自動車検査証 保安基準適合標章

自動車検査証

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 03:10 UTC 版)

保安基準適合標章

保安基準適合標章(上段 : 表
下段 : 裏)

指定自動車整備事業者(「指定工場」「民間車検場」、以下「指定工場」)が検査対象自動車の自動車検査(継続検査又は新規検査のうち乗用車・軽自動車・二輪車の抹消登録新規車に対する検査)を行った結果、国の定める保安基準に適合する場合に交付する書面である。

全ての検査対象自動車は、原則として国の指定する自動車検査場に実車を持ち込み、保安基準に適合していることの検査(以下「車検」)を受けた後に、国(軽自動車においては軽自動車検査協会)に対して所定の申請を行い、自動車検査証及び検査標章(以下「車検証等」)の交付を受けた後でなければ公道を走行することができないが、指定工場で検査を受けた自動車は、国の検査場での実車検査を省略され、所定の申請を行い、書類審査のみを受ければ車検証等の交付を受けることができる。この国が行うべき検査を指定工場が行い、適合を認めた場合に自動車検査員が交付するのが「保安基準適合証」である。

しかし、申請の際に、既に当該自動車が自動車検査証の交付を受けている場合(有効期限切れを含む)は、自動車検査証の原本も同時に提出しなければならないことから検査完了後は指定工場が預かり、国に対する申請を行うことが一般的で、指定工場で検査を受けても、自動車検査証が当該車両に備付されていない状態となり、自動車を運行することができなくなってしまうことから、指定工場の自動車検査員は車検証等の代わりとして「保安基準適合標章」(以下「標章」)を発行することができる(通称「ホテキ」)。

なお、指定工場を経由した国への検査申請[注 3]が一般的だが、保安基準適合"証"そのものを指定工場より受け取り、使用者又はその委任者が申請することも可能である。標章では申請はできない。

法的効力

有効な標章を表示している車両
法の規定により自動車検査証の備付及び検査標章の表示義務が免除されるので、有効期間内は車検証等がなくとも全国どこへでもその目的を問わず運行できる。
一時抹消中(ナンバープレートのない車両)の場合
標章は交付されないが、適合証は交付できるので、検査を指定工場で受ければ申請の際に実車の検査なしでナンバープレートを取得できる。ただし、封印が必要な場合は検査はないが実車の持込は必要である。仮に指定工場や運輸局へ回送するのであれば、臨時運行番号標を取得すればよいが、この場合の運行目的はあくまでも当該自動車の整備点検に必要な最小限の範囲内(レジャーでの運行はもちろん許されず、日常生活に必要な通勤・買い物・業務使用でも運行は許されない)となるので、車検証等が交付されるまでは自由な運行ができない。
自動車検査証の有効期限がすでに切れている場合
抹消登録がまだ(ナンバープレートを返していない)の状態であれば、標章は交付可能であるから、車載車でレッカーしてもらうか、臨時運行番号標で指定工場まで回送し、保安基準を満たした後に標章を交付されれば、上段の扱いとなることから15日間は全国目的を問わず運行できるようになる。(なお、臨時運行番号標での運行の際には、自賠責保険への加入は必要であるから、あらかじめ許可期間をカバーするように加入する必要がある)ただし、期限切れから相当年経過し、その間に車検証の記載事項(主に所有者・使用者の住所氏名)が変更されていると、申請の際にそれらも変更を行なわなければならず、更に管轄変更等ナンバープレートの返納が必要となる場合は、指定工場はナンバープレートも預かることとなるので、一時抹消中と同様に扱いになるが、使用者自身で申請する場合は、とりあえず旧記載のまま標章の交付を受け、15日以内に自分で継続検査及び記載変更の申請をすれば乗り続けることは可能である。
実車検査の免除
継続検査申請又は新規検査のうち抹消登録新規車に対する検査申請の際に保安基準適合証を提出することにより、当該自動車の検査については書類審査のみとなる。

