J-PARC放射性同位体漏洩事故
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J-PARC放射性同位体漏洩事故(ジェイパークほうしゃせいどういたいろうえいじこ)とは、日本標準時2013年5月23日11時55分、茨城県那珂郡東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCの施設の1つであるハドロン実験施設で発生した放射性同位体の漏洩事故である。装置の誤作動に起因する放射性同位体の拡散と、事故発生後の対応が誤っていた事によって、当時施設内にいた作業員や研究者102人のうち34人が被曝したほか、管理区域外にも微量の放射性同位体が漏洩した[1][2][3][4][5]。原子力規制委員会は、本事案を暫定的に国際原子力事象評価尺度レベル1(逸脱)に相当する事象と評価した[6]。
注釈
- ^ 出典とした資料の1つである「J-PARC ハドロン実験施設における作業者の被ばくについて」では更に多数の核種が検出されているが、紙の資料をスキャンした画像ファイルであるため読み取りが困難なものもあり、誤読による間違いを防ぐため掲載していない。
- ^ 太字の核種は安定同位体。
- ^ 厳密には放射性同位体であり、電子捕獲によって123Sbに崩壊すると考えられているが、半減期は600兆年以上と推定されており、実質的には安定同位体である。
- ^ 核種と放射能の値が既知ならば、その質量は計算によって求まる。詳しい式はベクレルの項目を参照。
- ^ 検出された核種の半減期を見ればわかるとおり、核種やその娘核種の半減期は数秒から約半年と極めて短い。例えば福島第一原子力発電所事故で放出された137Csや90Srのような半減期が数十年に及ぶものが大量に放出された場合とは異なり、元々微量しかない放射性同位体が速やかに安定同位体へと放射性壊変するため、人為的に除去せずとも自然と消滅し、放射線量が減少する。
- ^ 原子炉ならば運転していなくても、原子炉内にある核燃料のような放射性同位体によって、人為的ではない自然な放射性壊変や核反応によって新たな放射性同位体が生成される場合がある。これに対してJ-PARCの場合、標的が安定同位体であり、放射性同位体を生成するには加速した陽子を与えるしかなく、運転を停止している場合には生成する方法がない。また、漏洩によって既に存在する放射性同位体も速やかに安定同位体に変化する。
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p J-PARC ハドロン実験施設におけるトラブルについて J-PARC
- ^ a b c J-PARC ハドロン実験施設における作業者の被ばくについて J-PARC
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p J-PARC ハドロン実験施設における入域者の被ばくについて J-PARC
- ^ a b J-PARCハドロン実験施設からの放射性物質の放出に伴う環境影響評価 J-PARC
- ^ a b c d e f 放射線発生装置故障等報告書 J-PARC
- ^ a b 独立行政法人日本原子力研究開発機構から放射性物質の管理区域外への漏えいについて報告を受けました 独立行政法人 原子力規制委員会[リンク切れ]
- ^ a b c d e “放射能漏れ:電磁石の故障が原因か 被ばく30人に”. 毎日jp (毎日新聞). (2013年5月26日). オリジナルの2013年5月26日時点におけるアーカイブ。 2013年5月26日閲覧。
- ^ a b c “被ばく事故把握と報告遅れ謝罪”. NHK News Web (日本放送協会). (2013年5月25日). オリジナルの2013年5月26日時点におけるアーカイブ。 2013年5月26日閲覧。
- ^ a b c 「放射能漏れ 想定外 「誤警報」と判断・換気「問題なし」 対応手順 存在せず 加速器施設事故」 『読売新聞』2013年5月26日朝刊第3面
- ^ “「検証するため」放射性物質を垂れ流した体質”. YOMIURI ONLINE (読売新聞). (2013年5月26日). オリジナルの2013年5月26日時点におけるアーカイブ。 2013年5月26日閲覧。
