電気火管
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/05 08:03 UTC 版)
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電気火管(でんきかかん、英: electric primer)は、電流により点火玉や起爆薬(爆粉)を発火させる構造をもつ火管の一種で、主として火砲の装薬(発射薬)を所定のタイミングで点火するために用いられる[1]。撃針の打撃で発火する撃発火管や、摩擦で発火させる摩擦火管と並ぶ分類のひとつである[2]。

用語と位置づけ
火管は火砲弾薬の装薬に点火する装置であり、発火方式により撃発火管・電気火管・摩擦火管・撃発電気火管(複合)などに区分される[2]。電気火管は電気信号で作動する点が特徴で、同じく電気で作動して高性能爆薬を起爆する電気雷管(electric detonator)とは用途・機能が異なる(火管=装薬点火、雷管=爆薬起爆)[3]。
構造と作動原理
電気火管は、外部からの通電によってブリッジワイヤ(電橋)などの加熱素子を発熱させ、近接する点火薬(pyrogen)や微量の爆粉を発火させる。生じた火炎が点火トレーン(導火薬など)に伝播し、最終的に装薬を点火する[2]。このような電気式の点火原理は、一般に電気点火具(electric igniter)や電気作動式火工品(EED)の基本構成と共通する[4]。
種類
防衛省規格では、火管に以下の区分が示されている[1]。
- 薬きょう火管(case primer / artillery primer) – 薬きょう底部に取り付け、装薬の点火に用いる。
- 砲用火管(cannon/lock primer) – 分離装填弾で、閉鎖機内から挿入して装薬を点火する。
- 複合火管(combination primer) – 撃発と電気の2方式を備える。
- 試験火管(test primer) – 発砲(発射)回路の試験に用いる。
- 長火管(long primer) – 大容量装薬の点火性向上のため比較的長尺の管体をもつ。
特性
電気火管は電気信号による作動のため、撃発式に比べて引金操作から点火までの遅延を短縮しやすいとされる一方、作動の確実性・環境条件への配慮が必要になる旨の指摘もある[5]。評価は装置設計・運用条件に依存し、規格・試験によって性能が確認される。
用途
主として各種火砲の装薬点火に用いられる。薬きょう式弾薬では薬きょう火管、分離装填式では砲用火管が用いられる[1]。なお、映画特撮・自動車安全装置等で用いられるスクイブ(小型電気点火火工品)は、構造原理は近似するが、目的(破断・切断・ガス発生など)が異なる[6]。
規格・用語
外観の例
- 砲用火管(英:vent-sealing electric P tube)の例
-
P Mark VII 電気式Pチューブ(英海軍BL 4インチ砲(V・VI)用)。真鍮製管体・電橋・ガスシール機構を図示(1903年の図版)。
-
Mk VI ワイヤレス電気式Pチューブ(1914年)。通電経路と電橋(イリジウム–白金)・シール構造の説明付き。
関連項目
- 火管
- 撃発火管
- 摩擦火管
- 雷管
- 点火装置 (火工品)
- スクイブ
脚注
- ^ a b c d 防衛省 技術企画部規格課「[Y 0001D 弾薬用語]」改正票, pp. 3132–3139。
- ^ a b c 平凡社『改訂新版 世界大百科事典』「[[1]]」項(kotobank)。
- ^ 平凡社『世界大百科事典』「[[2]]」項(kotobank)。
- ^ 「[[3]]」の一般的説明、ならびに産業例として日本化薬「[[4]]」内のスクイブ作動図(参考)。
- ^ 「艦砲概説—弾火薬概説」ウェブ資料(電気火管の特性に関する記述)。[[5]]
- ^ ScienceDirect Topics, “Squibs – an overview”. [[6]]
- ^ JIS K 4800:2000「火薬用語」(規格抜粋のオンライン資料)[[7]]
参考文献
- 防衛省 技術企画部規格課「[Y 0001D 弾薬用語]」改正票。
- 平凡社『世界大百科事典』kotobank内「[[8]]」「[[9]]」各項。
- JIS K 4800:2000「火薬用語」(公開抄訳)。
- ScienceDirect Topics, “Squibs – an overview”. [[10]]
- 日本化薬「[[11]]」(スクイブ例、参考)。
- 電気火管のページへのリンク