カルダノ (ブロックチェーン)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/11 00:01 UTC 版)
特徴
学術的に安全性が証明されたPoSアルゴリズム
カルダノのコンセンサスアルゴリズムはOuroboros(ウロボロス)と名付けられたプルーフ・オブ・ステーク (PoS)アルゴリズムであり、これはPoSプロトコルの中で初めて学術研究を基盤に構築された事例である。
ビットコインなどに代表されるプルーフ・オブ・ワーク (PoW)アルゴリズムでは、参加者がブロックを生成する権利を得るために電力・演算リソースを投資しその競争に勝つことで報酬を得ることができるが、プルーフ・オブ・ステーク (PoS)では演算リソースの代わりに参加者が保有する「ステーク」(トークン保有量)の大きさを利用して抽選により報酬が配布される。PoSではPoWに比べてほんのわずかな電力でネットワークを維持することができるが[6]、堅牢性の確保のためにはより数学的な厳密さが求められる。Ouroborosは学会にて査読を受けた論文に基づいた設計を行うことで、学術的に安全性の証明されたPoSプロトコルの実装を実現している。
また現在、主だったPoWネットワークは高いハッシュレートを持つ一部のマイニングプールが権力を持つことが多く、これらがネットワークの行末を支配可能であるという深刻なリスクにさらされている。Ouroborosはゲーム理論の研究成果に基づく分散化を促進するプロトコル設計により権力の集中を回避している。
ステーキングにおいてはプロトコルに組み込まれた「ステークプール」と「委任」の要素によりトラストレス(不正が不可能)なシステムを実現している。保有者はステークプールに「ブロックを生成する権利」のみを預け、生成報酬の分配を得ることができる。生成権の委任をしても資産自体は送金されず保有者の手元に残るため、紛失や盗難の心配なくステーキングをすることができる。委任者はノードを稼働させる必要がないため、委任のトランザクションが承認されていれば資産をコールドウォレットに保管したままステーキングを行うことも可能である。分配もプロトコル側で処理されるため、運用者による持ち逃げのリスクはない。運用者が得るマージンもチェーン上に記録されているためにこれを偽ることができず、変更された場合も一定の期間の後に反映されるために「報酬が分配される寸前にマージンを引き上げる」といった行為も不可能となっている。ステークプールが攻撃を受けた場合やサーバのデータを紛失した場合、プールの運用者は資産を失うことがあるが、委任者は資産を失うことなく委任の解除や委任先の変更をすることができ、その時点までに得られていた報酬も手元に残る。
ネイティブトークンを発行可能なマルチアセット台帳
カルダノによって発行可能な独自のトークンは、カルダノのネイティブトークンである。
従来のERC-20のようなトークンは送受信などがスマートコントラクトの動作によって実現されるため、ネイティブトークンよりもコスト(手数料)が高く、コントラクトの実装によってはネイティブトークンにないセキュリティ上のリスクが発生する場合がある。カルダノのマルチアセット台帳は独自トークンをADAと同等のネイティブトークンとして発行できるため、単純な送受信などにおいてはスマートコントラクトが不要である。これにより低コスト・高セキュリティなトークンの発行が実現する[7]。
非代替性トークン(NFT)として発行することも可能であり、ERC-721のようなトークンを発行する場合も上記の利点は同様である。
多様なアプリケーション開発手段
カルダノのスマートコントラクト「Plutus」(プルータス)にはHaskell用ライブラリが用意されているが、開発環境やツールを利用することでJavaScript・TypeScript・Python・ノンプログラミングなどによる開発を行うこともできる。
ここでは開発環境やツールの一例を示す。
- Marlowe(マーロウ)
- 「Marlowe」は開発者の技能に合わせてコーディングエディタからグラフィカルユーザインタフェースベースのエディタまで様々な開発ツールを提供し、コーディングやデバッグをサポートする開発環境である。専用プログラミング言語である「Marlowe」の他、広く普及しているJavaScriptを用いた開発や、Blocklyによるノンプログラミング開発を行うことができる[8]。
- Aiken
- 「Aiken」はオープンソースなカルダノのスマートコントラクト開発環境・ツールキットである。専用言語としてシンプルな関数型言語「Aiken」を持つ。人気の高いコーディングエディタであるVSCodeやNeoVimとの統合も備えている[9]。
- plu-ts
- 「plu-ts」はカルダノのTypeScriptライブラリであり、オンチェーンコードとオフチェーンコードの両方をTypeScriptのみで記述することができる[10]。
- opshin
- 「opshin」はカルダノのスマートコントラクトをPythonの記法でコーディングするためのプログラミング言語であり、オンチェーンコードとオフチェーンコードの両方をPythonのみで記述することができる[11]。
- Milkomeda C1
- 「Milkomeda C1」はdcSpark社の開発するEVM互換のサイドチェーンである。Solidityで記述されたコントラクトを動作させることができるため、イーサリアム上のアプリケーションの開発者がそれまでの知識やリソースを活用しながらカルダノ上での開発に参入することを可能にする[12]。
ガバナンスを組み込んだプロトコル
プロジェクトが真に分散化されるためには、長期に渡る維持と改良を分散化された方法で行うことができる機能も必要である。開発者のみがそのプロジェクトの将来を決定できることは完全な中央集権である一方、様々な意見を受け入れると最終的にはビットコインに代表されるようにプロジェクトの分裂を招く。カルダノではこのような問題を解決する仕組みを予めプロトコルに組み込んでいる。
・投票システムは、ネットワーク参加者にカルダノの改良案を提示する能力と、その提案に対して賛成・反対を投票する能力を付与する。
・トレジャリーシステムは、将来のネットワーク開発の資金源をプロトコル上で保持する。すべてのトランザクション手数料からわずかな額がプールされ、投票システムによってプロトコルの改良が決定された際に提案者らへ開発資金として提供される。資金は特定の参加者によって管理されることはなく、プロトコルによってネットワーク上に独立して維持される。
投票システムとトレジャリーシステムの完成によりカルダノは将来、カルダノ財団・IOG(IOHK)・Emurgoから独立したプロジェクトとなることができる。これは管理者のいない真に分散化されたシステムとして完成することを意味する。
