カキ (貝) 利用

カキ (貝)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/16 16:13 UTC 版)

利用

食材

食用としての歴史は非常に長く、世界中で食され、人類が親しんできた貝の一つである。グリコーゲンのほか、必須アミノ酸をすべて含む。タンパク質カルシウム亜鉛などのミネラル類をはじめ、さまざまな栄養素が多量に含まれるため、「海のミルク」と呼ばれる[25]カキフライのような揚げものや、鍋物の具にして食べたり、新鮮なものは網焼きや生で食す。

牡蠣栄養価の代表値

実際の栄養価は、生育環境、生育海域、品種などで異なるため記載されている値は代表値である。

牡蠣(太平洋、生)
100 gあたりの栄養価
エネルギー 339 kJ (81 kcal)
4.95 g
食物繊維 0 g
2.3 g
飽和脂肪酸 0.51 g
一価不飽和 0.358 g
多価不飽和 0.894 g
9.45 g
トリプトファン 0.106 g
トレオニン 0.407 g
イソロイシン 0.411 g
ロイシン 0.665 g
リシン 0.706 g
メチオニン 0.213 g
シスチン 0.124 g
フェニルアラニン 0.339 g
チロシン 0.302 g
バリン 0.413 g
アルギニン 0.689 g
ヒスチジン 0.181 g
アラニン 0.572 g
アスパラギン酸 0.912 g
グルタミン酸 1.285 g
グリシン 0.591 g
プロリン 0.386 g
セリン 0.423 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(10%)
81 µg
チアミン (B1)
(6%)
0.067 mg
リボフラビン (B2)
(19%)
0.233 mg
ナイアシン (B3)
(13%)
2.01 mg
パントテン酸 (B5)
(10%)
0.5 mg
ビタミンB6
(4%)
0.05 mg
葉酸 (B9)
(3%)
10 µg
ビタミンB12
(667%)
16 µg
ビタミンC
(10%)
8 mg
ミネラル
ナトリウム
(7%)
106 mg
カリウム
(4%)
168 mg
カルシウム
(1%)
8 mg
マグネシウム
(6%)
22 mg
リン
(23%)
162 mg
鉄分
(39%)
5.11 mg
亜鉛
(175%)
16.62 mg
(79%)
1.576 mg
マンガン
(31%)
0.643 mg
セレン
(110%)
77 µg
他の成分
水分 82.06 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)


カキの食べられない月

the Whitstable Oyster Festival 2007 の初日のカキの水揚げ

産卵期にはカキは精巣卵巣が非常に増大し、食用とはならない。一般にカキとして認識されているマガキの場合は、グリコーゲン含量が増える秋から冬にかけてが旬とされており、英名に「R」のつかない月、すなわちMay, June, July, Augustの5、6、7、8月は産卵期であり食用には適さないとされている[25]。ただし、春から夏に旬を迎えるイワガキと呼ばれる種類のカキもあり、それぞれ養殖も盛んであることからマガキに限らないならば通年食べることができる。また、産地によっては、水温などの条件により旬が変わることもある。本来は冬が旬であるが、大型で夏でも生殖巣が発達しない「3倍体牡蠣」も開発され、市場に出ている。イギリスで開催されるカキのお祭り(Whitstable Oyster Festival)に使われるカキもイギリスで養殖された日本のマガキで、開催されるのも夏である。カキの養殖により通年カキが手に入るため、「R」のつかない月はカキを食べないという習慣は英語圏で消えつつある。[独自研究?]

料理

剥き身に加工するための殻を開ける道具

カキの殻の表面は剃刀の刃のように薄いものが重なっており、生食の際には軍手などの手袋を用いないと手のひらに無数の傷がつく。網焼きや生食では身だけでなく汁もともに吸う。多くの人はカキの身にのみ栄養があると考えているが、身が浸されている殻の中の海水を含む汁にも多くの栄養素が含まれていることが知られている。カキの独特の風味は貝類の内臓の味であるということを日本テレビの科学番組『所さんの目がテン!』で検証しており、ここではハマグリの内臓を寄せ集めて作ったカキフライもどきが本物と区別が付かないことを、20人中18人が騙されたという結果で示した[26]

