アンナ・ボレーナ あらすじ

アンナ・ボレーナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/29 14:59 UTC 版)

あらすじ

  • 時:1536年
  • 場所[9]:ロンドン及びウィンザー城、そしてロンドン塔
  • 第1幕第1場:夜、ウィンザー城の王妃の居室
    宮廷の人々が、国王エンリーコがすでに王妃アンナを見捨て、新たな女性に夢中になっていることを噂をしている(「王は来られたのか?」 Né venne il Re?)。そこへ、王妃が信頼する侍女であるジョヴァンナがやってくる。しかし、彼女こそ国王の新しい愛人である。自分を信頼する王妃を裏切っていくことに罪の意識をいだくジョヴァンナ(「王妃が私をお呼びになった」Ella di me sollecita)。そこへアンナが現れる。沈む気持ちを慰めるために、小姓であるスメトンに歌を所望する。ひそかに王妃を愛するスメトンは、その気持ちを託して歌う(「ああ、取繕わないで」 Deh non voler costringere)。しかし、王妃は耐えきれなくなりそれを止める。王の心変わりと王妃としての栄華のはかなさを悲しむアンナ(「ああ、この純真な若者は」Come, innocente giovane )。夜明け近くなり、もはや国王が来ないと悟った彼女は、眠りに就くために退場する。ジョヴァンナ以外の人々も王妃に付き添う。1人残るジョヴァンナの元に国王エンリーコがやってくる。王は、アンナと離婚しジョヴァンナを王妃に迎えようとしている。王妃になれば、この世の栄華を共に分かち合えると囁く国王(「余の持つすべての光は」Tutta in voi la luce mia)。それに対して、ジョヴァンナは、このような神に祝福されない関係を断ち切りたいと懇願する。王妃の元に戻るよう願うジョヴァンナに対しエンリーコは「アンナは余を裏切っていた」として、暗に婚姻の解消をほのめかす。王のたくらみを恐れるジョヴァンナだが、王を止めることはできない。
  • 第1幕第2場:昼。ウィンザー城内の庭園
    別々の方向から、ペルシーとアンナの弟ロシュフォールが登場する。ペルシーは、アンナのかつての恋人であったために、国王より追放され、亡命生活を送っていた。しかし、今度赦免されることになり、ウィンザー城へやってきたのだ。王がアンナから心変わりをしたことを噂で聞いたペルシーは、かつての恋人の身を案じる。彼は、まだアンナを愛し続けていることをロシュフォールに告白する(「彼女を失ったあの日から」Da quel dì che, lei perduta)。ロシュフォールは、そんな親友の身を案じる。狩りが始まる音が聞こえ、国王、そして王妃がやってくる。国王は、ペルシーに今度の赦免は王妃のとりなしであると囁く。喜ぶペルシーだが、国王の表情を見たアンナや宮廷の人々は国王が一体何を企んでいるのかと、不安がる(「私は感じた、この手の上を」Io sentii sulla mia mano)。国王は、武官のエルヴェイに王妃やペルシー達を監視するよう、命じて狩りへ出発する。
  • 第1幕第3場:ウィンザー城内のアンナの私室へ通じる控えの間
    アンナの小姓スメトンは、密かに盗み出したアンナの肖像画を見つめ、アンナへの思いを歌う(「ああ、恍惚の余り Ah, parea che per incanto」 )。スメトンは、盗んだ肖像画を返すつもりで、ここへ来ていた。しかし、人が来る気配がするので、カーテンの後ろに隠れる。そこへ、アンナとロシュフォールがやってくる。ロシュフォールは、アンナにペルシーに会うよう頼み込む。最初拒否したアンナだが、弟の頼みを断れず会うことにする。ペルシーは、アンナへの愛を告白する(「国王が君を憎んでも、私は君を今でも愛している」S'ei t'abborre, io t'amo ancora)。二度と会わないと拒むアンナに、ペルシーは剣を抜いて自殺しようとする。驚いたスメトンがカーテンから現れる。あまりのことに気絶するアンナ。そこへ、国王の登場が告げられ一同は恐怖する。エンリーコがエルヴェイと廷臣たちを連れて現れる(「皆、黙っておるのか、震えているのかTace ognuno, è ognun tremante」) 。無実を訴えるアンナだったが、国王は「言いたいことは判事の前でするがよい」と冷酷に語り、衝撃を受けるアンナやほかの人々の逮捕を命じる。
  • 第2幕第1場:ロンドン。アンナが軟禁されている部屋へと続く控えの間
    アンナの女官たちが、嘆いている(「ああ、どこに行ってしまったのか」Oh! dove mai ne andarono le tsurbe adulatrici)。裁判を控え、神に祈るアンナの所へジョヴァンナが現れる。ジョヴァンナは、アンナに罪を自白すれば、王はアンナと離婚し命は助かります、と言う。しかし、アンナは名誉を失ってまで助かりたくはないという。ジョヴァンナは、「エンリーコの愛で玉座が約束されている哀れな女のためにも、それを薦める」と語る。怒るアンナは、その女に天罰をと呪いの言葉を浴びせる(「神がその者の頭上に」 Sul suo capo aggravi un Dio )。アンナの激しい怒りに、ついにジョヴァンナは自分こそ、その女であると告白する。信頼していたジョヴァンナに裏切られたと知ったアンナは、怒りをぶつける。しかし、ジョヴァンナの「国王を愛したことを今や恥じている。私の愛は拷問です」と告白するのを聞き、「お前に罪は無い。悪いのはお前にそのような愛の炎を燃やした人にある」と語り、慈悲を与え、退出する。
