人力飛行機
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人力飛行機(じんりきひこうき、じんりょくひこうき[注 1]/英:Human powered aircraft, Human powered airplane)は、人間の筋力のみを動力源とし飛行する飛行機のことである。純粋な人力飛行機においては推進力としてのモーター等の併用は認められないが、操縦系統などでサーボモータ等を使うことがある。人力飛行機という言葉は固定翼機の形態を指すことが多いが、広義には人力ヘリコプターや人力オーニソプターを含める場合もある。
注釈
- ^ 日本放送局(NHK)では人力車のような「ジンリキ」と読む慣用が特に強い場合を除いて「ジンリョク」と読む。[1]
- ^ 人力ヘリコプター、人力オーニソプターさらには「人力による飛行」についても同様の略語としてそれぞれHPH(Human Powered Helicopter)[5]、HPO(Human Powered Ornithopter)[6]、HPF(Human Powered Flight)[7] が用いられる場合がある。
- ^ 空力は空気との間で生じるので飛行機の速度は対気速度で議論される。空気に対する速度なので、同じ対気速度でも向い風のときは対地速度(地面に対する速度)は小さくなり、追い風のときは対地速度が大きくなる。例えば、飛行機が静止していても向い風が吹いていれば、空気の中を前進している状態と等しく、追い風であれば空気の中を後退している状態と等しい。
- ^ ダイダロス88の記録飛行時、離陸直後の高度。すぐに12m程度まで降下させた。[14] 日本でも東北大学と同学同好会Windnauts(ウインドノーツ)による周回路飛行距離記録飛行において30mまで機体が上昇したとの報告がある[15]
- ^ ダイダロス88による飛行の結果、必要出力が高度を上げるに従って低下するという通常の地面効果とは逆の現象が観測された。これを裏付ける証言が、ダイダロスの記録飛行時のパイロット、カネロス・カネロプロースやゴッサマー・アルバトロスによるドーバー海峡横断時のパイロット、ブライアン・アレンから得られている。この「逆地面効果」ついては地球境界層内の大きな規模での乱流が影響していると考えられている。[17]
- ^ 上述したダイダロスによる高度40mの飛行では直ちに12mまで高度を下げた。これはパイロットに対して事前に落ちても問題ない高度を飛行するように教育がなされた結果とされる[14]。また東北大学の記録飛行における高度30mの飛行も、報告書内で墜落時の安全確保と地面効果の利用の点から10m以上の高度における飛行は不適切で、高度管理できなかったことを反省点としている[16]。
- ^ プロの自転車競技者で体重1kg辺り3Wで3時間、4Wで2時間持続可能と言われる。[13]
- ^ 長時間持続可能な出力はスポーツをしていない人で100W、サイクリング熟達者で200Wと言われる。[19]
- ^ 2010年に日本大学による直線飛行距離世界記録を狙った記録飛行においても増田がパイロットを務めたが、飛行中に左主翼が折損、旋回しながら海面に墜落した。この事故で増田は腰椎の圧迫骨折を負い[23][24]、以降は自転車のみに集中し活動している。[25]
- ^ ダイダロスの試作機であるミシェロブ-ライトイーグルの名前はスポンサーとなったアンハイザー・ブッシュ社の商品であるミシェロブ-ライトと、アンハイザー・ブッシュ社のトレードマークの一つであるイーグルに由来する。[42]
- ^ 日本大学では1963年に始まった卒業研究による人力飛行機開発は22年間続き、1984年からは学生同好会である日本大学理工学部航空研究会に移行した[57] が、1996年から再び卒業研究のテーマとして復活した。[58] その間は航空研究会のみの活動であった。2013年現在は互いに協力体制にはあるが、活動は並立のものとなっており、航空研究会が主に鳥人間コンテスト選手権大会を目標とし、卒業研究が世界記録を目標とした活動を行っている。[59]
- ^ サンシーカー1(タンポポ号)はマスキュレアー2から大きな影響を受けている。開発者であるエリック・レイモンドがグンター・ローヘルトに招かれマスキュレアー2のパイロットを経験したことがきっかけとなった。[63]
- ^ a b ここでの「人力飛行機」には飛行中に推進力を発生する機構を持たない「滑空機部門」出場機を含む。
- ^ 鳥人間コンテスト選手権大会で審判長を務める佐々木正司は「鳥人間コンテストは失速回復大会」と発言している。[87]
- ^ 人力飛行機の競技である人力プロペラ機部門は第12回大会(1988年)、第13回大会(1989年)、第21回大会(1997年・全面中止)で競技中止となった。[88][89][90]
- ^ 2004年の第28回大会は人力プロペラ機部門は台風接近に伴う荒天下で実施された。5m/sに達する強い追い風と雨の中の風が弱まる一瞬の隙に飛行が実施されたが、次第に強風が治まらなくなり、時間的制約により競技不成立となった。[91] 決行された飛行もあったが、前年の大会で20km以上の飛行を成功させたチームでも200m程度の結果だった。[92] なお、競技は風速5m/s以上で中断される[86] が、前述の通り、風速5m/sという環境は人力飛行機では飛行することはほぼ不可能とも言われる[33] 条件である。
- ^ なお、ボッシはイタリア生まれであったがアメリカ市民権を得ていたため懸賞対象外であった。しかし、ボッシはそれを承知で挑戦した。[110]
- ^ 設立当時の名称。後に女性によっても多数の飛行が可能になったことを受け1988年に現在の名称、Human powered flight groupに改称した。[112]
- ^ 後年になり設定されたクレーマー賞は英語では"Kremer **** competition"(****は競技名)と表記されるが、日本では「クレーマー・****賞」とされる例があるため[114][115]、その表記法に倣った。
- ^ 但し、リネットの飛行以前にSUMPAC、パフィン、パフィン2以外の人力飛行の記録が残っている。1962年5月17日には南アフリカ在住の当時73歳[121] のグライダー製造者、S.W.Vineが人力飛行機を完成させた。この当時はまだクレーマー・8の字飛行賞の権利はイギリス連邦の国民に限られていたが、1962年5月31日を以って南アフリカはイギリス連邦からの脱退が決まっていたため、機体を完成させたVineは荒天にも拘らず完成日に飛行を強行した。激しい強風下で離陸し200ヤード(約182m)ほどの飛行に成功したという。しかし、突風により機体が持ち上げられ墜落、機体は大破した。Vineは無傷であったが、これがVineの人力飛行機による最初で最後の飛行となった。なお、Vineの人力飛行機は脚力のみでなく腕力も推進に利用する珍しい人力飛行機であった[118]。これを加えるとリネットの成功は5例目となるが一般にはVineの飛行は数えられず、木村秀政の主張のように4例目と扱われている。
- ^ 佐藤は当時九州大学名誉教授であった佐藤博を指す。戦前より佐藤と前田は国産グライダーの開発を行っていた。[122]
- ^ 1967年、ジョセフ・マリガ(Josef Malliga)により開発された人力飛行機。[118] 後述の1992年に飛行した同じオーストラリアの人力飛行機、スカイサイクルとは無関係である[123]。
- ^ 指導した木村秀政は主導した学生の設計センスを高く評価し、和紙(雁皮紙)を外皮に採用したことをストークの成功要因の一つに挙げている。[131]
- ^ ポール・マクレディは後に、クレーマー賞挑戦の動機として賞金を挙げ、自らが立ち上げたエアロ・ヴァイメント社の経営において背負った借金とほぼ同額であったため、借金返済に充てるために賞金獲得を決意したと語っている。[139]
- ^ 尤もダイダロスは砂浜に着陸することを想定した設計にはなっていなかった。[151]
- ^ レイヴェンは資金不足により計画が中止された。[156]
- ^ 例えばクレーマー賞にも回転翼機による挑戦の表明があった[117]。
- ^ しばしば「ダイダロス型」と表現されるが、明確な定義は存在せず、共通の認識も得られていない。概ね「(技術的、設計思想的共通点の有無に関わらず)ダイダロスに似た外見」の人力飛行機を指す表現である。
- ^ もっともゴッサマー・コンドルは積極的にアドバース・ヨーを利用することで旋回を可能とし、クレーマー・8の字飛行賞の獲得を実現にした。[138]
- ^ 閉回路飛行速度記録の世界記録保持機マスキュレアー2、日本記録保持機NextzがFX76MPを基礎とし最適化した翼型を採用している。[30][148]
- ^ シート状の発泡材を心材としたCFRPサンドイッチ材や外面のみGFRPで形成する手法が報告されている。[11][177]
- ^ ダイダロスの研究では片持ち構造、張線1組の構造、張線複数本の構造とそれぞれについての必要出力を比較し、片持ち構造からの空気抵抗増大を許容しても張線を採用により必要出力を低減でき、飛行距離を最大化できると判断された[179]
- ^ 飛行張線取り付け部品の破断による主桁折損が原因となった墜落事例が存在する。[180]
- ^ ダイダロス87の事故は局所的な上昇気流により姿勢を崩した機体が上反角不足によってスパイラルに入ってしまった上に、方向舵の操縦索が伸びて舵角が不足した為に生じたが、上反角不足の一因としては誤って設計よりも短い飛行張線を用いてしまったことがわかっている。[181]
- ^ この他、自転車に見られるプローンと同様にパイロットがうつ伏せとなるの構造も検討されることがある。(出典中では「半分うつ伏せ」と呼称されている。)[182]
- ^ ダイダロスの研究によれば人間の出力効率は20〜25%と言われ、飛行中には600〜1000Wが熱として放出されることになる。これは全く冷却をしなかった場合のフェアリング内の気温を5〜8分で1℃上昇させることを意味する[185]。また、1998年の第22回鳥人間コンテスト選手権大会において対岸到達を実現したチーム エアロセプシーの鈴木正人は、達成要因として、コクピット内の換気の改善と銀フィルムを用いた遮熱によるコクピット内の気温上昇抑制を挙げた。[186]
- ^ MIT開発のモナークB[197]、ダイダロス[198]、オーストラリアのスカイサイクル[199] の他、日本においても採用している機体が存在する[144]
- ^ SDV(Super de Vinci/スーパー・ダ・ヴィンチ)駆動機構と呼ばれるクランク機構。オーテックと産業技術総合研究所により開発され、自転車への応用が始まっている。回転運動ではなく往復運動に近い長円軌道で脚力を受け付けるため高効率で、低心拍時で通常の1.8倍、高心拍時で1.15倍の出力が得られるという研究結果がある。[202][203] 広島大学工学部HUSEが採用していた。[204]
- ^ クレーマー・世界速度記録賞を目指していたスイフトシリーズの3機。[144]
- ^ アメリカの教育チャンネルWGBH-TVにて1974年3月3日から現在に至るまで放送されている科学ドキュメンタリー番組。
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