ブラジル高速鉄道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 05:38 UTC 版)
問題
ブラジル高速鉄道は様々な要因により遅れが見込まれており、また興味を示している各国の企業連合も、参加には慎重な構えである。
地理的条件
現行案でリオデジャネイロ - サンパウロ間に鉄道を敷く場合、リオデジャネイロを出てすぐに高低差800mの急斜面を登り、2つの山脈の間を川に沿って走る形を余儀なくされている。その区間に必要とされているトンネルや高架は合わせて200kmにも上り、建設費用の増大が考えられる。また沿線の半分程度の区間は工場地帯を走るため、地価が高く用地買収の困難さも予想される[13]。
40年間の運営
ブラジル政府が提示した条件には、落札した企業が40年間の事業運営を求められる。また運賃上限は1kmあたり0.49レアルと定められている。しかしブラジル政府の需要予測が甘く、さらに用地買収には困難が予想され工事延期で追加負担が発生する恐れがあるなどリスクが大きく、収益が見込めないとし、日本やフランスの企業連合は応札を見送る方針を示していた[21]。この甘い需要予測や高いリスクを是正するよう、日本の企業連合がブラジル政府に働きかけたこともあったが、ブラジル政府は2011年1月時点で「需要予測に誤りは無い」として変更するつもりはないことを告げた[9]。
入札の遅れ
ブラジル政府の予算調達の遅れや、上記の困難さから各国企業連合は参加に難色を示していることなどから、入札は大幅に遅れた。
2010年11月29日に予定していた入札も、直前の26日になって2011年4月11日まで延期すると発表し、さらに4月7日になって7月11日まで延期すると発表され、さらに7月11日になっても応札する企業はなかった。各国企業の懸念材料である40年間の運営や出資割合についてもブラジル政府は譲歩を示さず、遂には入札自体が凍結されている状況である。
ブラジルの政治・経済情勢による事業自体の先行き
2013年6月、サッカーのコンフェデレーションカップ開催期間中にもかかわらず、多くの国民が大都市圏内交通の改善を求めるデモ(2013年ブラジル抗議運動を参照)が展開され、都市内交通の改善への投資が必要という世論に直面したジウマ政権が高速鉄道による都市間交通よりもそれらを優先する動きも見せ始めている[22]。
2013年7月、サンパウロとブラジリアのメトロ(一部地下を含む都市鉄道)やパウリスタ都電公社(CPTM、サンパウロ都市圏鉄道会社)の事業入札において、同社が他の高速鉄道入札企業とともにカルテルを行っていたことを認めたため、影響する可能性がある[23]。ブラジルの法律では、同国で不正を働いて獲得した契約について、契約額の20%に相当する罰金が科される。このため、シーメンス社が自社の罰金額を軽くするためにカルテル相手を通報したものとみられる。通報された企業はボンバルディア、CAF、アルストム、三井物産など。後者2社は当局の調査に応じている[24]。
8月12日、ボルジェス運輸相は延期は競争を促すためで、地下鉄などの建設工事に関する外国企業の価格操作疑惑とその調査には関係していないと述べた[25]。
2013年8月の入札参加期限が3度目の延期となったのは、こうした事情に加えこの時期の強行が翌年の大統領選挙に及ぼす影響を考慮したともされる[26]。
- ^ “ブラジル高速鉄道入札、7月に再延期 五輪開通困難か”. 日本経済新聞. 2011年4月16日閲覧。
- ^ ブラジルの高速鉄道建設の入札に応札企業なし、計画実現に赤信号 - ロイター 2011年7月12日
- ^ “ブラジル高速鉄道の入札 3回目の延期へ”. 日本経済新聞. 2011年6月30日閲覧。
- ^ (ポルトガル語)“Financiamento e tarifa definirão vencedor do trem-bala”. Abril.com. 2010年1月12日閲覧。
- ^ a b “韓国企業連合がブラジル高速鉄道計画に応札へ-大使が指摘”. Bloomberg.co.jp. 2010年1月12日閲覧。
- ^ a b “TAV Traçado”. TAV. 2010年1月12日閲覧。
- ^ a b “ブラジルの資産家バチスタ氏、高速鉄道建入札への参加を検討”. ロイター. 2010年1月12日閲覧。
- ^ “ブラジル高速鉄道事業、韓国が受注か、日本とフランスは入札を断念―韓国”. サーチナ (2010年11月26日). 2012年9月23日閲覧。
