名岐鉄道デボ800形電車
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名岐鉄道デボ800形電車(めいぎてつどうデボ800がたでんしゃ)[* 1]は、現・名古屋鉄道(名鉄)の前身事業者である名岐鉄道が、主に優等列車運用に供する目的で1935年(昭和10年)より導入した電車(制御電動車)である。
注釈
- ^ 本形式の初号形式については、多くの書籍・雑誌にて「デボ800形」とされている[2][6][7][8]。しかし、雑誌『鉄道ピクトリアル』2007年8月号に掲載された名鉄資料館による文責記事「知られざる名鉄電車史2 2つの流線型車両 3400形と850形」は、名岐鉄道作成の車両形式図や現・名鉄発足後の内部資料において、本形式が「デボ」の記号を用いず単に「800形」として扱われていたことを指摘している[9]。また、名岐鉄道が本形式の製造に先立って管轄省庁へ提出した設計認可書類においても、形式称号は「800形」とされ「デボ」の記号は用いられていない[4]。
- ^ 広義の800系として、850系「なまず」(モ850形・ク2350形)を本系列に含める例も存在する[6][7]。
- ^ 本系列の常用制動装置については、1941年(昭和16年)10月に名鉄運輸部によって作成された資料を初出として[32]、多くの文献において「落成当初はSME / SCE非常直通ブレーキであった」とされている[3][15][14][33]。しかし、元名鉄社員で名鉄の車両史研究の第一人者である白井昭は、配管設計図など内部資料を根拠にそれらを明確に否定し、「(誤記の原因は)誤植または名鉄の資料作成担当者の知識不足」と述べている[32]。さらに、後述する常用制動装置の改造に際して、管轄省庁へ提出された認可申請書類においても本系列の常用制動装置が非常直通ブレーキではなく自動空気ブレーキであったことが明記されている[34]。
- ^ 850系4両は当初、後述する制御車ク2300形(初代)の一部として導入が計画された[10]。その後、同時期に導入が計画された愛知電気鉄道由来の「東部線」向けの新型車両(3400系)が当時の車両設計の流行を取り入れた流線形車両として設計されたことを受けて急遽設計変更が行われ、落成後は別形式に区分されたものである[10][30]。既に予算が制御車6両分で決済されていたことから電装品を従来車より捻出する必要が生じ、そのためデボ800形の一部について電装解除・制御車化を施工したとされる[10]。詳細は名鉄850系電車#導入経緯を参照。
- ^ ク2250形の再電動車化・モ800形編入は1940年(昭和15年)中に施工されたとする資料も存在するが[3][15]、前述した1941年(昭和16年)4月届出・同年7月認可の制動装置改造に関する認可申請書類においては、改造対象を「モ800形10両」ではなく「モ800形8両」「ク2250形2両」としている[34]。
- ^ 経緯の詳細は名鉄850系電車#太平洋戦争前後を参照。
- ^ 同日付で枇杷島橋 - 東枇杷島信号所 - 押切町間の従来線、および名古屋市電を経由した柳橋への乗り入れ運転は廃止された[43]。
- ^ 当時の本系列にて側窓をアルミサッシ化した車両はモ831が唯一であった[37]。なお後年、後述するモ811(モ802の両運転台化改造車)も側窓のアルミサッシ化改造を施工されている[58]。
- ^ 2両の主要機器から状態の良好なものを選別し、7300系モ7307の新製に際して転用した[62]。また、台車についてはモ806のD16台車を3800系ク2815(2代)へ転用し、ク2815(2代)から捻出したD18台車がモ7307へ装着されている[63]。なお、モ7307の名義上の種車はモ806として扱われている[62]。
- ^ ただし、車体の車両番号表記は名鉄特有の切り出し文字を用いたローマン書体ではなく、ペンキ表記による一般的な書体に改められた[83]。
出典
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- ^ 近代化産業遺産 認定遺産リスト 平成20年度 (PDF) p.8 - 経済産業省 2015年1月13日閲覧
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