取扱

  • 標章により自動車を運行する際には、前面の見やすい場所に標章の面を表示しておく必要がある。従来は前面ガラス助手席側端下部に貼り付け表示していたが、様式変更後は、原則として正規の検査標章の貼り付け位置である前面ガラス上部中央に貼り付けることになっている。更に、裏面は使用者氏名・住所や車台番号など個人・個体情報が記載されているので、様式変更により覆い隠せるようになった。
  • 標章により自動車を運行する際に備付を免除される書類は、前述の通り自動車検査証と検査標章のみであるので、ナンバープレートの装着及びその他の書類(2年点検記録簿・自賠責証明書)は別途備付が必要である。
  • 審査完了後の新たな自動車検査証と検査標章を当該車両へ備付・表示した時点で標章は(有効期限に関わらず)無効となるので、速やかに取り外し、指定工場へ返却、あるいは使用者の責任において破棄すれば良い。前述の通り、個人情報を含む書類なので、シュレッダー等により裁断処分することが望ましい。
  • 二輪車の場合の表示方法については明確な規定がなく、正規の検査標章の表示位置を類推適用し、ナンバープレート周辺に表示するのが適当と考えられてはいるが、その構造上紛失・汚損などの可能性が高くなるため、実際は運行中に車両に備付又は運転者が携帯していればよいと考えられている。

自動車検査証との関係

標章及び適合証共に有効期限は指定工場での検査日より15日である。標章により運行している車両は、期間満了後も有効な自動車検査証等の交付を受けていなければ当然に運行ができなくなり、有効期限を満了した適合証で申請をしても実車検査の免除は受けられない。何らかの理由により有効期限を経過した場合に再交付などの制度はなく、再度検査を受ける必要がある。

また、指定工場での検査終了=車検完了ではない。最終的に書類審査のうえ新たな自動車検査証等が交付された時点で車検完了であることから、書類上の車検完了日は国に対して検査を申請した日となる(指定工場での検査日ではない)ことから、元の自動車検査証の満了日から1か月前までの間に申請された場合は2年後の同月同日、それ以外の日に申請された場合は申請日から起算して2年後が新たな車検証等の満了日となる。なので、指定工場の協力が不可欠ではあるが仮に8月1日車検満了の指定工場による検査は日程的には車検満了日の1か月15日前(6月17日)から受検できる(ただし、申請は車検申請期間と適合証の有効期限が重なる7月1日にしかできない)。また、車検満了日である8月1日に指定工場で検査を受検すると、翌日からは保安基準適合証の効力により15日間は運行を許されることから、適合証の有効期限である8月15日に申請をすれば、2年後の8月15日が新たな車検満了日となるため、空白期間を作らずに次回の車検満了日を15日間延長することも可能であるが、自賠責を通常より1か月余分に加入する必要がある(自賠責は原則として1か月単位でしか加入できない)。

何らかの理由により、新たな自動車検査証等の交付を受けられない場合(手続の失念や書類の形式的審査否決)は、元の自動車検査証の有効期限又は標章の有効期限のどちらか長い方の期限までは運行できるが、保安基準に適合していない場合や後述する納税義務の不履行と審査された場合は、残存する有効期限に関わらず、自動車検査証は没収され即時に効力を失うが、ナンバープレートは有効で、限定自動車検査証(申請日より15日間又は元の自動車検査証の有効期限のどちらか短い方の期間、当該車両の整備のみを目的に運行を許される)が交付されるので、すみやかに整備をして再受検しなければならない。もし、新たな自動車検査証の交付が受けられなかった場合はすみやかに当該事由を解消し、再申請しなければ上記期限以降は運行ができなくなる。なお、近年においては自動車税や放置駐車違反金の未納付があると国は否決することができるので十分注意が必要である。

