マイリトルポニー〜トモダチは魔法〜 製作

マイリトルポニー〜トモダチは魔法〜

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/03 09:18 UTC 版)

製作

この番組の脚本はロサンゼルスのハズブロ・スタジオが担い、アニメーションパートはカナダのバンクーバーにあるDHXメディア・バンクーバーが担う形で共同制作を行っている。

ハズブロ・スタジオにいるファウストと脚本スタッフらは、彼女の過去の作品に携わった経験があり、ハズブロからも信頼されている。この中にはエイミー・キーティング・ロジャース英語版、シンディ・モロウ、M・A・ラーソン、クリス・サビーノ、ミーガン・マッカーシー、デイブ・ポルスキー、シャーロット・フラートン英語版といった脚本家たちも含まれている。

脚本はまず、原作者であるファウストと、シリーズ構成のロブ・レンゼッティの二人がそれぞれの回のアイデアを出し合うところから始まる。それから、二人はその回を担当する脚本家とブレインストーミングを行い、脚本家がシーンや会話を書き出していく。そのあと三人で脚本を最終段階に持ち込み、ストーリーの進め方を決めていく。

ハズブロはこの段階で、コンセプトの一部を番組に組み込むために、彼らのやり取りに参加している。たとえば、登場人物の一人であるセレスティアのキャラクターの性質を女王様ではなくお姫様にしてほしいという注文を付け、彼女がおしゃれに興味を持つ一面が加えられた。それにあわせておもちゃの方も、ラリティのブティックといった関連アイテムが売り出された[9][13]

基本的にハズブロはファウストら製作陣の意向を尊重しているが、おもちゃの設定を本編に反映させることがある。その一例として、ポニービルの小学校の校舎が挙げられる。また、ハズブロは、ファウストに対し、教育もの(E/I)としても見るに堪える作品にしてほしいという要望を送ったところ、彼女は自分なりに、他のアニメではまねしづらい方法で、それにこたえてみせた。たとえばあるキャラクターが相手の慎重さを評して頭でっかち(Egghead)と呼ぶ場面や[注 1]、不正行為をしてまで相手を出し抜こうとするキャラクターを嫌な奴と呼ぶ場面[注 2]がそれに該当すると、ファウストは話している[9]。いずれの回も教訓や道徳が題材となっているが、ただ視聴者に押し付けるのではなく、自らの体験を思いこさせる描写になっている[11]。知的財産の問題からハズブロが原作に登場する一部のポニーたちの命名権を手放すことになったため、番組に登場するポニーのうち、何頭かは今までのおもちゃのシリーズに登場してきたポニーの名前を組み合わせたものであり、この番組から初めて登場するキャラクターもいる[12]

総監督を務めるジェイソン・ティエッセン(左)と、MLPの大型ファンサイトの管理人であるShaun Scotellaro ("Sethisto")。2011年のブロニーコンにて。

完成した脚本は、プリプロダクションを担うスタジオBに送られ、ここでAdobe Flashを用いてアニメーションが創られる。ティエッセン率いる制作チームは、ハズブロからこの集団の重要な人事を決める権利が与えられており、美術監督のリッド・ソレンソンはこの権利によってその座に就くことができた人物である。スタジオBの製作陣は送られてきた脚本からストーリーボードを書き起こす。この脚本には演出の指示以外にも、脚本家がアニメーションで表現できるであろうと考えていることが多く詰め込まれている。アニメーターたちは、キャラクターの基本的なポーズやレイアウト、背景といった、アニメ制作において必要な要素を準備してから試作版を作ってロサンゼルスに送り、それを見てもらった上で感想を聞き脚本家たちからアドバイスをもらう。

当初は共同監督、シーズン2より監督として参加しているジェームズ・ウットンはこの番組向けにFlashプログラムを作成し、ティエッセンから技術の専門家として信頼されている。そのプログラムによりキャラクターや背景が簡略化された状態で位置やポーズを確認でき、作業時間を数週間短縮させることに成功した[19]。たとえば、ポニーたちのたてがみや尻尾は、複雑な形状をしているが、実際は三次元の方向に線がカーブを描いて伸びており、それが伸び縮みすることで、様々な表現ができ、わざわざ動く映像を用意して費用がかさむという心配がなくなる[12]

ストーリーボード担当者とアニメーターは、世界観を膨らませるため、背景にモブキャラクターを設置する必要がある。脚本家のミーガン・マッカーシーは、この段階でファンサービスや、ポップカルチャーへのオマージュ、イースター・エッグといった様々な要素が詰め込まれると話している[20]

プリプロダクションが完成したところで、制作陣はいよいよアニメーション化に取り掛かる。主要なアニメーション制作はスタジオBが担うが、第1シーズン後半以降に入ると仕上げはフィリピンのトップ・ドロー・アニメーションが担うようになった[21][22]

原語版のキャスティングおよび声優のプロデュースはヴォイスボックス・プロダクション(Voicebox Productions)が担当し[23]、作品の音響監督はテリー・クラッセンが担当した。出演する声優はファウストとティエセンとすでに選ばれた声優が選び、最終的な承認はハズブロが出した[9]。収録はアニメーション完成に先駆けて行われ、アニメーターたちが、演出の補助にあたった。ピンキーパイの声を当てたリブマンはこれにより出演者たちは何の制約もなく自由に演技ができたと話しており、活発なピンキーパイのことばを引用して「彼ら(アニメーターたち)が足を引っ張ることなく、私は好きなだけ高いことへ行くことができる」と話したと話した[24]

ダニエル・イングラム、 Everfree Northwest 2012にて。

この番組の音楽はウィリアム・ケビン・アンダーソンが担当し、ダニエル・イングラムは主題歌および劇中歌の作曲を担当している[25][26]。劇中歌は、ミュージカルのように会話を歌にしたものが多い。

製作陣は本編中の音楽で変化が要ると感じた時に、アンダーソンがその要望に対して的確に応じてくれると話している[9]。アンダーソンによる歌の作曲はもちろん、イングラムの作品も、作品に幻想的な雰囲気を満たす役割をもつBGMとうまくかみ合っている[27]。音楽や劇中歌の作曲は番組の放送よりずっと前から製作が開始される。実際、2012年11月にアメリカ合衆国で放送が始まった第3シーズンの劇中歌は放送より1年前の2011年に作られたものである[27]。ハズブロは朝の子供向け番組の常識を覆すような音楽を作るようイングラムに頼み[27]、その期待に応えようと努力した結果、「壮大で、叙事詩的で、ブロードウェイ・ミュージカルや映画音楽により近づいた」ものになったと、イングラムは話している。

歌詞や曲のテーマについて脚本家がアドバイスを出すこともあり、例えばスティーヴン・サンドハイムのファンを自認するエイミー・キーティング・ロジャースが手掛けた曲のうち[28]、第1シーズンの『ラリティのドレス』という回で用いられた"The Art of the Dress"という楽曲はミュージカル作品『ジョージの恋人英語版』の劇中歌"Putting it Together"にインスパイアを受けたものであり、第1シーズン最終話で用いられた"At The Gala"は、『イントゥ・ザ・ウッズ』が元になっている[29][30]。多くの劇中歌が用いられた『アップルサイダー対決』(原題:"The Super Speedy Cider Squeezy 6000")は、メレディス・ウィルソンの『ミュージック・マン』の劇中歌"Ya Got Trouble"にささげたものとなっている[26][31]

番組が承認される前、ファウストが参考資料として"The Ticket Master"という話の台本を提出した際、ハズブロとファウストは11分ほどの番組を想定していた。だが、ファウストが従来通り22分ほどの番組にしてほしいと頼んだところ、最終的にハズブロも彼女の要望を認めた。

製作当初のスケジュールは厳しいもので、ファウストのスケジュールは自身が思っていた2倍のはやさで進んでいき、ロサンゼルスの脚本チームとバンクーバーのアニメーターチームの間では、遠隔通信によるやり取りが頻繁に行われた。それでも、双方を集めてミーティングを開き、アニメーターは脚本家の意見をビジュアルや身振り手振り、キャラクター作りなどに生かしていった。ファウストは1つの話を作るのに1年かかると推測しているが、実際のところ第1シーズン全26話分は、進み具合は異なれど同時進行で制作されている。第2シーズンが通った時、その放送予定分は32個に膨らんだ[9]。ティエッセンは製作陣からスタッフが抜けるのを防ぐため、第1シーズンの放送が終わってからできるだけ早く第2シーズン制作に取り掛かったことを話している[19]

第1シーズン放送終了後、ファウストは製作から離れ、顧問製作者としてクレジットされるようになった。第2シーズンでは、ストーリーのコンセプトや脚本の一部を担当していたが、放送終了後は、その仕事からも外れた。製作陣から抜けることになっても、ファウストはスタッフたちと一緒にできたことを最高の幸せとし、「私がいなくなっても、第1シーズンからみなさんを楽しませた素晴らしいスター、脚本家、監督の方々が番組を引っ張っていくでしょう。私はこの番組が今までのように素晴らしいものであり続けると、確信しています」と話した[32]


  1. ^ 『アイアンポニーはどっち?』(原題:"Fall Weather Friends")でレインボーダッシュがトワイライトスパークルをEggheadと呼んでいる。
  2. ^ 『アイアンポニーはどっち?』(原題:"Fall Weather Friends")でアップルジャックがレインボーダッシュの不正を咎める場面が該当。
  3. ^ テレビ東京放送時では「ガラガラシャイ」とクレジット
  4. ^ トワイライトは彼女の発言を聞いた後に大熊について調べていたため、小熊を落ち着かせる方法も知ることができた。
  5. ^ YouTube版の邦題タイトルは『怪物ディスコード(パート1)』。
  6. ^ YouTube版の邦題タイトルは『怪物ディスコード(パート2)』。
  7. ^ YouTube版の邦題タイトルは『レッスンゼロ』。
  8. ^ YouTube版の邦題タイトルは『月食』。
  9. ^ YouTube版の邦題タイトルは『のマスクポニー登場!』となっており、誤表記である。
  10. ^ YouTube版の本編映像は『わたしもセレブ!』となっており、エラー映像を配信している。
  11. ^ YouTube版の邦題タイトルは『ピンキーパイのベビーシッター』となっており、誤表記である。
  12. ^ YouTube版の邦題タイトルは『メリーメリーキャンタロット』となっており、誤表記である。
  13. ^ YouTube版の邦題タイトルは『大好きグラニースミス』となっており、誤表記である。
  14. ^ YouTube版の邦題タイトルは『チアリー先生のお 合い』となっており、誤表記である。
  15. ^ YouTube版の邦題タイトルは『ロイヤル・ウェディングその1』。
  16. ^ YouTube版の邦題タイトルは『ロイヤル・ウェディングその2』。
  17. ^ YouTube版の邦題タイトルは『スウィーティーベルのやきもち』となっており、誤表記である。
  18. ^ YouTube版の邦題タイトルは『モードパイ』となっており、誤表記である。
  19. ^ 第40話のみ、2014年1月2日 木曜 7:30 - 8:00に放送
  20. ^ ニコニコチャンネルでは金曜20:00更新





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