- ^ a b c “クローズアップ2013:加速器施設放射能漏れ 「想定外」の遮蔽材貫通 排気、経緯検証へ”. 毎日jp (毎日新聞). (2013年5月26日). オリジナルの2013年5月26日時点におけるアーカイブ。 2013年5月26日閲覧。
- ^ a b c d 「装置誤作動 前兆も見逃す」 『読売新聞』2013年5月26日朝刊第3面
- ^ “ビーム誤作動、想定せず=換気扇にフィルター未設置-実験施設放射能漏れ”. 時事ドットコム (時事通信). (2013年5月27日) 2013年5月27日閲覧。
- ^ “被ばく事故 警報作動後も実験継続”. NHK News Web (日本放送協会). (2013年5月26日). オリジナルの2013年5月26日時点におけるアーカイブ。 2013年5月26日閲覧。
- ^ “放射能、換気扇で外部放出=漏えい気付かず通報に1日半-原子力機構など運営施設”. 時事ドットコム (時事通信). (2013年5月25日) 2013年5月26日閲覧。
- ^ 「施設側 判断ミス重ねる 加速器放射能漏れ 新たに2人被曝確認」 『読売新聞』2013年5月26日朝刊第1面
- ^ a b “実験中に放射性物質発生 4人被ばく”. NHK News Web (日本放送協会). (2013年5月25日). オリジナルの2013年5月26日時点におけるアーカイブ。 2013年5月26日閲覧。
- ^ a b c d The NUBASE evaluation of nuclear and decay properties National Nuclear Data Center
- ^ 原子力機構J-PARCハドロン実験施設における放射性物質の漏洩について 東海村
- ^ “住宅地にも放射性物質”. YOMIURI ONLINE (読売新聞). (2013年5月30日). オリジナルの2013年5月30日時点におけるアーカイブ。 2013年5月30日閲覧。
- ^ “原子力機構:放射能漏えい想定せず 通報に1日半”. 毎日jp (毎日新聞). (2013年5月25日). オリジナルの2013年5月26日時点におけるアーカイブ。 2013年5月26日閲覧。
- ^ a b “原発と異なる安全規制、停止長期化で研究影響も”. msn産経ニュース (マイクロソフト・産経デジタル). (2013年5月26日). オリジナルの2013年5月27日時点におけるアーカイブ。 2013年5月27日閲覧。
- ^ 「放射性物質 原子炉より微量」 『読売新聞』2013年5月26日朝刊第3面
- ^ J-PARCハドロン実験施設における事故について 高エネルギー加速器研究機構
- ^ J-PARC ハドロン実験施設におけるトラブルについて (センター長から利用者へ) J-PARC
- ^ “放射能漏れ:文科政務官、茨城県知事と東海村長に謝罪”. 毎日jp (毎日新聞). (2013年5月27日). オリジナルの2013年5月27日時点におけるアーカイブ。 2013年5月27日閲覧。
- ^ “放射能漏れ「厳正対処」=菅官房長官”. 時事ドットコム (時事通信). (2013年5月27日) 2013年5月27日閲覧。
- ^ “被ばく事故 県などが立ち入り調査”. NHK News Web (日本放送協会). (2013年5月25日). オリジナルの2013年5月26日時点におけるアーカイブ。 2013年5月26日閲覧。
- ^ “被ばく事故 労基署も立ち入り調査”. NHK News Web (日本放送協会). (2013年5月25日). オリジナルの2013年5月26日時点におけるアーカイブ。 2013年5月26日閲覧。
- ^ “東海村放射能漏れ「レベル1」と暫定評価 規制委”. msn産経ニュース (マイクロソフト・産経デジタル). (2013年5月27日). オリジナルの2013年5月27日時点におけるアーカイブ。 2013年5月27日閲覧。
- 1 J-PARC放射性同位体漏洩事故とは
- 2 J-PARC放射性同位体漏洩事故の概要
- 3 結果
- 4 反応
- 5 脚注
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