クオリア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 16:33 UTC 版)
自然科学との関係
たとえばリンゴの色について考えた場合、自然科学の世界では「リンゴの色はリンゴ表面の分子パターンによって決定される」とだけ説明する。つまり、リンゴ表面の分子パターンが、リンゴに入射する光のうち700ナノメートル前後の波長だけをよく反射し、それが眼球内の網膜によって受け取られると、それが赤さの刺激となるのだ、と説明する。[要出典]そしてこの一連の現象のうち、[要出典]
- どのような分子がどのような波長の光をどれぐらい反射するのか(光化学)[要出典]
- 反射した光は、眼球に入った後、どのようにして網膜の神経細胞を興奮させるのか(→網膜→錐体細胞→ロドプシン→レチナール)[要出典]
- その興奮は、どのような経路を経て脳の後部に位置する後頭葉(視覚野)まで伝達されるのか(→視神経→視交差→視索→外側膝状体→視放線→視覚皮質)[要出典]
- 後頭葉における興奮は、その後どのような経路を経て、脳内の他の部位に伝達していくのか(→腹側皮質視覚路、背側皮質視覚路)[要出典]
という点に関しては神経科学でも物理学でも哲学でも、専門分野の違いに関わりなく、ほぼすべての研究者の間で意見が一致する。[要出典]
だがこうした物理学的・化学的な知見を積み重ねても最後のステップ、すなわち「この波長の光がなぜあの「赤さ」という特定の感触を与え、この範囲の光はどうしてあの「青さ」という特定の感触を与えるのだろうか」といった問題は解決されない。[要出典]
この現在の自然科学からは抜け落ちている残されたポイント、すなわち「物理的状態がなぜ、どのようにしてクオリアを生み出すのか」という問題について、哲学者ディビッド・チャーマーズは1994年、ツーソン会議という意識をテーマとした学際的なカンファレンスで「それは本当に難しい問題である」として、その問題に「ハード・プロブレム」という名前を与えた[32]。
向精神薬や大脳皮質への電気刺激の実験などからも分かるように、「脳の物理的な状態」と「体験されるクオリア」の間には因果関係があると推測される。しかしながらそれが具体的にどのような関係にあるのかはまだ明らかではない。この「脳の物理的な状態」と「体験されるクオリア」がどのような因果関係にあるのか、という問題に対しては、抽象的ではあるが様々な仮説が提唱されている[33]。こうした「クオリアを整然とした自然科学(とりわけ物理学)の体系の中に位置づけていこう」という試みは、クオリアの自然化(英語: naturalization of qualia)と呼ばれ、心の哲学における重要な議題のひとつとなっている[34]。
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