着うた 概要

着うた

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 02:45 UTC 版)

概要

自分の好きな楽曲を、30秒程度の長さにして、携帯電話着信音として設定できる。主に日本において高機能携帯電話(フィーチャーフォン、いわゆる「ガラケー」)用のサービスとして普及した。世界展開もなされていたがほとんど普及せず、またスマートフォン時代にはそもそも着信音にこだわる文化自体が消滅したため、ほぼ日本のガラケー時代の特徴的な文化となった。

「着うた」は、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント (SME) の登録商標(第4743044号ほか)であり[注 1]、元の楽曲の原盤権を保有するソニーやエイベックスなど大手レコード会社が共同で出資するレーベルモバイル社が「着うた」の送信可能化権を独占し、各「着うた」配信サイトに供給した。楽曲は3GPPAMCなど、各携帯電話事業者固有のフォーマットで符号化されており、「着うた」の自作は不可能ではないものの難解であった。

レーベルモバイル社の運営する「レコード会社直営♪」(レコチョク)が「着うた」配信サイトの最大手で、2006年から2009年にかけて開催された「レコチョク新人杯」はアーティストの登竜門として機能し、2010年に開催された「レコチョクオーディション」は参加者が1万人を超え、「着うた」のフォーマットを使ってソニーの新人発掘の場として機能した。2007年にはGReeeeNの『愛唄』が「レコチョク」サイトで(「着うたフル」「着ムービー」「呼出音」合わせて)400万ダウンロードを突破するなど、商業的な面でも音楽業界の新しい形態として注目を集めた。

しかし、スマートフォンの上陸に伴い事態は一転する。「着うた」は不正ダウンロードを防止するため、強力な著作権管理機構(DRM)が搭載されており、基本的に楽曲を購入した端末でしか楽曲を聞くことができなかった。さらに2011年当時のレコチョクに出資していたソニーは、携帯音楽端末市場や携帯電話市場においてApple社と競合していたため、ガラケーからスマホへの移行期に、「着うた」のエコシステムにおいて、当時の日本のスマホ市場シェア1位であったApple社のiPhoneを排除する方針を取った。にもかかわらずiPhoneが普及したため、スマホ時代に「着うた」のユーザーを引き継げず、DRMフリーの楽曲と利便性の高いクラウドサービスのiTunesを提供するApple社に日本の音楽配信市場を奪われる結果となった。

ただ、2022年現在でもスマートフォン向けに、「着うた」の商標を用いた音楽配信サービス自体は続けられている。


注釈

  1. ^ ただし、「着うたクラブ」「着うた倶楽部」はすでに他社が商標登録している。

出典

  1. ^ 日本のレコード産業 2013 p.8、一般社団法人日本レコード協会
  2. ^ ASCII.jp:レコード会社がやりたかったサービス“着うた”
  3. ^ EZwebに「着ムービー」コーナー登場 ITmedia Mobile
  4. ^ BIGLOBE、NTTドコモの「メロディコール」向けに音源提供 ケータイWatch
  5. ^ レーベルモバイル、メロディコール対応の音楽配信サイト ケータイWatch
  6. ^ 着うたフルはどれくらい保存できる?──「P902iS」:夏モデルの“ここ”が知りたい「P902iS」編(2) - ITmedia Mobile
  7. ^ ASCII.jpデジタル用語辞典「SD-Binding」の解説 コトバンク
  8. ^ ケータイ用語の基礎知識 第290回:SD-Binding とは ケータイWatch
  9. ^ 「着うた」めぐり公取委が排除勧告,エイベックスは拒否 日経クロステック(xTECH)
  10. ^ 着うた参入妨害、最高裁が認定 レコード会社の上告棄却 日本経済新聞
  11. ^ Mobile:ハドソン、インディーズミュージシャンの着うたサイトをオープン ITmedia
  12. ^ KDDIの着うたフル,「予想超えるハイペース」でDL数100万件突破 日経クロステック(xTECH)
  13. ^ 3G時代を盛り上げた「着うたフル」からサブスクまで 携帯の音楽配信を振り返る:ITmedia Mobile 20周年特別企画 - ITmedia Mobile
  14. ^ 日本初の“ウォークマンケータイ”はauから登場 「W42S」:懐かしのケータイギャラリー - ITmedia Mobile
  15. ^ KDDI、AAC/320kbpsの高音質配信「着うたフルプラス」を開始 - ITmedia Mobile
  16. ^ レーベルモバイル株式会社が「株式会社レコチョク」に社名を変更~ サービスブランドも「レコチョク」に統一 ~
  17. ^ Topics:iPodケータイ「iPhone」、ついに見参 - ITmedia News
  18. ^ 「着うた」とiTunes Storeの直接対決はあるのか:ものになるモノ、ならないモノ(26) - @IT
  19. ^ iTunes Storeに変化が到来 - Apple (日本)
  20. ^ モバイルコンテンツの産業構造実態に関する調査結果(平成24年) 総務省
  21. ^ あれほど人気だった「着うた」が消滅した深い事情 東洋経済オンライン
  22. ^ Androidアプリ「レコチョク」で「着うた」配信開始 - ドコモ端末向けに提供 マイナビニュース
  23. ^ 日本レコード協会70周年記念誌 p6,日本レコード協会
  24. ^ a b スマホ移行時、着うたフルと同一楽曲の再入手が無料に - AV Watch
  25. ^ 平成24年版 情報通信白書 総務省
  26. ^ レコチョク、着うたフル楽曲をスマホ移行できるサービス - AV Watch
  27. ^ 第1回モバイル知財著作権部会を開催しました – 一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム (MCF)
  28. ^ Android版「LISMO」、携帯で買った曲の再ダウンロードが可能に - ケータイ Watch
  29. ^ ソニー、アップルに楽曲配信 販売増へ戦略転換 日本経済新聞
  30. ^ 石野卓球「おせーよ!」 小室哲哉「SME頑張って!」 iTunesでソニー邦楽“解禁” - ITmedia NEWS
  31. ^ LISMOと「うたパス」が総合音楽アプリに統合、ライブ先行予約も - ケータイ Watch
  32. ^ 2014年モバイルコンテンツ関連市場の合計は一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム
  33. ^ 2016年モバイルコンテンツ関連市場の合計は一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム
  34. ^ レコチョクのケータイ向け「着うた(R)」「着うたフル(R)」サービス終了 ならびに、新たなコミュニケーションスローガンのお知らせ レコチョク
  35. ^ レコチョク ケータイランキング レコチョク
  36. ^ 音楽配信サービスGIGA「2017年 年間ダウンロードランキング」発表、PRTIMES(フェイス・ワンダワークス)、2018年1月31日。
  37. ^ 「着うた(R)」の新コンセプト商品「着うたミニ(TM)」1/27配信開始 - Sony Music(2019年5月12日閲覧)





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