様式

適合証はA5サイズの用紙に3枚複写式となっており、1枚目が指定工場控、2枚目が提出用、3枚目が標章となっており、使用者(車両)に対しては3枚目の標章が交付される。標章は、使用者が求めれば原則として交付しなければならないが、預かり車検の場合などで、車検証等の交付まで当該自動車の運行の必要がない場合は交付しなくとも良い。構造変更を伴う場合や未登録車の新規登録については本制度は適用されず、適合証・標章共に交付することはできない。なお、偽造抑制対策として表面(標章側)をコピーすると「COPY」の文字が浮かび上がり、表面・裏面共に印刷業社名の周辺にマイクロ文字で「ホアンキジュンテキゴウショウ ゲンテイホアンキジュンテキゴウショウ ホアンキジュンテキゴウヒョウショウ」と印刷されている。

自賠責保険との関係

適合証及び標章に自賠責保険の保険期間が記載されるが、この記載は自賠責証明書の代用とはならない。別途、運行日をカバーしている自賠責証明書の備付が必要である。通常、元の車検満了日までは元の自賠責証明書、満了日以降から新しい自賠責証明書の適用となることから、車検が終了したからといって元の自賠責証明書を誤って早く処分しないように注意が必要である。

限定保安基準適合証

既に国に対して申請をした結果、当該車両が保安基準に適合しないが直ちに運行を中止させる必要がない程度のものである場合は、国は限定自動車検査証を交付し、整備等の目的に限り一定期間内の臨時運行を許される。指定工場がこの限定自動車検査証の交付を受けた車両の整備が必要な部分を保安基準を満たすように整備し、再検査を実施した時に交付する書類。使用する書類は同一の物であるが、限定である旨が表示される。(限定)適合証は発行できるが、標章は発行できない。既に保安基準適合証の交付を受けた車両について発生することはないが、主にユーザー車検を受検したが検査により指摘された整備が必要な部分の整備について自身では実施できない場合に指定工場に依頼して整備点検を実施してもらい、交付されるものである。

問題点

15日の限定期間とはいえ、当該自動車を全国自由に運行させることができ、かつ、国の実車検査を省略できる力を持っていることから、違法改造車の車検に用いられる事(ペーパー車検)も少なくなく、対策として地方運輸局は指定工場に対して抜き打ち検査を行っている。不正車検が明らかになった場合は指定整備事業者の認定を取り消される等、事業の継続が不可能となる事もある。

記載要領など

一般私人が適合証を記載することはないが、偽造・変造・不備などを見破るためには下記の点を確認すると良い。

  • 従来の様式(複写式タイプ)
    • 適合証の自動車検査員の氏名は必ず自署かつ国に届け出ている印章を捺印する。(氏名のスタンプ押しやコンピュータ印字は認められていない)
    • 適合証の指定整備事業者の欄に代表者の捺印がある。
    • 標章の有効期限は、国の指定する専用の朱色のスタンプで表示される。
    • その他の事項についてはスタンプ押しやコンピュータ印字でも構わない。
    • 裏面は複写式となっており、使用者に対して交付されるのは基本的に複写部となる。
  • 電子申請様式
    • 2019年3月より、適合証の電子申請(電子化)が開始され、この電子申請により交付された適合証は、上記によらずすべてコンピュータ印字となっている。また、検査員や事業者の捺印も不要である。
    • 電子申請により交付された適合証は、右上に「電子申請用」という表示がされ、かつ、表1枚の様式で裏は白紙となっている。元々は、A4サイズであるが、上部が標章、下部が事業者控えとなり、下部は切り取られて事業者で保管となるため、使用者に交付される標章は上部のみのA5サイズとなっている。

