公房「三島氏、芸術に変身す――細江英公写真集『薔薇刑』に寄せて」(「この奇妙な写真集に寄せられた奇妙な賛辞」―『薔薇刑』内容見本)(集英社、1963年2月28日)。安部 1999
  19. ^ 「ぼくはオブジェになりたい」(週刊公論 1959年12月1日号)。31巻 2003
  20. ^ 「私の遍歴時代」(東京新聞夕刊 1963年1月10日 - 5月23日号)。32巻 2003, pp. 271–323
  21. ^ a b 山中剛史「空白の時代に挑む――ぼくはオブジェになりたい」(太陽 2010, pp. 86–89)





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「薔薇刑」の関連用語

薔薇刑のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



薔薇刑のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの薔薇刑 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS