ペントハウスアパートメント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/05 06:05 UTC 版)
歴史
ペントハウスアパートメントのアイデアは、「狂騒の20年代」と呼ばれる1920年代に生まれた。当時経済成長の真っ只中にあったアメリカでは、経済の中心地ニューヨーク市に建設ブームが起きていた。都市部における住宅需要の高まりと、アメリカ人の富の増大が、ビルの最上階や高層階に豪華な区画を設ける機運に結びついた。
ニューヨーク市で最初期に作られたペントハウスアパートメントの一つは、パーク街1040の集合住宅に設けられた、出版社コンデナスト・パブリケーションズの創業者コンデ・ナスト(Condé Nast)の二層ペントハウスアパートメントである。1923年に計画された段階では、この集合住宅は各階が3つのユニットから成り、屋上にメイド用の部屋が設けられることになっていた。しかし翌1924年に、最上層部がナストの二層ペントハウスアパートメントに変更された。屋上のサロンと最上階が階段でつながれ、最上階の角のユニットは家族向けの区画になった。ペントハウス全体が、エルシー・デ ウルフ(Elsie de Wolfe)によってフランス風に装飾された。このペントハウスは1925年に完成し、豪華な招待客とおもてなしで知られた多くのパーティーに使われた[1]。
なお「pent house」という単語は、1913年に発行された雜誌「ビルディング・マネジメント」(BUILDING MANAGEMENT)の26ページに既に登場している。
建築学上の定義
建築学上は、ペントハウスという用語は、ビルの屋上に設けられた、外壁よりも後退した(屋上デッキ全体を占拠しない)構造物を指す(こうした後退をセットバックと呼ぶ)。高層ビルにおいては、エレベーター装置等を収容するメカニカルフロア(mechanical floor。機械室)をメカニカルペントハウス(mechanical penthouse)と呼ぶことがある。
ヨーロッパのデザイナーや建築家達は、屋上スペースや外壁から後退した構造物を利用して居住空間を作れることを、昔から認識していた。しかし米国においてこうしたスペースの活用が始まったのは、1920年代初頭である。1923年にニューヨーク市のプラザホテルにセントラルパークを見下ろす屋上区画が開発されることが発表された時、この発表はニュースになった。その後数年間、米国では豪華なペントハウスアパートメントの開発が相次いだ[2]。
プライベートテラスの実装方法として見た場合、セットバックは、張り出しバルコニーに比べて著しく大きく、より保護された屋外空間の確保を可能にする。このような望ましい屋外空間を複数の階に提供するため、集合住宅の複数の上層階をセットバックにして階段状にする場合がある。こうしたテラスはすべてのペントハウスに存在するわけではないが、ペントハウスの望ましい特徴の一つと見なされている。こうしたテラスを複数の区画で分割して使用する場合もあれば、1区画でフロア全体を専有する場合もある。セットバックによって確保されたテラスの代わりに(またはそうしたテラスに加えて)、屋上をプライベート空間として利用できるペントハウスアパートメントも多い。
前述のとおり、「ペントハウスアパートメント」として提供される区画は建築学上の定義を満たさない場合もある。外壁からセットバックしていない単なる最上階の居住区のことであったり、ペントハウスと呼ばれる区画の上にエレベーターの機械室などの本来のペントハウスを備える場合もある。
立地と広さ
一般にペントハウスアパートメントは、セキュリティや便利な立地といった通常の集合住宅の長所に加えて、広さやデザインといった戸建住宅の長所も備えている。ホテル、レストラン、ショッピングモール、学校などにもアクセスしやすい繁華な都市の中心にいながら、都市生活の騒音や人混みから遠く離れて過ごしている感覚になれるペントハウスは多い。専有空間も、一般的な集合住宅の区画よりはるかに確保されている。
- ^ Alpern, Andrew. Luxury apartment houses of Manhattan: An Illustrated History. Dover Pubns, 1992.Print.
- ^ Kneen, Orville "Manhattan's $300,000 Rooftop Apartments" Modern Mechanics and Inventions November 1929
- ^ Aronson, Steven M. L. "Rooms with a view: inside and out, a New York penthouse attracts attention." Architectural digest. 67.4 (2010): 62-69. Print.
- ^ 傷だらけの天使を探して~代々木会館巡礼 30年目のロケ地再訪
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