ワイバーン
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/24 01:36 UTC 版)
ワイバーン(wyvern または wivern)は、イギリスの紋章、印章、旗章などに見られる竜の図像の一つ。およびそこから派生した架空の怪物である。
注釈
- ^ Bellew (1966) はワイバーンの脚がこうした猛禽類の形状になったのは後のことであるとしている。
- ^ 紋章記述において"proper"という形容詞は「自然の色で塗られた」という意味を持つ。この「自然の色」は必ずしも言葉どおりの意味ではなく対象ごとに慣例的に定められた色のことを指すため、ワイバーンのような実在しない怪物にも「自然の色」が存在する。"wyvern proper"は緑と赤の2色で塗り分けられたワイバーンのことを指している[1]。ケンブリッジの Leys School の紋章のクレストはこの "wyvern proper" であり、腹部と飛膜は赤で、それ以外の部分は緑で塗られている。
- ^ Clark (1788) による紋章学用語の翻訳表では、wyvern のラテン語訳は viverra であるとされている。もっとも同書内のワイバーンの項目ではフェレットとの関わりは一切触れられておらず、viverra という訳に対して彼にどの程度の確信があったのかは不明である。
- ^ Boutell (1867)は「初期の紋章記述において(ワイバーンとドラゴンの)区別はいつも認められた訳ではない」としている。
- ^ 中世イングランドの紋章官。5代目のGarter Principal King of Arms
- ^ ウェールズの竜文化は、仮にその起源が創作であったとしても、少なくとも長い間信じられ受け継がれていったのは事実である。二足の竜が描かれたユーサー・ペンドラゴンの紋章がハーレー写本 2169に記されているが、これはテューダー期の紋章画家が創作した架空の紋章である[6]。また、7世紀の人物であるカドワラダーの竜の旗の絵が残されている[7]が前述のユーサーの紋章と同様"fabulous"と記されておりこちらも後世の創作であろう。こうして竜と七王国時代のウェールズの結びつきは強化されていった。
- ^ ヨーク大聖堂にはモーリー家のステンドグラスがあり、その中にはエドムンド・モーリーの紋章も描かれている[8]。ただし紋章鑑に記録された紋章記述が彼の紋章には3体のワイバーが描かれていたとしているのに対し、このステンドグラス内の紋章に描かれているワイバーは1体である。
- ^ 原文は"Like the gryphon, the dragon has remained largely unaltered by heraldry, except perhaps for the extra pair of legs which it acquired in the fifteenth century, for which the heralds seem largely responsible. Earlier dragons have two legs, and are known as wyverns, and the four-legged simply as dragons."[10]。
- ^ フランシス・ドレークは世界一周の功により叙勲されたが、その際に自分はアッシュのドレーク家の血族であり、その紋章を使用する資格があると虚偽の主張を行った。この主張はアッシュのドレーク家の長であるバーナード・ドレーク卿の怒りを買い、"Worthies of Devon"によると王宮内での暴力事件にまで発展したとされる。エリザベス1世はこの問題を解決するためにアッシュのドレーク家の紋章とは別の紋章をフランシス・ドレークに与えた。本文中の「ドレークの紋章」とはフランシス・ドレークとバーナード・ドレークが使用権を争ったアッシュのドレーク家の紋章のことを示す。
- ^ 原文は "The wyver, who becomes wyvern in the 16th century, and takes a new form under the care of inventive heralds, was in the middle ages a lizard-like dragon, generally with small wings."
- ^ en:Sheriffs of the City of London. 長官とも言える役職で同時に二名が任命される。現代でもこの制度は続いている。
- ^ この文献ではリチャード・ファーリントンが1609年に就いたのはシェリフではなく、オルダーマン(市参事会員)とされている。
- ^ マウル家の紋章は他にも様々な紋章記述で残されている。"dragon with two heads" とする文献や、"a wyvern, emerald, spouting fire before and behind" とする文献 (Kimber 1767) も存在する。後者を再現した図像は、口と尾両方の先端から炎を吐くワイバーンとして描かれている。
- ^ ウエストドーセットの大紋章[16]。
- ^ 原文ではワイバー。ここではワイバーンの意味[2]。
- ^ "Wyvern. An imaginary beast, invented by heralds, having the head and forepart of a dragon, with two legs only, the pointed tail of a scorpion, and winged."[19]
- ^ ウイキョウと動物/怪物の視力の関係については古くから記録が残っている。プリニウスの博物誌によれば冬眠によって視力の衰えたヘビはウイキョウの汁を目に塗ることによってその鋭い視力を回復させるとある[20][21]。ただし博物誌にはヘビは視力が悪いとの記述もあり揺らぎがある[20]。
出典
- ^ Boutell 1931.
- ^ a b c Simpson 1989.
- ^ Porny 1765.
- ^ a b Birch 1887.
- ^ WSoA n.d.
- ^ Foster 1904.
- ^ Scott-Ellis 1904a.
- ^ Roel Renmans (2013年8月5日). “ca. 1306-1317 + 1903 - 'Sir Edmund (+1314) and Sir John de Mauley (+1331)', York Minster, Yorkshire, England”. 2022年11月3日閲覧。
- ^ Barron 1911.
- ^ Bedingfeld 1993.
- ^ Howard 1869.
- ^ TIOH & n.d. a.
- ^ a b TIOH & n.d. b.
- ^ Deuchar 1817.
- ^ The Heraldry Society 2008.
- ^ “West Dorset”. 2022年11月3日閲覧。
- ^ Kimber 1768.
- ^ Ménestrier 1696.
- ^ Fairholt 1854.
- ^ a b プリニウス 1986.
- ^ プリニウス 2009.
- ^ Henderson 1922.
- 1 ワイバーンとは
- 2 ワイバーンの概要
- 3 成立
- 4 変形
- 5 怪物としてのワイバーン
- 6 関連
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