いじめ 対策

いじめ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/27 09:47 UTC 版)

対策

積極的関与

スイスの心理療法士ヴァルター・ミンダーによれば、いじめは被害者の努力で解決することは稀であり、教師や親の積極的な関与が重要としている[45]。また、教師・家族・友人らによる支援がストレッサー(ストレス原因)を軽減することも分かっており[6]、周囲の支援がいじめを抑止する効果がある。

内藤もいじめ対策として、「学級制度の解体」や「警察の介入」を挙げた[114]

また、いじめ予防・防止プログラムの開発と全国的な実施も非常に重要である。スウェーデンの研究者ダン・オルヴェウスはオルヴェウスいじめ防止プログラム(OBBP)を作った[115]。そして、このプログラムが実施された小中学校において、導入後2年間でいじめが半分またはそれ以下に激減したと報告されている[116]。さらに大きな効果が確認されているのが、社会学や心理学などの知見に基づいてトゥルク大学で開発され、フィンランドの全国90%以上の小中学校で実施されているKiVaプログラム[117]であり、その効果は大規模なランダム化比較試験にて実証されている[118]。大坪 (2018) はKiVaプログラムについて、「国を挙げていじめ撲滅に取り組み、その効果的と考えられている教育プログラムが広く認知され信頼を得ている」と述べている[119]。さらに、北川・小塩・股村・佐々木・東郷 (2013) は、「現在の日本では、いじめ対策は基本的に学校や地域で対策を講じることとされ、どのようにするかは各学校に任されているのが現状である。KiVaプログラムのように効果の実証を伴ったいじめ対策プログラムを検討・開発し、全国に広めていくことがわが国でも必要と考えられる」と主張している[118]

なお近年、LINE (アプリケーション)TwitterなどのSNS、インターネット等で行われるネットいじめも深刻な問題となっていることから、ネットいじめの予防・防止プログラムの開発と全国的実施も急務として強く求められており、ある研究では実際にプログラム開発が行われている[120]

四辻 (2017) も、「統計的効果検証」の確認された実践から構成され、「特別活動」「総合的な学習(探求)の時間」「道徳」の時間などを活用して実施でき、年間を通して継続的に行うことのできる、「いじめ予防・防止プログラム」を開発し、日本の教育現場に広く普及させていくことの必要性を示している[121]。また、松尾 (2002) は、海外で開発されたプログラム、日本で開発されたプログラム、いじめの基礎研究をうまく融合させれば、より良いプログラムを開発できると主張している[122]

いじめの発見

平成19年文部科学省調査によれば、いじめが発見されたきっかけは、学校の教職員が発見したのが50.3%、本人や家族の訴えなど教職員以外がきっかけのものは49.7%であった[17]

教職員が発見した方法としては「アンケート調査など学校の取組により発見」は(24.4%。きっかけ全体に対する割合。以下同様)、「学級担任が発見」(19.8%)が多く、教職員以外のものでは、「本人からの訴え」(24.6%)、保護者(16.3%)、本人以外の児童生徒(5.1%)の順である[17]

全体の大部分を占める非暴力的ないじめ(いたずらやふざけ、からかいや悪口、デマ、仲間外れや無視など。SNS上で行われるものも含まれる[123][124][125])を早期に発見し、早期対応へとつなげていく必要があり、そのためには教職員・児童生徒全員が「相手が嫌がることがすべていじめとなる」という認識を共有すること、教職員全員が児童生徒の発するわずかなサインも見逃さず非暴力的ないじめにしっかりと気づくことが重要である[123][126]

また同時に、早期発見・早期対応のために、いじめに気づいたりいじめを受けたりした児童生徒や保護者が匿名でそのいじめについて報告するためのウェブサイトや目安箱を開設・設置すること[127][128]や、児童生徒にいじめ被害時および発見時の教師への報告を奨励するとともに効果的な対応を行う体制を整えておくこと[129]、定期的かつ頻繁に(少なくとも1学期に1回、いじめが疑われる場合は即時)児童生徒が安心して真実を回答できる方法でアンケート調査を行うこと[128]や、休み時間や給食・清掃時間などに孤立したりからかわれたりしていないかチェックすること[130]、人間関係に関して深く掘り下げた面接を行うこと[131]などが大切である。

