大川原化工機事件とは? わかりやすく解説

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大川原化工機事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/26 01:05 UTC 版)

大川原化工機事件(おおかわらかこうきじけん)は[1][2]生物兵器の製造に転用可能な噴霧乾燥機経済産業省許可を得ずに輸出したとして、2020年3月11日に警視庁公安部外事一課神奈川県横浜市大川原化工機株式会社代表取締役らを逮捕するも杜撰な捜査証拠により[3]冤罪が明るみになった事件[4][5]


注釈

  1. ^ 貨物等省令の「滅菌」と「殺菌」は、もともと化学兵器禁止条約にあった"sterilized"と"disinfected"から来たもので、化学兵器禁止条約の"sterilized"は完全に微生物を除去し、"disinfected"は殺菌効果のある薬品の使用により菌の感染力をなくすことを意味する[14]。しかし、日本において省令として定められたときにはこの定義は明確に定められなかったというのが、事件時からの経産省側からの説明である。もし省令が化学兵器禁止条約上の二つの語の訳語としてこれらの語を使ったのであれば-そのように考えるのが自然と思われるが-初めからこの機械の機能は「滅菌」にも「殺菌」にも全く該当しなかったということになる。なお、この機械自体は乳酸菌などの菌を生きたまま熱風で乾燥できるというのがウリで、そのために外事課は細菌を生きたまま利用する細菌兵器の開発に利用できるのではないかと見立てたが、それだけに熱風はあくまで液体を乾燥して粉状にするためのものであり菌の殺滅自体を目的とするものではない[要出典]
  2. ^ 当該事件で逮捕された代表取締役・常務取締役・相談役について、本記事ではそれぞれ名字の頭文字をとりO、S、Aとした。
  3. ^ 異例の公訴取り消しについて、主任弁護士の高田剛は総合雑誌『世界』で「公安部との折衝メモの開示に経産省が断固として反対し、その他にも不利な事情があったものだから、これはもはや起訴を取り下げるしかないという状況に検察が追い込まれたのではないでしょうか」と話している[9]