冷めたカキの調理品を電子レンジで温める際は、温めている途中で破裂するおそれがあるため、あらかじめラップでくるんだり、カキに切れ込みを入れたりした方が良い。

生食
生食用として提供されたイワガキ
一般的に魚介の生食を嫌う欧米食文化圏において、カキは例外的に生食文化が発達した食材であり、古代ローマ時代から珍重され、養殖も行われていた。生ガキはフランス料理におけるオードブルとなっている。ナポレオンバルザックビスマルクなどがカキの愛好家であったことが知られている[25]。また、北アメリカフランス系カナダ人ケイジャンの食文化でも生食される。ニューオーリンズなどのケイジャン文化圏の観光地では生ガキが名物料理のひとつであり、生ガキをメニューの中心に据える「オイスターバー」と呼ばれるレストランもそれらの土地では珍しくない。
日本では縄文時代ごろから食用されていたとされ、多くの貝塚から殻が発見されており、ハマグリに次いで多く食べられていたと考えられている[25]室町時代ごろには養殖も行われるようになったという。大坂では明治時代まで広島から来るかき船が土佐堀、堂島、道頓堀などで船上での行商を行い、晩秋の風物詩となっていた。
かつては広島や東北などの産地から消費地まで輸送するのに時間がかかったため、日本ではカキの生食は産地以外では一般化せず、もっぱら酢締めや加熱調理で食された。日本人では武田信玄頼山陽などがカキの愛好家であったことが知られている[25]
日本人がカキを生で食べるようになったのは、欧米の食文化が流入した明治時代以降[27]であり、生食文化が欧米から輸入された珍しい食材である。
カキの殻を合わせ目からナイフ状のヘラを差し込み、貝柱を切断してこじ開け、身をつまみ出して食べる。生ガキとも呼ぶ。レモン汁食酢タバスコ等を使った酸味のある調味ダレを添えることもある。
焼きガキ
イワガキの焼きガキ
殻のままのカキを網の上で焼き、殻が開いたら食べる。焼く際、平らな面をまず焼くことで、貝の汁を残しつつうまく開けることができる。
カキフライ
カキフライ
カツレツの手法によって、生のカキに小麦粉をまぶし、溶き卵をくぐらせてからパン粉をつけて、油で揚げる。
カキの天ぷら
中国広東省などでは、厚めのをつけた天ぷらが好まれている。
牡蠣の土手鍋
土鍋の内側の周囲全体に味噌を厚く塗った中に、カキ、ネギやその他の具材を入れて加熱し、味噌が溶け出したら食べる。広島県郷土料理
かきめし
カキの煮汁でご飯を炊き、炊き上がったところでカキを混ぜ数分ほど蒸らして作る。厚岸駅広島駅では駅弁にもなっている。
カキ鍋
季節の具材とともに煮る鍋料理の一つ。土手鍋とは異なる。
カキカレー
カレーライスの具にカキを使ったもので、広島などで供されたり、レトルト食品として売られている。
牡蠣シチュー
カキを使ったシチューで、アメリカやガンビアで食される。
お好み焼き
広島風お好み焼きの具材としてポピュラーである。また、お好み焼きの具にカキを使ったものでは岡山県備前市日生地区カキオコが有名。
カキの燻製
缶詰真空パックで流通している。
カキ入り卵焼き(蚵仔煎、オーアチエン)
台湾や中国福建省、広東省の一部で一般的な料理で、お好み焼きのように平たく焼いてから、甘い味のタレをかけて食べる。
カキ粥(台湾語:蚵仔粥、オーアティオッ)
台湾、広東省(特に汕頭市)、香港などで好まれる料理のひとつ。カキのむき身を米のに入れ、揚げたネギ、広東セロリコリアンダーなどを添えたもの。
カキスープ(台湾語:蚵仔湯、オーアトゥン)
台湾などではショウガの味を利かせたカキのすまし汁にも人気がある。
オイスター・カークパトリック(Oysters Kirkpatrick
チーズなどを使ったイギリスの料理。

調味料

カキ醤油
広島県厚岸町北海道)で水揚げされるカキの出汁を調合した醤油が製造される。
カキ油
カキ油(オイスターソース)は中華料理の重要な調味料。中国マカオのものが著名。
干しガキ
干しガキ(蠔豉蚝豉、ハオチー)は中国広東省で製造、使用されている調味用食材。カキのむき身を塩ゆでしてから日干しにしたもので、うま味を出すのに使われる。

薬用

貝殻はボレイといい、焼成してから粉砕した粉は『日本薬局方』に「ボレイ」および「ボレイ末」として記載の生薬である[28]。ボレイの歴史は古く陶弘景が『神農本草経』を修訂した『神農本草経集注』に収載されている。現在市販されているものはマガキの左殻が普通である。