監視カメラの設置

イギリスでは、いじめやその他の問題を把握するため、校内に監視カメラを設置する学校もある。監視カメラを設置している学校は9割に上り、保護者の中には、トイレ更衣室への設置も容認する団体もある[132]

日本でも附属池田小事件の発生を受けて平成14年11月の「学校施設の安全管理に関する調査研究協力者会議」が学校への防犯監視システムの推進を提言した[133]

教材

安藤美華代がいじめを予防するための心理教育プログラム『サクセスフル・セルフ』小学校版および中学校版を用いた授業を行うことで、いじめを予防する効果が統計学的に有意に証明されたことを示している[134]

インターネット規制

インターネットでのいじめを防ぐため、2014年現在、イギリスの1000を超える学校では、いじめに繋がるスラングや暴力的発言を監視するソフトウェアを導入している[35]

保険

韓国では2014年、「いじめ保険」の販売を開始した[112]

復讐代行

韓国では被害者の父母や親戚が組織暴力団員を雇って、加害者を暴行したり、脅かす復讐代行が流行している。加害者が警察や教師より、組織暴力団を恐れているため、効果が大変よいという。

代替

学校を転校し、フリースクールに通ったり、スクールカウンセラーを設置することなども対策となる。

ピンク・シャツ・デー

2007年にカナダの高校生2人から始まったいじめ反対運動「ピンクシャツデー」がカナダ全土に定着、2010年時点で75ヵ国が参加している[135] [136] [137] [138] [139]。ピンクシャツ・デーとは、2007年、カナダ・ノーバ・スコシア州の学校で、9年生(中学3年生)の男子学生がピンクのポロシャツを着て登校し、いじめられる。それを知った12年生(高校3年生)男子2人がその日の内に50枚のピンクのシャツなどを購入、メールや掲示板で友人知人などに呼びかける。翌朝、2人は50着を呼びかけた人に配って着てもらうが、この日に呼びかけ以上の学生がピンクの服で登校、学校がピンクに染まりいじめがなくなる。以降、毎年2月最終水曜が学校や職場にピンクを身につけて行くピンクシャツデーとしてカナダ全土に定着、アメリカイギリスなど世界各国へ広まった。

日本では、自身の過酷な被害体験・克服体験の作品化で中高生の支持を集めて小説家となった中園直樹が普及させた[140]

ケア

悪辣かつ長期化したいじめの場合、被害者の心の傷(心的外傷)は深く、性格そのものが変容する場合がある。深刻な心理的・肉体的・性的虐待を受けたあとでは、いじめそのものが解消したあとでも、本人のみではケアが困難となる。その場合には、精神科医カウンセラーに相談し、丁寧な治療を受けることが大切である(治療法は、「心的外傷後ストレス障害 (PTSD)#治療」・「心的外傷#治療」を参照」)。

また、いじめ被害が原因で社交不安障害が発症することもあり[141]、その場合も適切な治療・ケアを行い本人をサポートする(治療法は、「社交不安障害#治療」を参照)。

防止法

日本では教育再生会議の第一次報告に関連して、いじめを繰り返す児童・生徒に対する出席停止措置などの現在の法律で出来ることは教育委員会に通知するように、2007年1月22日、安倍晋三首相が伊吹文明文部科学相に指示した。2011年の大津市中2いじめ自殺事件を受けて、2013年にはいじめ防止対策推進法でいじめの定義と学校側の義務が定められた。このほか、いじめ被害者は人権侵害等については日本国憲法(権利の回復)、刑事事件刑法(刑事訴追)、民事事件は民法などで損害賠償請求などの法規定によって保護される。なお、少年犯罪の凶悪化を受けて少年法改正がすすめられている。

アメリカ合衆国では2011年、47州でいじめ禁止法(いじめ防止法、Anti Bullying Act)が成立している[55]。中学生男子への追跡調査では、加害者の60%が、24歳までに何らかの犯罪で有罪宣告を受けている[142]

スウェーデンでは教育法で、学校にいじめ対策の立案が義務化されている。

相談機関

いじめ問題に取り組む相談機関がある。相談窓口としては、教育情報ナショナルセンターのいじめ問題相談機関情報いみめ問題学校・地域取り組み情報や、文部科学省いじめの相談窓口厚生労働省いじめ相談窓口法務省子どもの人権110番日本弁護士連合会子どもの人権に関する相談窓口などがある。

また、NPO、被害者の会などに相談することも対策となる。




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