AWS Direct Connect
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/09/07 13:48 UTC 版)
| URL | aws |
|---|---|
| タイプ | 専用線接続サービス |
| 運営者 | Amazon.com |
| 営利性 | 営利 |
| 登録 | 必要 |
| 開始 | 2011年8月4日 |
AWS Direct Connect(エーダブリューエス ダイレクト コネクト)は、Amazon.comがAmazon Web Services(AWS)の一部として提供する、専用線によるネットワーク接続サービスである。利用者のデータセンターやオフィスとAWSのネットワークを専用の回線で直接つなぎ、インターネットを経由せずにAWSのサービスを利用できるようにする[1]。2011年8月4日に提供が始まった[2][3]。
概要
企業が自社の設備とAWSを結ぶ方法には、大きく2つある。1つはインターネットを経由してVPN(暗号化した通信路)を張る方法で、もう1つが本サービスのように専用の回線を使う方法である。AWSは、VPN接続はすぐに設定できて帯域の要件が中程度以下の場合に向くとしている。一方AWS Direct Connectは、インターネットを経由せず、社内ネットワークとAmazon Virtual Private Cloud(VPC)の間を専用のプライベートな接続で結ぶものだと説明している[4]。
接続は「Direct Connectロケーション」と呼ばれる中継拠点で行う。これはAWSが機器を置いているデータセンター(コロケーション施設)で、利用者は同じ施設内に自社の機器を置くか、通信事業者から施設までの回線を調達して接続する[5]。世界各地に設けられており、2021年12月時点で100か所を超える[6]。日本国内には2026年8月時点で東京、印西、大阪に計5か所ある[7]。
料金は、確保したポートを使用した時間に応じた「ポート時間」料金と、AWSから外へ出る方向の「アウトバウンドデータ転送」料金の2つで構成される[1]。AWS自体はクロスコネクト(施設内での物理的な配線)に追加料金を課さないが、施設の事業者は配線の作成に課金する[4]。
接続の種類
接続には「専用接続」と「ホスト接続」の2種類がある。
- 専用接続(dedicated connection)
- 利用者がAWSに直接申し込み、1本の物理ポートを丸ごと確保する方式。ポート速度は1 Gbps、10 Gbps、100 Gbps、400 Gbpsから選ぶ。申し込み後に速度を変えることはできず、変更するには新しい接続を作り直す必要がある。AWSは申し込みを受けるとLOA-CFA(Letter of Authorization and Connecting Facility Assignment)と呼ばれる認可書を発行し、利用者はこれをもとに施設の事業者へクロスコネクトを注文する[5]。
- ホスト接続(hosted connection)
- AWS Direct Connectパートナーと呼ばれる事業者から提供を受ける方式。AWSの管理コンソールから直接申し込むことはできず、パートナーが作成した接続を利用者が承諾して使う。速度は50 Mbpsから25 Gbpsまでの11段階から選べる。1 Gbps以上は所定の要件を満たしたパートナーのみが提供でき、25 Gbpsは100 Gbpsのポート速度に対応したロケーションに限られる。設定した最大速度を超えた通信は破棄される[8]。
仕組み
物理的な接続は、標準的なイーサネットのシングルモード光ファイバーで行う。ケーブルの片端を利用者のルーターに、もう片端をDirect Connectロケーションに置かれたAWSのルーターにつなぐ[1]。
1本の物理接続の上には、「仮想インターフェイス」(virtual interface、VIF)と呼ばれる論理的な通信路を作る。仮想インターフェイスは802.1QのVLANで区切られ、経路制御にはBorder Gateway Protocol(BGP)を用いる。IPv4とIPv6の双方に対応する[1]。
仮想インターフェイスには3つの種類がある。
- プライベート仮想インターフェイス
- プライベートIPアドレスを使ってAmazon VPCにアクセスするためのもの。1つのVPCに直接つなぐか、Direct Connectゲートウェイ(複数のリージョンやアカウントのVPCへの接続をまとめる仕組み・後述)を介して複数の仮想プライベートゲートウェイにつなぐ[1]。
- パブリック仮想インターフェイス
- Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)のように公開されたAWSサービスへ、AWSのパブリックIPアドレスを使ってアクセスするためのもの[1]。
- トランジット仮想インターフェイス
- Direct Connectゲートウェイに関連付けられたAWS Transit Gatewayにアクセスするためのもの。複数のアカウントやリージョンにまたがるTransit Gatewayをまとめて接続できる[1]。
主な機能
- リンク集約グループ(LAG)
- 同じロケーションの同じAWS機器で終端する複数の専用接続を、LACP(リンク集約制御プロトコル)で束ねて1つの論理インターフェイスとして扱う仕組み。設定はグループ内の全接続に適用されるため、管理する対象を減らせる。対象となる接続はすべて専用接続である必要がある[9]。
- Direct Connectゲートウェイ
- 複数のAWSリージョンにまたがるVPCへの接続を1つのゲートウェイで扱う機能。VPCごとにBGPセッションを張る必要がなくなる[10]。
- MACsec暗号化
- MACsec(IEEE 802.1AE)による回線区間の暗号化。専用の10 Gbpsおよび100 Gbps接続の一部のロケーションで利用できる[11]。
- SiteLink
- 利用者の拠点同士をDirect Connectのネットワークを経由して相互に接続する機能。オフィスやデータセンターをそれぞれDirect Connectロケーションにつないでおけば、拠点間の通信をロケーション間の最短経路で流せる。中国を除くすべての商用AWSリージョンで利用できる[6]。
- 監視
- 接続の稼働状態、送受信のビットレートやパケットレート、光ファイバーの光信号レベルなどがAmazon CloudWatchのメトリクスとして公開される[12]。DatadogやNew Relicなどのサードパーティーの監視サービスは、これらを取り込むインテグレーションを提供している[13][14]。
歴史
AWSは2011年8月4日にAWS Direct Connectを発表した。提供開始時のロケーションはエクイニクスが運営するバージニア州アッシュバーンのコロケーション施設の1か所だけで、接続できるのは米国東部(バージニア)リージョンであった。回線速度は1 Gbpsと10 Gbpsの2種類で、冗長化のために複数の接続を作ることもできた[2]。AWSは、続く数か月のうちにサンノゼ、ロサンゼルス、ロンドン、東京、シンガポールへ広げる計画を示していた[2][4]。