「ボレイ末」は炭酸カルシウム (CaCO3) が主成分で、リン酸塩、他マグネシウム、アルミニウム、ケイ酸塩、酸化鉄などを含有する。処方例として、安中散桂枝加竜骨牡蛎湯柴胡加竜骨牡蛎湯などに使われる。また、農薬として、長期的に使用すると除草効果(雑草の根張りが悪くなる)があるとされる。薬理作用として、かき肉には血糖低下(カキ身エキス)、免疫増強作用(中性多糖類)、牡蛎制酸などの作用があるとされる。薬用以外には天然炭酸カルシウムとして、あるいは1000℃程度に焼成するとカキ灰などとも呼ばれる酸化カルシウム (CaO) が主成分のものとなるので、消しゴムの添加剤などの工業用や食品添加物砂糖精製用助剤などに利用することも行われている。

「ぼれい粉」の名前で類の餌として供給される。カキ殻は、鳥や卵殻に必要なカルシウム分が豊富である。

その他

海苔の養殖などにおいて、海苔の糸状体が蛎殻に付着することを利用し、採苗に貝殻が利用される場合もある。
海水の浄化
二枚貝は水中の懸濁態物質やプランクトンを取り込むため、カキを収穫することで、水中の栄養塩の回収につながる。特にカキは濾過量が他の2枚貝に比べて多い。アメリカのチェサピーク湾では、オイスターガーデニングと呼ばれる水質浄化活動も行われている。カキの擬糞はゴカイなどの底生生物の餌となり、底生生物は魚類の餌となる。しかし、過剰なカキ養殖などにより底生生物による分解能力を超えて擬糞が発生すると、低層が貧酸素化し、底泥もヘドロ化することがある。
胡粉
日本画によく使われる白色の顔料。岩絵具の一つにも分類される。
肥料
粉砕された殻が「かき殻石灰」などの名前で有機石灰の一種として供給される。消石灰と異なり、作物に有効な微量元素を多く含んでいる[29][30]
屋根材
江戸時代の日本では、牡蠣殻で屋根を葺く牡蠣殻葺[31](牡蠣殻屋根[32])が行われていた。飛び火による延焼を防ぐ効果があり[31]瓦葺きの代用として江戸幕府も板葺きに牡蠣殻を葺くよう奨励していた[33]

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  30. ^ カキ殻(かきがら) 月刊 『近代農業』 農文協データベース
  31. ^ a b 精選版 日本国語大辞典『牡蠣殻葺』 - コトバンク
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  40. ^ 高田久美代、高辻英之、妹尾正登「麻痺性貝毒により毒化したマガキのろ過海水中での蓄養による減毒」『日本水産学会誌』第74巻第1号、公益社団法人日本水産学会、2008年1月15日、 78-80頁、 doi:10.2331/suisan.74.78NAID 110006595212
  41. ^ 清水晃、尾崎潤一郎、河野潤一ほか、魚介類および食肉からの黄色ブドウ球菌の分離と性状 食品と微生物 Vol.8 (1991-1992) No.3 P.135-141, doi:10.14840/jsfm1984.8.135
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  43. ^ a b 飲食物の安全性に関する細菌学的研究(第7報)-食用カキを対象として- (PDF) 東京家政学院大学紀要 第47号 p.1-10
  44. ^ 沸騰した湯で最低でも1 - 2分程度、約180度前後の油で4分以上揚げることで食中毒の危険性は大幅に軽減する。
  45. ^ 食品中のノロウイルスP13 (PDF) - 食品安全委員会サイト内
  46. ^ 食品中のノロウイルスP5 (PDF) - 食品安全委員会サイト内
  47. ^ ノロウイルスに関するQ&A”. 食中毒に関する情報. 厚生労働省 (2007年12月20日). 2008年12月30日閲覧。
  48. ^ 平成27年漁業・養殖業生産統計(概数値) 農林水産省
  49. ^ 海面漁業生産統計調査 長期累年 総務省統計局
  50. ^ 生かきの取扱いと届出制度”. 百貝万魚 東京市場の水産物安全情報. 東京都市場衛生検査所. 2008年12月30日閲覧。
  51. ^ 小曽戸洋「『日本薬局方』(15改正)収載漢薬の来源」『生薬学雑誌』第61巻第2号、2007年、 p.p.76、 ISSN 00374377NAID 40015616633
  52. ^ サザエであれば「ふんどし」と呼ばれる部分が相当する
  53. ^ 緑色をしたカキもあるがこれは餌の違いによるもので、あまり一般的ではない
  54. ^ 宮原桂 『漢方ポケット図鑑』源草社、2008年、194頁。ISBN 4-906668-62-3 





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