利子 利息と法律

利子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/01 01:31 UTC 版)

利息と法律

私法上の利息とその制限

利息債権

利息債権とは、元本債権に基づいて借主から貸主に対して利息を給付することを目的とする債権をいう。利息債権は基本的利息債権支分的利息債権とに分けられる[23]

基本的利息債権とは、元本債権に基づいての存在を前提としてその存続期間全体を通して一定利率の利息を生じさせる利息債権をいう。基本的利息債権は元本債権に対して付従性を有するので、基本的利息債権は元本債権と共に成立・移転・消滅する(成立につき大判大6・2・14民録23輯158頁、移転につき大判大10・11・15民録27輯1959頁、消滅につき東京控判大5・7・29評論5巻商法670)[24]

支分的利息債権とは、基本的利息債権に基づいて一定期ごとに生じる一定利率の利息を支払うことを内容とする利息債権をいう。支分的利息債権のうち既に発生して具体化しているものについては移転・消滅につき独立性を有し、それぞれ元本債権から切り離して譲渡することができ、元本債権とは別個に弁済によりあるいは消滅時効にかかって消滅する[24]

約定利息と法定利息

約定利息(やくじょうりそく)とは当事者の特約によって生じる利息をいう。約定利息の利率は制限利息の範囲内で定めることができるが、利息を付す旨が定められているにもかかわらず利率の定めがない場合には法律に定める法定利率による(大判明29・4・14民録2輯4巻57頁)。

法定利息(ほうていりそく)とは法律上の規定に基づいて生じる利息をいう。法定利息を付す場合には以下の場合があり、法定利息の利率は原則として法定利率による。

  1. 連帯債務者間の求償(弁済その他免責があった日以後の法定利息、民法第442条2項)
  2. 委託を受けた保証人の求償(民法第459条2項、民法第442条2項)
  3. 契約解除における金銭の返還(受領時からの利息、民法第545条2項)
  4. 売買契約における買主の利息支払義務(民法第575条2項)
  5. 委任契約における受任者の金銭の消費についての責任(民法第647条
  6. 委任契約における受任者による費用等の償還請求(民法第650条1項)
  7. 寄託契約における受寄者への委任の規定の準用(民法第665条
  8. 組合契約における業務執行組合員への委任の規定の準用(民法第671条
  9. 事務管理における委任の規定の準用(民法第701条
  10. 不当利得における悪意の受益者の返還義務(民法第704条
  11. 後見における後見人の被後見人への返還金及び被後見人から後見人への返還金等(民法第704条
  12. 財産分離の請求後の相続人による管理への委任の規定の準用(民法第944条2項、民法第650条1項)
  13. 遺言執行者への委任の規定の準用(民法第1012条2項、民法第650条1項)
  14. 商人間における金銭消費貸借(商法第513条1項・2項)
  15. 交互計算における債権者の利息請求権(商法第533条
  16. 供託法上の供託金(供託法3条)

なお、金銭債務の債務不履行(民法第419条1項)や組合契約における金銭出資の不履行の責任(民法第669条)における遅延損害金(遅延利息)は、厳密には利息ではなく履行遅滞による損害賠償である[25][7]。ただ、これらについても法定利率(約定利率の場合もある)の適用がある(民法第419条1項、民法第669条)。

約定利率と法定利率

当事者間の契約または慣習によって定められる利率を約定利率という[26]

法律上利息を付すものとされている場合や契約において利息を付す旨が定められているにもかかわらず利率の定めがない場合には、法律に定める法定利率(ほうていりりつ)によることになる。

  • 法定利率
    • 2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で3年ごとに法定利率を見直す変動制が導入される[27]。また、2017年の法改正(2020年4月1日法律施行)により従来の民事法定利率(年五分、民法の旧404条)と商事法定利率(年六分、商法の旧514条)の区別は廃止される[27]
    • 法定利率は年3%である(変動制導入時の法定利率。民法404条2項)。その後、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を一期とし、一期ごとに変動する制度となる(民法404条3項、2020年4月1日法律施行)。
    • 2017年改正の民法で変動制が導入されるのに伴い、いつの法定利息を適用するか明確にするための規定が設けられた(2020年4月1日法律施行)[27]
      • 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による(民法404条1項)。
      • 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による(民法419条1項)。
    • なお、施行日前に利息が生じた場合におけるその利息を生ずべき債権に係る法定利率については、新法404条の規定にかかわらず、なお従前の例による(平成29年の民法改正附則15条1項)。
  • 供託金利息
    供託金利息は年0.012%である(供託法3条、供託規則33条1項、2019年10月1日現在[28])。

制限利息

法律によって請求または受領しうるとされる利息の上限をいう。借り入れの際には、借り手は多少高い利息を支払ってでも借り入れをしようとすることが多いが、あまりに高い利率の定めがなされると借り手の生活を破壊する危険があるため、契約自由の原則の例外として規定されている。

日本法上は基本的には利息制限法によって規定されており、元本が10万円未満の場合は年20%、10万円以上100万円未満の場合は年18%、100万円以上の場合は年15%、延滞の損害金は、この1.46倍までが認められる。これを超える部分について借り手は支払いの義務はないが、貸し手が罰せられることもない(但し、下記出資法の上限金利を上回っていれば、出資法違反で罰せられる)。 利息制限法の他に出資法による規制があり、金融業者は年29.2%(うるう年は29.28%とし、1日あたり0.08%)以上、金融業者以外は年109.5%(うるう年は109.8%とし、1日あたり0.3%)以上の利息を受領する行為には罰則が科される。