その後ロケーションは世界各地に広がり、AWSは2017年11月時点で本サービスがすべてのパブリックAWSリージョンで利用でき、接続できるロケーションは60か所を超えたとしている。同月にはリージョンをまたぐVPC接続をまとめるDirect Connectゲートウェイが追加された[10]。2019年10月には冗長構成の発注を支援するResiliency Toolkit(回復性ツールキット)が加わった[15]。2021年には、2月にネイティブの100 Gbps専用接続[16]、3月にMACsecによる暗号化[11]、12月に拠点間接続のSiteLink[6]が加わった。2024年7月にはネイティブの400 Gbps専用接続が一部のロケーションで提供された。AWSは、複数の100 Gbps回線をリンク集約グループで束ねて管理する手間を減らせるとし、機械学習や大規模言語モデルの訓練、自動運転の高度運転支援システムのように大規模なデータを転送する用途に有用だと説明している[17][18]。
関連項目
- AWS VPN - インターネット経由でAWSと拠点を結ぶサービス
- AWS Transit Gateway - 複数のVPCやオンプレミス網の接続を集約するサービス
- AWS PrivateLink - VPCから他のサービスへプライベートに接続する仕組み
- Amazon Virtual Private Cloud
- 専用線
脚注
- 1 2 3 4 5 6 7 “AWS Direct Connectとは”. AWS Direct Connect ユーザーガイド. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 Jeff Barr (2011年8月4日). “AWS Direct Connect” (英語). AWS News Blog. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- ↑ Timothy Prickett Morgan (2011年8月4日). “Amazon virtual private clouds go global” (英語). The Register. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 Richard Seroter (2011年8月15日). “Amazon Releases Services To Lure Enterprises to the Cloud” (英語). InfoQ. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 “専用 Direct Connect 接続”. AWS Direct Connect ユーザーガイド. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 3 “Introducing AWS Direct Connect SiteLink” (英語). Amazon Web Services (2021年12月1日). 2026年9月6日閲覧。
- ↑ “AWS Direct Connect ロケーションの検索”. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- ↑ “ホスト接続 Direct Connect”. AWS Direct Connect ユーザーガイド. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- ↑ “Direct Connect リンク集約グループ (LAGs)”. AWS Direct Connect ユーザーガイド. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 Jeff Barr (2017年11月1日). “New - AWS Direct Connect Gateway - Inter-Region VPC Access” (英語). AWS News Blog. Amazon Web Services. 2026年9月6日閲覧。
- 1 2 “AWS Direct Connect Announces MACsec Encryption for Dedicated 10Gbps and 100Gbps Connections at Select Locations” (英語). Amazon Web Services (2021年3月31日). 2026年9月6日閲覧。
- ↑ “Monitor with Amazon CloudWatch” (英語). AWS Direct Connect User Guide. Amazon Web Services. 2026年9月7日閲覧。
- ↑ “AWS Direct Connect” (英語). Datadog Docs. Datadog. 2026年9月7日閲覧。
- ↑ “AWS Direct Connect monitoring integration” (英語). New Relic Documentation. New Relic. 2026年9月7日閲覧。
- ↑ “AWS Direct Connect Announces Resiliency Toolkit to Help Customers Order Resilient Connectivity to AWS” (英語). Amazon Web Services (2019年10月7日). 2026年9月6日閲覧。
- ↑ “AWS Direct Connect Announces Native 100 Gbps Dedicated Connections at Select Locations” (英語). Amazon Web Services (2021年2月15日). 2026年9月6日閲覧。
- ↑ “AWS Direct Connect announces native 400 Gbps Dedicated Connections at select locations” (英語). Amazon Web Services (2024年7月1日). 2026年9月6日閲覧。
- ↑ 新野淳一 (2024年7月4日). “AWS Direct Connect、400Gpbsの専用回線に対応開始。大規模言語モデルのトレーニングや自動運転の高度支援システムなどにメリットと説明”. Publickey. 2026年9月6日閲覧。
外部リンク
- AWS Direct Connect(公式サイト・日本語)
- AWS Direct Connectユーザーガイド(日本語)
- AWS Direct Connectのページへのリンク