シルトプロットとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > シルトプロットの意味・解説 

シルトプロット

(シルト回帰 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/04 08:07 UTC 版)

シルトプロット(Schild plot、シルドプロット)は、線型回帰(シルト回帰)を用いてアンタゴニスト薬理学効力(pA2値)を決定するためのグラフを用いた方法である[1]。名称はハインツ・オットー・シルトドイツ語版に因む。シルトプロットはアンタゴニストのモル濃度の対数(log [Antagonist])とアンタゴニストの阻害作用(log (r-1) で表わされる)との間の線型関係を描写する。

シルトプロットを用いたpA2値の決定: アンタゴニスト濃度が上昇すると用量反応曲線は右側にシフトし、アゴニストのpEC50値は減少する。この右シフトから、濃度比rが計算される。この値をlog (r-1) に変換しアンタゴンストのモル濃度の対数に対してプロットし、pA2値を決定する。

解釈

pA2値の決定以外にもシルトプロットからは拮抗作用の定性的な特徴に関する情報が得られる。回帰関数の線型性や回帰線の傾きが1であることは、競合的拮抗作用が存在することのよい判断材料である。これらの条件下では、pA2値はアンタゴニストの親和性定数 pKBに一致する。

線型性からのずれ

回帰線が非線型的挙動を示す場合、その他全ての条件(特にアンタゴニストによって引き起こされるアゴニストの用量反応曲線の平衡右側シフト)が満たされるとしても、もはや純粋な競合的拮抗作用が存在するということはできない。2つ以上の線型部分が存在する場合は、受容体にアゴニストとアンタゴニストが競合する2つ以上の結合部位が存在すること示す。

傾き

回帰線が線型に近いとしても、回帰関数の傾きが1よりも大きい時は、アンタゴニストの作用が不均衡に減少していることを意味し、実験条件下でアンタゴニストの不活性化あるいは取り込みが起こっていることが示唆される。この現象はアンタゴニストのインキュベーション時間が不十分な場合にも起こる。

シルトプロットの傾きが1よりも小さくなる場合は頻繁に見られるが、これはアゴニストの不活性化あるいは取り込みに起因する。アンタゴニストとアゴニストに対する親和性が異なる複数の結合部位でのこれらのリガンドの競合によって傾きが1より小さくなる。

代替方法

代替となる方法には、ジョン・ガッダム英語版によるGaddum式や、Cheng-Prusoff式がある[2][3][4]

脚注

  1. ^ R. R. Neubig, M. Spedding, T. Kenakin, A. Christopoulos (2003). “International Union of Pharmacology Committee on Receptor Nomenclature and Drug Classification. XXXVIII. Update on terms and symbols in quantitative pharmacology”. Pharmacol. Rev. 55 (4): 597-606. doi:10.1124/pr.55.4.4. PMID 14657418. 
  2. ^ S. Lazareno, N. J. Birdsall (1993). “Estimation of competitive antagonist affinity from functional inhibition curves using the Gaddum, Schild and Cheng-Prusoff equations”. Br. J. Pharmacol. 109 (4): 1110-1119. PMC 2175764. PMID 8401922. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2175764/. 
  3. ^ T. F. Webster (2013). “Mixtures of endocrine disruptors: How similar must mechanisms be for concentration addition to apply?”. Toxicology 313 (2-3): 129-133. doi:10.1016/j.tox.2013.01.009. PMID 23357612. 
  4. ^ T. L. Williams, D. A. Smith, N. R. Burton, T. W. Stone (1988). “Amino acid pharmacology in neocortical slices: evidence for bimolecular actions from an extension of the Hill and Gaddum-Schild equations”. Br. J. Pharmacol. 95 (3): 805-810. PMC 1854217. PMID 2905185. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1854217/. 

参考文献

  • Arunlakshana O. & Schild H.O. (1959). Some quantitative uses of drug antagonism. Br. J. Pharmacol. 14:48-58.
  • Kenakin T. (1993). Pharmacological analysis of drug-receptor interaction. 2. Aufl., Raven Press, New York.



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「シルトプロット」の関連用語

シルトプロットのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



シルトプロットのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのシルトプロット (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS