スウェーデンの交通 スウェーデンの交通の概要

スウェーデンの交通

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/07/05 19:21 UTC 版)

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鉄道

スウェーデンの鉄道は、政府が株式を100%所有するスウェーデン国鉄会社 (SJ AB: Statens Järnväg aktiebolag) が全国の旅客輸送において中心的な役割を果たしている。国鉄会社以外にも(län)や市(kommun)、ランスティング(landsting)が運営する鉄道(Länstrafik, 県・市交通局)が地方の旅客輸送を担っている。ストックホルムからヨーテボリ(Göteborg)、マルメ(Malmö)、スンズバル(Sundsvall)等の大都市へは特急X2000が運行されている。一部のマルメ行きX2000は、2000年エーレスンド大橋(Öresundsbro)の完成によって、デンマークの首都コペンハーゲン(スウェーデン語Köpenhamn, デンマーク語København)まで乗り入れている。かつてはノルウェーの首都オスロ(Oslo)からヨーテボリを経由してコペンハーゲンまで、X2000と同車種・異塗装(青)の特急リンクス(Linx)が直通(乗り換えなし)で運行されていたが、現在は利用者の減少から廃止され、ノルウェー国鉄(NSB)がオスロからヨーテボリまで、自社の特急を乗り入れている。ヨーテボリコペンハーゲン間はX2000によって代替されているが、2007年現在、運行本数は月曜日~金曜日は4~5往復、休日・祝日は2~3往復に留まっている。それ以外の時間帯は普通列車が運行されている。

地下鉄ストックホルムでのみ3路線が運行されており、路面電車ストックホルムヨーテボリマルメノーショーピングの各都市で庶民の足として利用されている。ストックホルムの地下鉄は近郊電車(pendeltåg)も運行しているストックホルムス・ロカールトラフィーク(SL, Stockholms lokaltrafik)により運行されている。エスエルはストックホルム県内で運行されているバスの運営主体でもある。

モノレール新交通システムはスウェーデン国内には、2007年現在存在しない。近郊区間を走る地下鉄路面電車は比較的定時性が保たれているが、長距離の路線を運行するスウェーデン国鉄会社では他のヨーロッパの鉄道同様に5~10分程度の遅れが常態化している。また、三大都市圏を除いて近郊電車は日本ほど発達しておらず、駅間の距離が長い点も類似している。従って、多くの路線で中長距離の列車運行が主体となってしまう。

日本で通常見られる定期券回数券のような乗車券は一般的ではない。各鉄道会社は地域の事情に合わせた各種の割引乗車券を発売している。スウェーデン国鉄会社では、年齢による割引(25歳以下を対象にした若者割引、65歳以上を対象にした高齢者割引)、購入時期による割引(早期購入割引、直前購入割引)、学生割引等の割引乗車券を発売している。ちなみに、若者割引と学生割引では通常運賃よりも30%安く購入できる。優等列車乗車時に必要な特急券(あるいは特急料金に相当する料金)はないが、X2000乗車時には必ず座席の予約が必要になる。

乗車券は長らく駅の窓口、電話もしくは電車内での購入に限られていたが、この十年程で自動券売機の普及が進んだ。但し、南部の一部を除いて、自動券売機での乗車券購入はクレジットカードでのみ決済可能なシステムになっている。(現金で購入したい場合は、電車内で割高の運賃を支払わざるを得ない。)またインターネットの各家庭への普及に伴い、ホームページ上での乗車券購入も一般化しつつある。特にスウェーデン国鉄会社では、インターネット経由で乗車券を販売し、乗客が乗車前に自動券売機で受け取る事もできるようになっており、料金的にも電車内で購入するよりも割安に設定されている。(自動券売機の設置されていないような小さな駅では、近くの売店などでインターネット購入した切符を発行してもらえる。)路面電車の場合は乗車時に運転士から直接購入するか、事前に購入したプリペイドカードを打刻機に通す。この場合は運賃に差がない事が多いが、最近は(2007年現在)携帯電話で事前に乗車券を購入しておくと、いくらか安くなるようなシステムも現れ始めている。

乗車方法は、ストックホルム地下鉄を除いて、他の欧米諸国に多く見られるような信用乗車方式をとっており、改札はない。(従って、自動改札機も存在しない。)中長距離電車の場合であれば、を発車直後に車掌による検札が行われ、事前に乗車券を購入していない場合はその際に直接購入する事になる。検札の際に乗車券の不正利用等が発覚した場合、多額の罰金を取られる。近郊電車や路面電車の場合は乗車券を打刻機に通す事で検札の代わりとするが、不正乗車を防ぐために抜き打ちの検札がしばしば運営会社の職員によって行われる。スウェーデン国鉄会社では罰金として600スウェーデン・クローナを申し受ける旨の記載が約款に見られる。

日本で朝夕の通勤・通学時に見られるような殺人的通勤ラッシュはスウェーデンの場合ではほとんど見受けられないものの、そのような時間帯には当然他の時間帯より乗客数は多い。また、クリスマスイースター等の休暇の前後には日本程ではないにしろ、帰省ラッシュのような状況を呈する事もある。

バス

スウェーデンバス鉄道を補完する公共交通機関としての役割を果たしている。スウェーデン鉄道が中・長距離を主体に運行されているために、鉄道空白地帯が出来やすく、市内の各所や隣接する都市への移動など短距離の移動手段として利用されている。(län)や市(kommun)、ランスティング(landsting)が共同出資して株式会社を設立し、共同運営する形態がスウェーデンでは一般的である。そのため、スウェーデンの多くのバス会社は日本における地方自治体が運営する公営交通事業的な色彩が濃い。また、そのようなバス会社はレーンストラフィーク(länstrafik)やロカールトラフィーク(lokaltrafik)という呼称を社名に含んでいる場合が多い。

ストックホルムヨーテボリといった大都市を担当範囲に含んでいるストールストックホルムス・ロカールトラフィーク(Storstockholms lokaltrafik, SL)やヴェストトラフィーク(Västtrafik)はバスだけではなく、地下鉄路面電車を運行している場合もある。また、市がメインになって設立したバス会社の場合、障害者高齢者の市内における移動や病院患者の自宅・病院間の移動を円滑に行うためのタクシー業務も行っている。一部の会社はエスイーと協力して一部区間を鉄道によって代替しているが、車両の所有や運転士車掌の派遣に留まっている。

地方自治体以外の会社が運営するバスもあるが、その多くは観光バスや長距離の都市間を走る高速バスである。一部の高速バス会社はエスイーと競合する区間でバスを運行している事もあるが、料金的に割安である点、夜間でも運行されている点が利用者から支持されている。こうした高速バス会社も自社ホームページから乗車券を購入できるようにしており、エスイー乗車券に見られるような年齢による割引、早期購入割引を設けている。

各県・各市内を運行されている路線バスの乗車方法は前扉から乗車して運転手に料金を支払い、中扉もしくは後扉から降車する方法が一般的である。料金の支払い方法は現金の他、プリペイドカードを打刻機(電子的)にかざす、乗車時に何度も入金(チャージ)可能な硬質プラスチック製カードを物理的に打刻機に通すなど、複数ある。プリペイドカードも後から入金(チャージ)が可能である場合もあるが、入金(チャージ)の際は運営会社の営業所に出向く必要がある場合がほとんどである。最近では路線バスの場合、市内の利用に限って事前に携帯電話で一割程度安く乗車券を購入できる方法も、一部のバス会社では登場し始めている。こうした現金以外での支払い方法が日本よりも一般的である背景には、利用の促進だけではなく、料金を狙った強盗の防止という側面もある。(スウェーデンの路線バスは日本と違い、路線こそ少ないものの、深夜・早朝も運転されているため、日本に比べて路線バスが強盗の被害に遭いやすい。)高速バス路線バス同様、乗車時に料金を運転手に支払う方法もあるが、上述のようにインターネット経由での購入方法も普及しつつある。高速バスの場合は、乗降する頻度が路線バスに比べて少ない事から、2扉(前扉・中扉)であることが多く、前扉から乗車する。

車両は、路線バスであっても日本に比べて大型の車両が多い。路線バスは特に市民の足として利用される性格上、低床バスノンステップバスである事が多く、高齢者や車椅子を使用する必要のある障害者、バギーを利用する事の多い幼児を連れた家族に大変便利な構造の車両が多い。中扉付近は車椅子やバギーを置けるように、最初から椅子が設けられていない。そのような構造の車両には「ニーリング(nigning)」機構をあわせもつ場合が多い。高速バスには、まだそういった対応がなされていない車両が多い。スウェーデンにも2階建バスはあるが、そのほとんどは観光目的のバスに限られ、路線バス高速バスに見られる事は少ない。






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