ボイスレトリーバーとは? わかりやすく解説

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ボイスレトリーバー

(Voice Retriever から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/11 00:58 UTC 版)

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マウスピース型人工喉頭VoiceRet

ボイスレトリーバー(Voice Retriever)は、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)で開発された、口腔内に装着するマウスピース型人工喉頭である[1][2]。喉頭全摘出、気管切開、神経難病などにより発声が困難となった人々に対し、口腔内で人工的に生成した音を口唇・舌の動きで変換することで発話を可能にする代用発声デバイスとして位置づけられる。

本デバイスは 株式会社東京医歯学総合研究所 により「VoiceRet(ボイスレット)」として製品化され、2025年4月に発売された[1]

概要

ボイスレトリーバーは、口腔内に装着するマウスピースと外部コントローラーで構成される人工喉頭である。従来の電気式人工喉頭(EL)のように頸部にデバイスを押し当てる必要がなく、手指の動作が困難な利用者でも使用できる点が特徴とされる[1]

特徴

  • 口腔内に装着するマウスピース型人工喉頭
  • 口唇・舌の動きにより音声を変化させ、装着初日から会話が可能とされる[1]
  • 従来の電気式人工喉頭より自然で聞き取りやすい音声が得られるとされる[1]
  • 手指の使用が困難な利用者でも使用可能[2]
  • 歯科医師による歯型採取に基づくオーダーメイドマウスピース[1]

適応

開発元は以下の条件を適応として挙げている[1]

  1. 喉頭全摘、人工呼吸器装着、その他疾患により発声ができない者
  2. 口唇・舌などの口腔器官の動きに明らかな障害がない者
  3. 口が二横指(約3cm)以上開く者

仕組み

ボイスレトリーバーは、口腔内で人工的に生成した音を共鳴させ、口唇・舌の動きで言語音に変換する方式を採用している[2]。従来の電気式人工喉頭の課題であった機械的な音質や手で保持する必要性を軽減することを目的として開発された。

開発の経緯

開発は東京医科歯科大学リハビリテーション学分野( 戸原玄 教授ら)によって進められた[2]。声帯を失った患者や神経難病患者の臨床現場での課題を背景に、より自然で使いやすい人工喉頭の実現を目指して研究が行われた。

開発チームは、エアロスミス の楽曲「Sweet Emotion」で使用されているトーキング・モジュレーター(Talk Box)の仕組みから着想を得たとされる。Talk Box は演奏者の口腔内で音を変調させる装置であり、口の形状や舌の動きによって音色が変化する。この原理が、口腔内で人工的に生成した音を言語音へ変換するボイスレトリーバーの構造に応用された。

NPO法人日喉連や患者会との協力のもと、試作品の評価や意見交換が行われ、改良が重ねられてきた[2]。また、クラウドファンディング READYFOR においては、569人からの支援を受け、総額20,418,000円(目標金額3,000,000円)を達成した[3]。この資金は試作機の改良、臨床評価、量産化準備などに活用された。

研究

ボイスレトリーバーに関する学術研究は、山田大志らによって報告されている。2024年には、口腔内に装着する新しい発声補助デバイスの開発と評価に関する論文が『Laryngoscope Investigative Otolaryngology』誌に掲載された[4]

論文のアブストラクト冒頭では、「This study aimed to develop and evaluate a new intraoral voice assist device called the Voice Retriever...」と述べられている。

研究では、健常者および喉頭摘出者を対象に、音声明瞭度、自然さ、使用の容易さを評価した。その結果、従来の電気式人工喉頭と比較して自然で聞き取りやすい音声が得られ、装着初日から会話が可能であることが示された。著者らは、ボイスレトリーバーが新しい代用発声デバイスとして臨床的に有望であると結論づけている。

製品化

株式会社東京医歯学総合研究所 により、製品名「VoiceRet(ボイスレット)」として2025年4月に発売された[1]

日本オープンイノベーション大賞内閣総理大臣賞受賞

2026年2月、VoiceRetの開発プロジェクトは「『もう一度、話す喜びを!』ニッチだがアンメットニーズに対峙した臨床家のオープンイノベーションの挑戦」と題し、日本オープンイノベーション大賞内閣総理大臣賞を受賞した[5]

主な仕様

  • コントローラー:82×35×22mm、45g
  • マウスピース:オーダーメイド制作
  • 使用方法:スマートフォンアプリ(iPhone対応)、またはコントローラー単体[1]

課題と改良

研究段階および開発元の情報では、以下の課題が指摘されている[2]

  • 口角からケーブルが見える
  • 口腔内装着による違和感
  • 抑揚が少なく平坦な音声になりやすい

これに対し、抑揚を付けるための改良として、外部デバイスとの連携などが試みられている[2]

関連項目

  • 人工喉頭
  • 電気式人工喉頭
  • 代用発声
  • 喉頭全摘出

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i マウスピース型人工喉頭 Voice Retriever のご案内”. 株式会社東京医歯学総合研究所. 2026年1月15日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g マウスピース型人工喉頭ボイス・レトリーバーの開発”. NPO法人日喉連. 2026年1月15日閲覧。
  3. ^ 声を失った人に「話せる喜び」を届けたい。マウスピース型人工喉頭の開発”. READYFOR. 2026年1月15日閲覧。
  4. ^ Yamada, Taishi; Yamaguchi, Kohei; Horike, Ayane; Takahashi, Kohei; Amornsuradech, Sirinthip; Nakagawa, Kazuharu; Yoshimi, Kanako; Tohara, Haruka (2024). “Development and evaluation of a new intraoral voice assist device called the voice retriever”. Laryngoscope Investigative Otolaryngology 9 (1): e1204. doi:10.1002/lio2.1204. PMID 38362198. 
  5. ^ 第8回日本オープンイノベーション大賞について”. 内閣府. 2026年2月11日閲覧。

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