利息制限法の利率上限を越えて出資法の定める利率までについては、貸金業法43条(いわゆる「みなし弁済」規定)の規定するところにより、借り手が任意に支払いをなした場合には貸し手はこれを有効に受領することが出来る。多くの消費者金融がこのみなし弁済規定を利用して29%程度の利息を得ている。借り手は自己に支払い義務がないことを知らないのが通常であることから、この部分をグレーゾーンであると評し、出資法上限金利を利息制限法上限金利と同水準に引き下げるなど、より明快になるよう法改正を求める意見もあり、金融庁の「貸金業制度等に関する懇談会」で議論されている。また、利息制限法の上限金利を上回る返済をした借り手が、過払い金の返還を求める訴訟を、各地で起こしている。

税法上の取扱い

個人の利子

所得税法上の利子所得とは、公社債及び預貯金の利子、合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配(利子等という。)に係る所得とされる(所得税法23条)。これらは、通常租税特別措置法により総合課税の対象から除かれ、その支払者である金融機関において国税15.315%、地方税5%の源泉徴収等を受けて課税関係が終了する源泉分離課税と、確定申告が可能な申告分離課税がある。

一方、上記に含まれない利子(貸金から得る利子や学校債から得られる利子など)は、雑所得事業所得に分類されることとなる。

法人の利子

法人においては、上記「利子等」に係る手取額は源泉徴収後(国税のみ)の税引後所得となる。例えば、利子の総額は100であるが、源泉徴収により手取額は84.685となる。これは法人税法上次のいずれかの方法で処理することが認められている(会計上は、純額表示と総額表示のいずれによっても構わない)。

  1. 手取額そのままを所得とする方法(税額の損金算入方式):所得84.685
  2. 手取額に源泉徴収税額を加算した金額を所得とし、その源泉徴収税額を法人税額から控除する方式(所得税額控除方式):所得100、法人税額から15.315を控除

一方、その他の利子は、単純に益金(所得)となる。




  1. ^ 『歴史学事典Ⅹ交換と消費』 弘文堂〈法律学全集 (20)〉、1994年2月、781頁
  2. ^ 田中秀臣 『経済論戦の読み方』 講談社〈講談社新書〉、2004年、66頁。
  3. ^ a b 田中秀臣 『経済論戦の読み方』 講談社〈講談社新書〉、2004年、63頁。
  4. ^ ただし、超低金利下で一時的にマイナス金利が発生することがあるほか、2012年にはデンマークが政策金利を0%未満にまで引き下げている(マイナス金利の世界に踏み込むデンマーク JBpress 2012年8月27日(フィナンシャル・タイムズ 2012年8月24日)、2013年10月30日閲覧)。
  5. ^ 於保不二雄著 『債権総論 新版』 有斐閣〈法律学全集 (20)〉、1972年1月、47頁・48頁
  6. ^ 川井健著 『民法概論〈3〉債権総論 第2版』 有斐閣、2005年12月、30頁
  7. ^ a b c d 於保不二雄著 『債権総論 補訂版』 有斐閣〈法律学全集 (20)〉、1972年1月、47頁
  8. ^ 川井健著 『民法概論〈3〉債権総論 第2版』 有斐閣、2005年12月、30頁
  9. ^ 『歴史学事典Ⅹ交換と消費』 弘文堂〈法律学全集 (20)〉、1994年2月、781頁
  10. ^ a b c 『世界大百科事典』2007年改訂新版(平凡社)、「利子」の項(筆者:清水廣一郎)
  11. ^ ジャック・ル・ゴッフ 『中世の高利貸』 渡辺香根夫訳、法政大学出版局〈叢書ウニベルシタス〉、20頁、1989年。
  12. ^ 『中世の高利貸』20-21頁。
  13. ^ 大澤武男 『ユダヤ人とドイツ』 講談社〈講談社現代新書〉、1991年、34頁。
  14. ^ 『中世の高利貸』44頁。
  15. ^ 『中世の高利貸』21、39頁。
  16. ^ 『中世の高利貸』88頁。
  17. ^ 『中世の高利貸』38-39頁。
  18. ^ 『ユダヤ人とドイツ』59-60頁。
  19. ^ 『中世の高利貸』41頁。
  20. ^ 『中世の高利貸』86-87、89頁。
  21. ^ 『中世の高利貸』23-24頁。
  22. ^ 『中世の高利貸』86-93頁。
  23. ^ 我妻栄著 『新訂 債権総論』 岩波書店〈民法講義Ⅳ〉、1964年3月、43頁
  24. ^ a b 遠藤浩編著 『基本法コンメンタール 債権総論 平成16年民法現代語化新条文対照補訂版』 日本評論社〈別冊法学セミナー〉、2005年7月、17頁
  25. ^ 川井健著 『民法概論〈3〉債権総論 第2版』 有斐閣、2005年12月、30頁
  26. ^ 於保不二雄著 『債権総論 補訂版』 有斐閣〈法律学全集 (20)〉、1972年1月、50頁
  27. ^ a b c 民法(債権関係)改正がリース契約等に及ぼす影響 (PDF)”. 公益社団法人リース事業協会. 2020年3月21日閲覧。
  28. ^ 供託金利息の利率の変更に関する供託規則の一部改正について”. 法務省. 2020年4月1日閲覧。





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