自然さ (物理学)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/27 05:44 UTC 版)
物理学における自然さ(しぜんさ、英: naturalness)は、物理理論に現れる無次元量の自由パラメータや物理定数の比が「オーダー1」を取るべきで、自由パラメータは微調整されないという審美的な性質である。つまり、自然な理論であれば、パラメータ比は234000や0.000234ではなく、2.34のような値をとることになる。
納得の行く理論が「自然」でなければならないという要求は、1960年代頃に素粒子物理学で始まった。標準模型の非自然性と階層性問題、微調整、そして人間原理などの広い話題から生まれた基準である。しかしいくつかのパラメータが何桁も変化し、関係するモデルの現在の値に対して広範な「微調整」を必要とする標準模型など、現在の理論の弱点、または将来の発展の可能性を示唆する傾向がある。我々が現在認識しているこれらの一見正確な値が、人間原理などに基づいて偶然生じたのか、それとも素粒子物理学のモデルにはまだ含まれていない他の要因によって、これらが予想され十分に説明される、まだ開発されていないより進んだ理論から生じたのか、まだ明確になっていないことが問題である。
標準模型のような「微調整された」理論よりも「自然な」理論の方がパラメータが多い例も多いので、自然性の概念は必ずしもオッカムの剃刀と相容れない。物理学における自然性は微調整の問題と密接に関係しており、過去10年間、多くの科学者[1][2][3][4][5]が自然性の原理はベイズ統計の特定の応用であると主張していた。
素粒子物理学の歴史の中で、自然性の原理が正しい予測をしたのは、電子の自己エネルギー、パイ中間子の質量差、中間子の質量差の場合の3回である。[6]
概要
簡単な例を挙げよう。ある物理モデルが4つのパラメータを必要とし、それによって物理宇宙のある側面について非常に質の高い作業モデル、計算、予測を行うことができるとする。そのパラメータが値を持つことを実験によって発見したとする。
- 1.2
- 1.31
- 0.9 and
- 404,331,557,902,116,024,553,602,703,216.58 (roughly 4 x 1029).
どうしてこのような数値が出るのか、不思議に思うかもしれない。しかし、特に、3つの値が1に近く、4つ目の値が大きく異なる理論に興味を持つかもしれない。言い換えれば、最初の3つのパラメータと4つ目のパラメータの間に大きな不釣り合いがあるように見える。また、もしこれらの値が力の強さを表しており、ある力が他の力よりも非常に大きく、その効果という点で他の力と関連付けられるようにするには4×1029の係数が必要だとしたら、その力が出現したとき、我々の宇宙はどうしてそれほど正確にバランスが取れていたのだろうかと考えるかもしれない。現在の素粒子物理学では、いくつかのパラメータの差はこれよりはるかに大きいので、この疑問はさらに注目される。
一部の物理学者が示した答えの1つに、人間原理がある。もし宇宙が偶然に存在するようになり、おそらく膨大な数の他の宇宙が存在するか、存在したのだとしたら、物理学の実験ができる生命は、偶然に力のバランスが非常に取れた宇宙でのみ発生したことになる。力のバランスがとれていない宇宙では、この問題に対応できる生命は誕生しなかったはずである。もし人間のような生命体がそのような質問をするならば、それがどんなに稀なことであっても、力のバランスが取れた宇宙で生まれたに違いないといえる。
もう1つの答えは、おそらく物理学にはもっと深い理解があり、それを発見し理解すれば、これらのパラメータが本当に基本的なパラメータではないことが明らかになり、我々が発見した正確な値があるのは、それなりの理由があるからで、それらはすべて、それほどアンバランスではない他の基本的なパラメータから派生している、というものである。
導入
素粒子物理学において自然性の仮定とは、より詳細な説明が存在しない限り、必要な対称性を保存するEffective actionにおいて考えられるすべての項が自然な係数でこの作用に現れるはずであることを意味する。[7]
有効場の理論では、カットオフΛとは、理論が破綻するエネルギーまたは長さのスケールである。次元解析によって、自然な係数は以下の形式を取る。
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