  • 第2幕第2場:アンナへの裁判が行われている法廷へと続く控えの間
    裁判の成り行きを宮廷の人々が見守っている(「「どうなった?裁判官の前に」Ebben? Dinanzi ai giudici)。人々は、スメトンが王妃との姦通を告白させられたと語り、この事件は国王の企みであり、結論はすでに用意されているのだと歌う。国王とエルヴェイが現れ、スメトンが上手く自白したと語る。そこへアンナとペルシーが衛兵に囲まれ、やってくる。アンナは、国王へ「王族としての名誉のために、法廷でさらし者にしないでくれ」と懇願する。しかし、エンリーコは聞き入れない。それどころか、スメトンと姦通を行ったではないかと侮辱する。あまりのことに怒る彼女は、「陛下こそ、スメトンを甘言に乗せて偽証をさせたのではないか」と反論する。ペルシーは、アンナを救うためにアンナと自分はすでに結婚しており、王との結婚は無効であると訴える。むろん、国王は聞く耳を持たず2人を引き立てるよう衛兵に命じる。ジョヴァンナが現れ、国王にアンナの赦免を願う(「このような手に負えぬ炎はPer questa fiamma indomita」)。王は、ジョヴァンナに「王妃の座はお前のもの」と求婚するが、ジョヴァンナは拒む。そこへエルヴェイが判決を持ってやってくる。アンナは死罪、そして関係した人間もすべて連座することになる。アンナの赦免を求めるジョヴァンナだが、国王は聞き入れず退場する。
  • 第2幕第3場:ロンドン塔
    衛兵に付き添われ、ペルシーとロシュフォールがやってくる。そこへエルヴェイが現れ、国王が2人を赦免すると伝える。しかし、アンナが処刑されると知ったペルシーは、「罪のない彼女が死に、罪ある私が生きることを望むほど卑劣な男だと思うのか!」と叫び、赦免を拒否する。ペルシーは、君だけでも助かるべきだとロシュフォールにすすめる(「君は生きるのだ、私はそれを望む Vivi tu, te ne scongiuro」)。しかし、ロシュフォールも死を選び、2人は衛兵に連行される。一方、アンナの牢獄では侍女たちがアンナがショックのあまり錯乱してしまったことを嘆いている(「一体誰が直視できよう」Chi può vederla a ciglio asciutto」)。そこへ錯乱したアンナが現れる。錯乱した状態で過去を振り返り、歌う(狂乱の場「あなたたちは、泣いているの?」Piangete voi? -「あの場所に連れて行って」Al dolce guidami)。人々が嘆き悲しんでいると、エルヴェイと衛兵たちがやってくる。アンナは正気を取り戻し、「何という時に正気に戻ったのだ!」と嘆く。エルヴェイ達によって、ロシュフォールとペルシー、そしてスメトンが連行されてくる。スメトンは、自分が国王の甘言に乗り、王妃と姦通したことを告白する。ペルシーとロシュフォールは怒る。しかし、アンナは「スメトン、ハープを引かないの?」と支離滅裂なことを語り、再び狂気に陥る。そこへ、祝砲や鐘の打ち鳴らす音が聞こえる。それを聞いて、正気に戻ったアンナは「あの音は何のためか」と聞く。それは、ジョヴァンナの戴冠を祝福するためのものである。それを聞いたアンナは、エンリーコとジョヴァンナを呪い(「邪悪な夫婦よ」 Coppia iniqua)、卒倒する。スメトン、ペルシー、ロシュフォールらを獄吏たちが刑場に引き出そうとする中、幕が降りる。

  1. ^ 河原(2006)、目次
  2. ^ 河原(2006年)では「兄」と表記。ただし、実際のジョージ・ブーリンはアンより遅く生まれている可能性が濃厚であるため、兄ではなく弟と表記した。
  3. ^ a b Weinstock 1963, pp. 73 - 75
  4. ^ Osborne 1994, pp. 194 - 197
  5. ^ ケスティング【2003】p362 L.9~12
  6. ^ Scott 1976, p. 21
  7. ^ http://operabase.com/oplist.cgi?id=none&lang=en&is=Anna+Bolena&by=&loc=&stype=abs&sd=1&sm=1&sy=2009&etype=abs&ed=&em=&ey= Performances on operabase.com
  8. ^ 楽曲の日本語訳は、河原廣之(2006)p1~34を参照
  9. ^ Osborne 1994, pp. 194 - 197
  10. ^ Source for recording information: Recording(s) of Anna Bolena on operadis-opera-discography.org.uk





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