出典

  1. ^ a b c 起訴取り消しの「大川原化工機事件」警察白書から記載削除 谷国家公安委員長「理解得られるよう丁寧に説明するよう指示」”. TBS NEWS DIG. TBSテレビ (2023年7月7日). 2023年7月21日閲覧。
  2. ^ 大川原化工機事件 〜無実で約1年勾留「人質司法」問題をただす〜”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。
  3. ^ a b c d e 鶴信吾 (2021年11月4日). “ある技術者の死、追い込んだのは「ずさん」捜査 起訴取り消しの波紋”. 朝日新聞. 2023年7月21日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h 日本弁護士連合会:大川原化工機事件.
  5. ^ a b c d 異例の「起訴取り消し」 ある中小企業を襲った“えん罪”事件”. クローズアップ現代. NHK (2022年11月16日). 2023年7月21日閲覧。
  6. ^ a b c 粟野仁雄 (2023年9月1日). “閉所恐怖症の私が窓のない部屋で連日、取り調べられて…大川原加工機「女性社員」が証言する“警察庁公安部の恐ろしい手口””. デイリー新潮. 2023年9月8日閲覧。
  7. ^ 起訴取り消し裁判きょう判決 身柄拘束の責任は(NHK解説委員室)”. NHK. 2023年12月29日閲覧。
  8. ^ 大川原化工機事件国賠訴訟が結審 新たな警察の捏造も判明(週刊金曜日)”. Yahoo!ニュース. 2023年12月27日閲覧。
  9. ^ a b c d e f g h i 青木 2022.
  10. ^ a b 初公判直前の地検起訴撤回で「甚大な損害」、精機メーカー社長らが賠償求め提訴”. 読売新聞 (2021年9月8日). 2023年7月10日閲覧。
  11. ^ 「公安捜査の暴走 なぜまかり通ったのか(社説)」『朝日新聞』、2023年12月28日、朝刊、12面。
  12. ^ a b 「大川原化工機」不正輸出めぐるえん罪事件 捜査は違法 国と都に賠償命じる判決”. NHK (2023年12月27日). 2023年12月29日閲覧。
  13. ^ a b c 高田剛、鄭一志、河村尚、瀬川慶、小林貴樹 (2021年9月8日). “訴状”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月22日閲覧。
  14. ^ 小林貴樹 (2021年1月15日). “調査結果報告書”. 2023年12月29日閲覧。
  15. ^ a b c 現役捜査員も「捏造だった」と証言、捜査を仕切った関係者らは事件後に昇進 女性を自殺未遂に追い込んだ警視庁公安部の暴走 3/3ページ”. デイリー新潮. p. 3 (2023年7月24日). 2023年7月27日閲覧。
  16. ^ a b 山田雄一郎 (2024年1月16日). “大川原化工機「冤罪事件」、国と都がまさかの控訴 捜査・立件を主導した「渦中の人物たち」の今”. 東洋経済オンライン. 2024年3月26日閲覧。
  17. ^ 安積伸介 (2021年6月25日). “乙第8号証の33 捜査メモ複写報告書”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月22日閲覧。
  18. ^ a b 粟野仁雄 (2023年5月8日). “警視庁公安部の闇 報告書に「私が言ってもないことが書かれている」 防衛医大校長がずさんな捜査に怒り”. デイリー新潮. 2023年8月10日閲覧。
  19. ^ 四ノ宮成祥 (2023年3月4日). “陳述書”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月22日閲覧。
  20. ^ 『ETV特集 続報 “冤(えん)罪”の深層~新資料は何を語るのか~』NHK教育、2023年12月23日放送。
  21. ^ a b 『NHKスペシャル“冤罪”の深層~警視庁公安部で何が~』NHK総合、2023年9月24日放送。
  22. ^ “内閣人事局長に杉田氏 事務副長官で初”. 日本経済新聞. (2017年8月3日). https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS03H83_T00C17A8PP8000/ 2017年8月3日閲覧。 
  23. ^ 海渡、清水他編『秘密保護法何が問題かー検討と批判』岩波書店162・238頁(平成26年)
  24. ^ a b 小口佳伸 (2022年2月22日). “Mr.インテリジェンスの正体は 政権中枢での10年”. NHK. 2023年8月19日閲覧。
  25. ^ 二階堂友紀 (2019年11月5日). “国家安全保障局に来春、経済班 体制強化の背景にあの国”. 朝日新聞. 2023年8月19日閲覧。
  26. ^ “国家安全保障局「経済班」発足 5G、サイバー攻撃、海洋資源争奪…新型コロナ対策も”. 毎日新聞. (2020年4月1日). https://mainichi.jp/articles/20200401/k00/00m/010/266000c 2020年4月5日閲覧。 
  27. ^ スプレードライヤ不正輸出の疑い、メーカー社長ら逮捕へ”. 朝日新聞 (2020年3月11日). 2023年7月21日閲覧。
  28. ^ a b 現役捜査員も「捏造だった」と証言、捜査を仕切った関係者らは事件後に昇進 女性を自殺未遂に追い込んだ警視庁公安部の暴走 2/3ページ”. デイリー新潮. p. 2 (2023年7月24日). 2023年7月27日閲覧。
  29. ^ 高田剛、鄭一志、河村尚、我妻崇明、山城在生、三木隼輝、坂井萌 (2023年3月6日). “証拠申出書”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月22日閲覧。
  30. ^ 粟野仁雄 (2023年9月15日). “公判4日前に起訴取消し、それでも「謝罪はしません」と強弁した東京地検・女性検事の行状【大川原化工機冤罪事件】”. デイリー新潮. 2023年9月15日閲覧。
  31. ^ a b 遠藤浩二、巽賢司 (2023年12月22日). “装置不正輸出 東京地検「起訴に不安」 警察文書と裁判証言に矛盾”. 毎日新聞. 2023年12月22日閲覧。
  32. ^ 東京地方検察庁 塚部貴子 (2020年3月31日). “起訴状”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月22日閲覧。
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  34. ^ 大川原化工機事件(日本弁護士連合会ウェブサイト)
  35. ^ 鶴信吾 (2023年7月5日). “経産省、規制対象外の可能性「何度も伝えた」 起訴取り消し事件”. 朝日新聞. 2023年7月21日閲覧。
  36. ^ 高田剛、鄭一志、河村尚、瀬川慶、小林貴樹 (2021年5月24日). “証拠開示請求書”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月22日閲覧。
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  38. ^ 「立件方向にねじ曲げ」警視庁内部文書に記載 起訴取り消しで地検が指摘 毎日新聞 2023年12月6日
  39. ^ 起訴取り消しの社長らに上限の1130万円を刑事補償 東京地裁”. 毎日新聞 (2021年12月9日). 2023年7月21日閲覧。
  40. ^ 第208回国会 参議院 本会議 第16号 令和4年4月13日”. 国会会議録検索システム. 2023年7月21日閲覧。
  41. ^ 山田雄之 (2023年7月8日). “2年前の警察白書、「捏造」事件の記述やっと削除 捜査員が異例の証言した6日後に ネット版”. 東京新聞. 2023年7月21日閲覧。
  42. ^ 金子和史、鶴信吾 (2023年6月30日). “警視庁の現職警部補、事件を「捏造」と証言 起訴取り消しの公安事件”. 朝日新聞. 2023年7月21日閲覧。
  43. ^ 「捏造ですね」大川原化工機国賠訴訟で警視庁公安部警部補が証言 逮捕後には捜査の問題点指摘の内部通報も”. TBS NEWS DIG. TBSテレビ (2023年7月1日). 2023年7月21日閲覧。
  44. ^ a b 粟野仁雄 (2023年7月5日). “公安部警察官が「まあ、捏造ですね」「捜査員の欲でそうなった」前代未聞の証人尋問で明らかになった不正捜査の数々【大川原化工機事件】”. デイリー新潮. 2023年7月21日閲覧。
  45. ^ 起訴取り消しめぐる裁判 検察官 “当時の判断間違っていない””. NHK (2023年7月5日). 2023年7月21日閲覧。
  46. ^ “起訴取り消しで長官賞返納 公安部捜査巡り、警視庁”. 日本経済新聞. (2023年10月13日). https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE13CC20T11C23A0000000/ 2024年1月10日閲覧。 
  47. ^ 【速報】「大川原化工機」巡る起訴取り消し国賠訴訟で国と東京都に賠償命令 東京地裁”. テレ朝news. テレビ朝日 (2023年12月27日). 2023年12月27日閲覧。
  48. ^ “起訴取り消し訴訟、双方控訴 国と都は「違法捜査」不服―大川原化工機の賠償請求”. 時事通信. (2024年1月10日). https://www.jiji.com/amp/article?k=2024011000843 2024年1月10日閲覧。 
  49. ^ “大川原化工機訴訟で都と国が控訴 公安捜査違法、1億6千万円賠償命令不服”. 時事通信. (2024年1月10日). https://www.sankei.com/article/20240110-CJ2DDIWTR5L7ZHPPZ3ENOLYMXE/ 2024年1月10日閲覧。 
  50. ^ 大杉はるか (2024年3月12日). “「公安」が受けた警視総監賞「冤罪」で返納 大川原化工機事件で 担当者の処分は否定”. 東京新聞. 2024年3月22日閲覧。
  51. ^ 比嘉展玖 (2024年3月21日). “「最悪の判決」「命より裁判所が上か」 大川原化工機の元顧問の遺族”. 朝日新聞. 2024年3月22日閲覧。
  52. ^ 遠藤浩二 (2024年3月25日). “大川原化工機冤罪事件 取調官ら2人を刑事告発 調書破棄容疑”. 毎日新聞. 2024年3月26日閲覧。


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