HUNGER/ハンガー 当時の状況

HUNGER/ハンガー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/19 14:24 UTC 版)

当時の状況

1960年代末に始まった北アイルランド紛争は、70年代を通じて激化していた。北アイルランドは1920年に成立して以来、英国内で自治を行なってきたが、1972年1月30日の血の日曜日事件後に自治は停止され、英国政府の直轄統治とされていた。当時のテッド・ヒース政権 (保守党) のもと紛争状態の解決が模索され、英国政府とIRA暫定派側との交渉の結果、北アイルランド紛争における武装組織の活動に関して逮捕・起訴され有罪となった者には、「特別カテゴリー」 (en:Special Category Status) が認められていた。これは、ロングケッシュ刑務所などに入れられていたリパブリカンの囚人を事実上の戦争捕虜として扱う措置で、囚人たちは刑務所の支給する囚人服を着用する必要はなく、刑務所の労務も行なう必要はなく、同じ組織に属する者たちが一緒に収監されて交流もでき、刑務所外からの訪問や食べ物の小包の差し入れなども、通常の刑法犯とは異なる扱いを受けていた。

1974年、英国の総選挙で労働党のハロルド・ウィルソンが政権を獲得した (2期目) 後、形状から「Hブロック」と呼ばれる新しい棟がメイズ刑務所内に建設されるのに伴い、この「特別カテゴリー」は段階的に廃止されることとなった。そして1976年、ウィルソンの辞任で新たに労働党トップとなったジェームズ・キャラハンの政権が発足してから、実際に「特別カテゴリー」の適用を受けず、囚人服を着用させられる囚人が出た。彼、キーラン・ニュージェント (en:Kieran Nugent) は「囚人服を着せられるなら、裸に毛布をかぶっていた方がましだ」とこれを拒否した。これが既に収監されていた囚人たちの間にも広まったのが、「ブランケット・プロテスト」 (en:Blanket protest) である。

その後も英国政府の態度は軟化することはなく、またメイズ刑務所での看守による囚人への暴行がやむこともなく、囚人たちは次なる抵抗として「ダーティ・プロテスト」 (en:Dirty protest) に打って出た。1978年3月から始まったこの獄中抗議行動は、シャワーやトイレに行くと看守に暴行されることから始まった。囚人たちは房内にシャワーを設置するよう要求したがこれが認められず、抗議行動は次第にエスカレートしていった。房内の壁は囚人たちの排泄物が塗りたくられ、衛生状態は最悪だった。

1979年5月、保守党のマーガレット・サッチャーが政権を取った。1980年1月、囚人たちは「5つの要求」[2]として知られる声明を出した。内容は、「囚人服を着ない権利」、「刑務所作業を行なわない権利」、「他の囚人たちと自由に交流し、教育・娯楽のための活動を組織する権利」、「1週間に1度の面会・手紙・小包の権利」、「抗議行動を通じて失われた刑期短縮の完全回復」である。同年10月、この5点を要求して、ブレンダン・ヒューズ (en:Brendan Hughes) ら7人が一斉にハンスト入りした。これは「第一次ハンスト」(en:1981 Irish hunger strike#First hunger strike)、または「1980年のハンスト」と呼ばれる。同年12月、英国政府からの提案をまとめた文書が作成されたのを受けてこのハンストは打ち切られた。そのときには、「5つの要求」が受け入れられたかに見えたからである。

しかし実際にはそうではなかった。1981年3月、同じ要求を掲げた新たなハンストが、ボビー・サンズ(英語: Bobby Sandsをリーダーとして決行された。

本作は、この時期に実際に起きたことを描いた映画である。


  1. ^ Hunger (2008)”. Box Office Mojo (2009年6月7日). 2014年3月6日閲覧。
  2. ^ What happened in the hunger strike?”. BBC. 2015年7月6日閲覧。
  3. ^ Hunger: A mood piece with impressive historical balance”. en:The Guardian. 2015年7月6日閲覧。
  4. ^ スティーヴ・マックィーン監督、話題集中のデビュー作『ハンガー』上映【第52回ロンドン映画祭】|シネマトゥデイ”. シネマトゥデイ. 2022年10月5日閲覧。





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