透明性の高い開発プロジェクト
・開発中のコードはGitHubのパブリックリポジトリに公開されている。
・開発の各部門より「開発レポート」が公開される。
・毎週金曜日にIOG(IOHK)より「週間レポート」が公開される。
・週間のレポートとは別に「Cardano Updates」にて、リポジトリの更新内容より自動生成された日次レポートを見ることができる。
- ^ Intersect
- ^ カルダノ財団
- ^ IOHK
- ^ Emurgo
- ^ https://www.youtube.com/watch?v=Kxr_RzxSp80\
- ^ https://forbesjapan.com/articles/detail/41352/2/1/1
- ^ https://docs.cardano.org/en/latest/native-tokens/learn-about-native-tokens.html
- ^ a b c https://marlowe.iohk.io/
- ^ https://aiken-lang.org/
- ^ https://github.com/HarmonicLabs/plu-ts
- ^ https://github.com/OpShin/opshin
- ^ https://dcspark.gitbook.io/milkomeda/
- ^ https://atalaprism.io/
- ^ https://cardanofoundation.org/en/news/cardano-foundation-partners-with-georgian-national-wine-agency/
- ^ https://unrefugees.ch/en/blockchain-refugees
- ^ https://coinmarketcap.com/community/articles/65ee1cf31993ea6cb52bf53f/
- ^ https://worldmobiletoken.com/
- ^ Bittrex
- ^ カルダノロードマップ
- ^ Hotel Ginebra Barcelona
- ^ UPbit
- ^ GRNET
- ^ ふくろうのすばこ
- ^ https://iohk.io/en/blog/posts/2021/03/31/decentralization-to-d-0-day-and-beyond/
- ^ https://bittimes.net/news/106272.html
- ^ Cardano360 - May 2021
- ^ Goguen Alonzo Development Update - 11 June 2021
- ^ https://twitter.com/SundaeSwap/status/1467795614633185280
- ^ https://iohk.io/en/blog/posts/2021/12/07/the-agix-erc20-converter-testnet-is-now-live/
- ^ https://iohk.io/en/blog/posts/2021/12/08/introducing-our-new-peer-to-peer-p2p-testnet/
- ^ https://twitter.com/SundaeSwap/status/1484281160146509828
- ^ https://coinpost.jp/?p=320593
- ^ https://github.com/input-output-hk/cardano-node/releases/tag/1.34.0
- ^ https://medium.com/@milkomedafoundation/milkomeda-c1-launch-evm-on-cardano-is-available-starting-today-4a2c6ad26e9d
- ^ https://blog.singularitynet.io/the-agix-erc-20-converter-bridge-is-live-fa90ccba061a
- ^ https://iohk.io/en/blog/posts/2022/11/04/announcing-io-scotfest-the-age-of-voltaire
- ^ https://www.lace.io/blog/hello-web3-lace-1-0-is-live
- ^ https://iohk.io/en/blog/posts/2023/06/07/iog-response-to-the-recent-sec-filings
- ^ https://www.intersectmbo.org/news/press-release-introducing-intersect-a-new-member-based-organization-for-cardano
- ^ https://www.intersectmbo.org/news/sanchonet-building-together-in-the-age-of-voltaire
- ^ https://twitter.com/MidnightNtwrk/status/1724078731873206773
- ^ https://iohk.io/en/blog/posts/2023/12/04/iog-contributes-atala-prism-to-hyperledger-foundation/
- ^ https://identity.cardanofoundation.org/
- ^ https://twitter.com/Cardano_CF/status/1734230735412662527
- ^ https://www.intersectmbo.org/news/open-horizons-cardano-migrates-to-intersect
- ^ https://cardanofoundation.org/en/news/cardano-foundation-announces-education-partnership-with-petrobras-1
- ^ https://medium.com/dcspark/dcspark-announces-development-of-new-sidechain-protocol-milkomeda-cc28ed764a89
- ^ https://polkadot.network/tag/babe/
- ^ https://yoroi-wallet.com/
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