根拠法令

道路運送車両法

  • 第58条(自動車の検査及び自動車検査証) - 自動車(国土交通省令で定める軽自動車(以下「検査対象外軽自動車」という。)及び小型特殊自動車を除く。以下この章において同じ。)は、この章に定めるところにより、国土交通大臣の行う検査を受け、有効な自動車検査証の交付を受けているものでなければ、これを運行の用に供してはならない
  • 第62条(継続検査) - 登録自動車又は車両番号の指定を受けた検査対象軽自動車若しくは二輪の小型自動車の使用者は、自動車検査証の有効期間の満了後も当該自動車を使用しようとするときは、当該自動車を提示して、国土交通大臣の行なう継続検査を受けなければならない。この場合において、当該自動車の使用者は、当該自動車検査証を国土交通大臣に提出しなければならない。
  • 第66条(自動車検査証の備付け等) - 自動車は、自動車検査証を備え付け、かつ、国土交通省令で定めるところにより検査標章を表示しなければ、運行の用に供してはならない
  • 第71条の2(限定自動車検査証等) - 国土交通大臣は、新規検査若しくは予備検査(第16条第1項の申請に基づく一時抹消登録を受けた自動車又は第69条第4項の規定による自動車検査証返納証明書の交付を受けた検査対象軽自動車若しくは二輪の小型自動車であつて、当該自動車の長さ、幅又は高さその他の国土交通省令で定める事項(以下「構造等に関する事項」という。)がそれぞれ当該自動車に係る自動車登録ファイルに記録され、又は自動車検査証返納証明書に記載された構造等に関する事項と同一であるものに係るものに限る)又は継続検査の結果、当該自動車が保安基準に適合しないと認める場合には、当該自動車の使用を停止する必要があると認めるときを除き、限定自動車検査証を当該自動車の使用者(予備検査にあつては、所有者)に交付するものとする。
  • 第73条(車両番号標の表示の義務等) - 検査対象軽自動車及び二輪の小型自動車は、国土交通省令で定める位置に第60条第1項後段の規定により指定を受けた車両番号を記載した車両番号標を表示し、かつ、その車両番号を見やすいように表示しなければ、これを運行の用に供してはならない
  • 第94条の5(保安基準適合証等) - 指定自動車整備事業者は、自動車(検査対象外軽自動車及び小型特殊自動車を除く。)を国土交通省令で定める技術上の基準により点検し、当該自動車の保安基準に適合しなくなるおそれがある部分及び適合しない部分について必要な整備をした場合において、当該自動車が保安基準に適合する旨を自動車検査員が証明したときは、請求により、保安基準適合証及び保安基準適合標章(第16条第1項の申請に基づく一時抹消登録を受けた自動車並びに第69条第4項の規定による自動車検査証返納証明書の交付を受けた検査対象軽自動車及び二輪の小型自動車にあつては、保安基準適合証)を依頼者に交付しなければならない。(以下略)
    • 11 第1項の規定による自動車検査員の証明を受けた自動車が国土交通省令で定めるところにより当該証明に係る有効な保安基準適合標章を表示しているときは、第58条第1項(自動車の検査及び自動車検査証)及び第66条第1項(自動車検査証の備付け等)の規定は、当該自動車について適用しない
  • 第94条の5の2(限定保安基準適合証) - 指定自動車整備事業者は、有効な限定自動車検査証の交付を受けている自動車の当該限定自動車検査証に記載された保安基準に適合しない部分を整備した場合において、当該整備に係る部分が保安基準に適合する旨を自動車検査員が証明したときは、請求により、限定保安基準適合証を依頼者に交付しなければならない。

注釈

  1. ^ TMMは北米最初の生産拠点として1986年1月に設立された「トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・USA」を指し、その後、トヨタ・モーター・マニファクチャリング・ノース・アメリカ株式会社(TMMNA)の設立に伴い、1996年10月に「トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ケンタッキー」(TMMK)へ改称。
  2. ^ 三重運輸支局四日市自動車検査場(四日市検査場)、京都運輸支局京都南自動車検査場(京都検査場)
  3. ^ 指定工場が継続検査の申請を代行する。

出典







自動車検査証と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「自動車検査証」の関連用語

自動車検査証のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



自動車検査証のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの自動車検査証 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS