臨床病理
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/19 23:30 UTC 版)
臨床病理(りんしょうびょうり)は用法に揺れのある用語であり、歴史的には臨床検査ないし臨床検査医学の意味で用いられてきたが、 文脈によっては病理診断の意味で使用される場合もある。
概説
臨床検査の意味での臨床病理という用語は英語の"clinical pathology"に由来する。 米国では、歴史的な事情から、臨床医学としての病理学である"pathology"は、"anatomic pathology"(直訳すると「解剖病理」)と "clinical pathology"(直訳すると「臨床病理」)の2つの主要な領域に大きく区分されている。 "Anatomic pathology"(「解剖病理」)は日本の病理診断学に概ね対応する。 "Clinical pathology"(「臨床病理」)は検体検査を主に扱う領域であり、日本の臨床検査医学に概ね対応する。 この区分は専門医制度や教育体系にも反映されている[1][2]。
第二次大戦後、米国から日本に臨床検査医学が導入された当時は、 米国の"clinical pathology"の直訳により「臨床病理」と呼ぶことがよくあり、 臨床検査に関する学会[注 1]や大学の講座[注 2]の名称も当初は「臨床病理」を冠していた。 しかし、検査の意味での「臨床病理」は、「病理」の語を含むため病理診断と混同されやすいことが指摘され、 2000年には日本臨床病理学会も日本臨床検査学会に改称している。 近年は、検査については「臨床検査」が一般に使用されており、 検査の意味で「臨床病理」を使用する例は限られている。 また、「臨床病理」は、基礎医学としての病理学に対する、 患者検体の診断を行う臨床医学としての病理学(病理診断学)という意味で用いられることがある [3][4][5][6][7]。
このような用語の変遷や用法の揺れがあるため、歴史的な文献を参照したり、英語文献の"clinical pathology"を解釈・翻訳する場合は、混同に注意を要する。
用例
「臨床病理」の意味するものは文脈によって異なるため、解釈には注意を要する。
臨床検査という意味での「臨床病理」用例
以下の例の「臨床病理」は臨床検査を意味する。
- 日本臨床病理学会 - 日本臨床検査医学会の旧称(2000年に改称)[8]。
- 臨床病理 - 日本臨床病理学会が機関誌として発行していた学術雑誌(ISSN: 0047-1860)。日本臨床検査医学会への改称後、2021年より雑誌名も「日本臨床検査医学会誌」に変更となった[9]。
- 臨床病理レビュー - 日本臨床検査医学会の臨床病理刊行会が2023年まで発行していた臨床検査の学術雑誌(ISSN: 1345-9236)[10]。
以下の獣医学領域の「臨床病理」もヒトの臨床検査に対応する概念である。
- 日本獣医臨床病理学会 - 動物の臨床病理学(疾病の診断法、疾病の病態の評価法、治療効果の評価法など)を扱う[11]。
- 東京大学 大学院農学生命科学研究科 獣医臨床病理学研究室 - 動物の臨床検査に関連した研究を多く実施[12]。
- 「伴侶動物の臨床病理学 第3版」 - 緑書房から発行されている伴侶動物の臨床検査に関する学術書(ISBN:978-4-89531-377-3、2019年発行)[13]。
病理診断関連の「臨床病理」用例
「臨床病理学」/「臨床病理科」の名称の意味は施設によって異なるが、 「病理診断学」/「病理診断科」を意味したり、業務内容に病理診断を含む場合がある。以下、例をあげる。
- 新潟大学医学部 臨床病理学分野 - 基礎医学としての病理学と臨床医学としての病理診断学を担当している[15]。
- 京都府立医科大学大学院医学研究科 臨床病理学 - 主に病理診断学を担当している[16]。
- 昭和医科大学医学部 臨床病理診断学講座 - 基礎医学としての病理学と臨床医学としての病理診断学に加え、臨床検査医学をも担当している[17]。
- 市立八幡浜総合病院臨床病理科 - 臨床検査と病理・細胞検査を実施している[18]。
関連用語
臨床病理検討会
臨床病理検討会(臨床病理カンファレンスとも。clinico-pathological conference : CPC)は、正確には「臨床病理」ではなく「臨床」と「病理」の複合語である。病院で死亡し病理解剖が行われた患者について、臨床医と病理医などが詳細な病態および死因の解明に向けて検討を行う症例検討会を意味する[19]。
脚注
注釈
- ^ 1951年に発足した臨床病理懇談会が改組されて1955年に日本臨床病理学会となった。
- ^ 1951年に日本で初めて山口県立医科大学に臨床病理学の講座が設置され、次いで、1961年に順天堂大学医学部臨床病理学教室が発足した。
- ^ 「獣医臨床病理学」のウェブサイトの説明では、「検査診断学,病態検査学などとよばれている獣医臨床病理学は,臨床検査を通じて種々の方法によって得られた生体の情報を基盤にし,1.診断に対する客観的根拠の明示,2.病態の的確な把握,3.障害の程度の確認,4.治療効果の的確な判断,5.予後の判定などをする」としている
典拠
- ^ 真鍋俊明 (2020). “臨床検査と病理検査(診断)の統合はなされ得るか - CAP の歴史と現状から見たその方向性-”. 臨床病理 68 (5).
- ^ 照屋純 (2013). “アメリカにおける臨床病理の役割”. モダンメディア 59 (5): 125-129.
- ^ “医学書院/週刊医学界新聞 【「日本臨床病理学会」から「日本臨床検査医学会」へ(櫻林郁之介)】 (第2417号 2000年12月18日)”. 2024年2月17日閲覧。
- ^ 小酒井望 (1983). “臨床病理学30年”. 順天堂医学 29 (2): 161–165. doi:10.14789/pjmj.29.161.
- ^ 宮井 潔 (2010). “わが国における臨床検査医学の歩みと展望”. 生物試料分析 33: 93-102.
- ^ 河合忠 (2002). “1.臨床検査”. 日本内科学会雑誌 91 (11): 3164–3170. doi:10.2169/naika.91.3164.
- ^ 林康之 (1991). “第一世代の臨床病理学”. 順天堂医学 37 (2): 172–182. doi:10.14789/pjmj.37.172.
- ^ “沿革”. 日本臨床検査医学会. 2026年3月14日閲覧。
- ^ “国内誌(日本臨床検査医学会誌)”. 日本臨床検査医学会. 2026年3月14日閲覧。
- ^ “臨床病理レビュー”. CiNii. 2026年3月20日閲覧。
- ^ “一般社団法人 日本獣医臨床病理学会”. 日本獣医臨床病理学会. 2026年3月14日閲覧。
- ^ “獣医臨床病理学研究室”. 東京大学. 2026年3月14日閲覧。
- ^ “伴侶動物の臨床病理学 第3版”. 株式会社 緑書房. 2026年3月14日閲覧。
- ^ “獣医臨床病理学”. 近代出版. 2026年3月19日閲覧。
- ^ “新潟大学医学部臨床病理学分野”. 新潟大学医学部. 2026年3月14日閲覧。
- ^ “京都府立医科大学大学院医学研究科 臨床病理学/京都府立医科大学附属病院 病院病理部・病理診断科”. 京都府立医科大学. 2026年3月14日閲覧。
- ^ “臨床病理診断学講座”. 昭和医科大学医学部. 2026年3月14日閲覧。
- ^ “市立八幡浜総合病院臨床病理科”. 市立八幡浜総合病院. 2026年3月17日閲覧。
- ^ “CPCとは”. 九州大学大学院 医学研究院 形態機能病理学 病理剖検部門. 2026年3月14日閲覧。
関連項目
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