- ^ a b “ブラジル高速鉄道争奪戦 入札延期に望みつなぐ日本”. Diamond.jp. 2010年1月12日閲覧。
- ^ “ブラジル高速鉄道受注に暗雲”. 朝鮮日報. 2011年4月16日閲覧。
- ^ “韓国がブラジル高速鉄道の入札を回避、理由は「収益が見込めない」”. サーチナ. 2011年7月12日閲覧。
- ^ リコールを受けKTX、運行数を調整して整備 - 中央日報 2011年5月13日
- ^ a b “ブラジル初の高速鉄道、遅れる準備 W杯前の完成、地形と地価が壁 2009/7/7”. business-i.jp. 2010年1月12日閲覧。
- ^ (英語)Brazil delays high-speed train bids for at least a year
- ^ (ポルトガル語)ENTREVISTA-Espanholas CAF e Renfe disputarão trem-bala Campinas-SP-Rio(ロイター)
- ^ TAV入札実現に壁?=スペインは事故で枠外か(ブラジルニッケイ新聞)
- ^ a b ブラジル、9月の高速鉄道入札で脱線事故起きたスペインの企業排除せず
- ^ (朝鮮語)韓.日.伊, 상파울루~리우 고속철 건설사업 각축
- ^ 高速鉄道の入札延期か=中国は参加停止の気配も(ブラジルニッケイ新聞)
- ^ ブラジル高速鉄道建設の入札、中国は2年前の鉄道事故のため門前払い―中国メディア(レコードチャイナ2013年7月24日付)
- ^ “日本企業連合、条件変更要請へ ブラジル高速鉄道の入札延期で”. 産経新聞. 2010年1月12日閲覧。
- ^ 【ジウマ大統領がTAV事業入札の延期を準備】-2013/08/08(エスタード紙/ブラジル日本商工会議所ニュース)
- ^ シーメンスがカルテル密告=聖市地下鉄の入札などで=来月の高速鉄道にも絡む(ブラジルニッケイ新聞)
- ^ ブラジル当局、不正入札疑惑で三井物産など世界大手数社を調査へ-FISCO/財経新聞
- ^ ブラジル高速鉄道、また入札延期…少なくとも1年後
- ^ TAVの入札3度目の延期=関心ありは1企業のみ=カルテル疑惑も影響か?=デモ後の国民感情考慮も(2013.8.14-ニッケイブラジル新聞)
- ^ 4時間余り航空管制不能に=通信機器トラブルか=管制官業務拒否の可能性も=待たされた挙句全便欠航(ブラジルニッケイ新聞)
- ^ 全国の空港で発着遅れ=航空管制センターでトラブル(ブラジルニッケイ新聞)
- ^ サンパウロ−リオ間に弾丸列車運行か(ブラジル日本商工会議所)
- ^ 政治・経済情勢(2007年7月)-在マナウス日本総領事館
- ^ 高速鉄道が具体化=技術移転の条件付きで今年中入札(ブラジルニッケイ新聞)
- ^ 「百周年を機に世界最高の技術を」=新幹線の売り込み本格化=日本から官民20人が来伯=聖市、首都、リオで説明会(ブラジルニッケイ新聞)
- ^ (英語)[1]
- ^ 高速鉄道=8つ以上の停車駅予定=日本など6カ国が名乗り(ブラジルニッケイ新聞)
- ^ カサビ市長が麻生首相を表敬=東京=高速鉄道、デカセギ問題など=槍田三井物産会長とも懇談(ブラジルニッケイ新聞)
- ^ 新百年紀の日伯緊密化へ=新幹線方式を伯国に=首都で盛大にセミナー=伯日議連主催、下院で(ブラジルニッケイ新聞)
- ^ カンポ・デ・マルテに高速鉄道聖市内駅(ブラジルニッケイ新聞)
- ^ 総事業費1兆6000億円の高速鉄道プロジェクト=日本、欧州、中国、韓国が応札の構え―ブラジル
- ^ (英語)Brazil opens bidding for $19 billion fast train
- ^ 高速鉄道の入札参加条件の厳格化で中国は参加できない (ブラジル日本商工会議所)
- ^ (ポルトガル語)China está fora do leilão do TAV, prevê minuta do edital(エスタード紙)
- ^ (朝鮮語)"브라질 고속철 건설 입찰조건 완화해달라" 요청
- ^ ブラジル高速鉄道、事業計画公表を先送り 入札は来年7月か
- ^ ブラジル高速鉄道、13年8月に入札 日本連合も応札是非を検討
- ^ 高速鉄道の収益率を引き上げ、入札価格のみで落札コンセッションを決定-2013/06/28(ヴァロール紙/ブラジル日本商工会議所ニュース)
- ^ 航空輸送の推移と現状-一般財団法人 日本航空機開発協会
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